All Chapters of ありんすっ‼ ~吉原、華の狂騒曲~: Chapter 51 - Chapter 60

82 Chapters

第五十一話 女として

第五十一話    女として  朝、梅乃と古峰が外の掃き掃除をしていると「う 梅乃ちゃん…… 私、お腹が痛い」 古峰が腹痛を訴える。  「岡田先生、古峰が……」 梅乃が古峰を連れて岡田の部屋にやってくる。 「ふむ、馬かな……」 岡田が古峰に言うと、「う 馬……私が」 古峰がチラッと梅乃を見る。 「えと、どこか悪い訳じゃなくて良かったね……」 梅乃は、そう言い残して仲の町まで出てきていた。 (私は無いのかな?)  「どうした? 暗い顔して」 梅乃の後ろから声がする。 振り向くと、喜久乃が立っていた。 「こんにちは。 喜久乃花魁……」 梅乃が頭を下げると、「なんか暗い顔をしていなかったか? 聞くぞ」  「いえ……そんな難しい話ではないのですが……」 梅乃が渋っていると、喜久乃が顔を覗き込む。 「その顔じゃ、難しい話だろ。 話してみろ」 喜久乃が笑顔で待っていると、梅乃は小さい声で話しだす。 「なに……? そんな事で暗い顔をしていたのか……」 喜久乃は息を落とした。 「ほら……」 梅乃がため息をつくと、「すまん、すまん……ちなみに、私は十三だ」 喜久乃はコソッと梅乃に伝える。 「ありがとうございま
last updateLast Updated : 2025-11-16
Read more

第五十二話 三姉妹

第五十二話    三姉妹    春の縁日、九朗助稲荷の周辺には出店が並ぶ。 毎月のように縁日があるのだが、春だけは盛大に行われる。  「お前たち、いなり寿司を食べよう」 文衛門が妓女や禿たちにいなり寿司を配る。 文衛門は、妓女たちを娘として可愛がってくれている父親の存在である。   「おいし~♪」 小夜と古峰が盛り上がっている。 妓楼では少しの朝食で、夜は客が残したものを食べている。  こういう場での食事は格別であった。   特に信仰を集めている九朗助稲荷は、数多くの妓女が集まってくる。 縁日であれば、なおさらである。 ここで花魁などは派手な衣装で道中さながらで登場する。  先頭でやってきたのは小松屋である。 葉蝉を先頭に妓女たちが追従する。  「綺麗~ 若い~」 葉蝉は二十一歳。 若さや勢いが凄く、人気の花魁である。  三原屋や鳳仙楼では花魁を置いておらず、端から花魁を眺めていた。  「絢~」 小夜が絢を見つけ、声を掛ける。 「みんな……来てたんだね。 花魁って、凄いね~♪」  そこでやってきたのは長岡屋である。 喜久乃が先頭を歩き、踊りを混ぜたような歩き方で魅了している。  (やっぱり目立つな~ 吉原で一番人気なだけある) 梅乃は喜久乃に魅せられていた。 その横には静も歩いている。   「やっぱり喜久乃花魁は目立つわよね……」 勝来は、見惚れている。   ここ最近、
last updateLast Updated : 2025-11-21
Read more

第五十三話 化粧帯

第五十三話    化粧帯  「小夜、凄い……」 梅乃と古峰は驚いている。 采に渡された物は真っ白な化粧帯であった。 禿の服や着物には帯は必要だ。 着物は自由な着こなしができるが、三原屋の禿服の帯は黄土色である。   そこで班長になった小夜は、真っ白の帯に金の刺繍で桜の模様が施されていて高価な帯というのが分かる。 「お婆……これを私に……」 小夜が涙ぐむ。  「しっかり班長をするんだよ」 采がキセルに火をつける。 その後、小夜は帯を取り替えて白い帯を巻くと「うわ~ 綺麗~」 小夜はもちろん、梅乃と古峰も見惚れていた。 「や やっぱり班長は小夜ちゃんだよね」 古峰が言うと、妓女からは「そうだよ。 班長は小夜しかいないよ……」 そんな言葉が出てくる。  「どうしてです? 梅乃の方が医術も知ってて、役に立っているのに?」 小夜が首を傾げていると、 「ほら、常識とかわきまえているし……変なことしないから安心もあるし……」 これを聞いて、梅乃は苦悶の表情になる。(これが私のリアルな評価なのか……)  こうして小夜が班長となり、始まっていくが…… 「それで、班長の仕事って何?」 浮かれていて、仕事を聞くのを忘れていた。 
last updateLast Updated : 2025-11-26
Read more

第五十四話 のっぺらぼう

第五十四話    のっぺらぼう  明治六年 『芸《げい》娼妓《しょうぎ》解放《かいほう》令《れい》』が発令されてから吉原が変わっていく。 それは『遊女屋』と言われていたものが『貸し座敷』となったことだ。女衒などから若い娘を買い、見世で育てて花魁にしていったのが政府の方針で禁止となっている。   このやり方は“奴隷契約”となってしまうからだ。  過去にキリシタンとして日本に来ていたポルトガル人が奴隷として日本人を海外に連れて行き、これを知った豊臣秀吉が怒り狂って伴天連《バテレン》廃止をしたほどだ。  日本は奴隷廃止制度で吉原や花街に厳しい取り締まりをする。 これにより吉原全体の妓女不足、女衒などの廃業が慢性的となる。 そうなると、地方などの貧しい家庭にも打撃が来るようになる。  貧しい家庭は娘を花街に売ることで金が入ってくる。 そんな希望さえも失っていくが、人身売買は密かに続いていたりもする。  「千《せん》……すまない」 「父様、母様……私、どこに行くの?」「お前が美味しいご飯が食べられる場所だよ……」 こういう会話から少女は吉原に連れて行かれる。 これも親孝行だったのだ。    「今日から妓女として入る千だ。 お前たちより年上だが、同じ禿として働く」 采が言うと、そこには物静かな女の子が立っている。  「千です。 よろしくお願いいたします……」  
last updateLast Updated : 2025-12-01
Read more

第五十五話 意外性

第五十五話    意外性   明治六年 秋千は新造として歩み出す。 この教育担当は勝来になる。「どうして私なのよ……」 勝来は不満そうだ。  「みんな当番のように回ってくるのよ」 菖蒲が説明すると「姐さん……」 勝来は肩を落とす。  「まだ良い方よ。 顔の識別が出来ないだけでしょ? 私なんか野菊さんだったんだから……」 菖蒲は過去に千堂屋の野菊を教育していた。 馴染みの店であり、菖蒲にとって窮屈な毎日だった。 「確かに、あれはキツいですよね……」「そうよ。 本当に傷物にでもなっていたら大変だったわよ」  「姐さん、失礼しんす」 勝来の部屋に梅乃がやってくる。 「梅乃、どうやって千が顔の識別が出来ないって分かったの?」 勝来が聞くと、「掃除していて班長の小夜じゃなく、私や古峰に報告をしていました。 禿服って同じだから見分けが付かなかったんだろうな~って」  「なるほど……」 「それで、姐さんたちは千さんの何を困っているのです?」 梅乃がキョトンとすると、 「そういえば、何を困っているんだっけ?」 勝来がポカンとすると、菖蒲と梅乃はガクンと滑る。 「つまり、勝来姐さんは初めての新造に戸惑っているんですね?」梅乃の鋭い言葉に、勝来は言い返せなくなっていた。 「私たちみたいに接すれ
last updateLast Updated : 2025-12-06
Read more

第五十六話 近衛師団

第五十六話    近衛師団明治天皇が即位してから六年、段々と日本全体が変わってきた。両から円へ貨幣も変わり、大きな転換期とも言える。「しかし、大名がないと売り上げが下がったね~ どうしたものか……」文衛門が頭を悩ませている。少し前に玉芳が来たことで大いに盛り上がった三原屋だが、それ以降はパッとしなかった。「それだけ玉芳が偉大だったということだな……」 文衛門の言葉が妓女にプレッシャーを与えていた。 しかし、文衛門には そんなつもりも無かったのだが“ずぅぅぅん……” 大部屋の雰囲気が暗くなる。梅乃が仲の町を散歩していると、「梅乃ちゃ~ん」 と、声がする。 梅乃が振り返ると「葉蝉花魁……」「この前はありがとう。 一生の宝物だよ~」 葉蝉は大喜びだった。「よかったです。 本当に偶然でしたけど」「話せたこと、簪を貰ったこと……全部、梅乃ちゃんのおかげ」そう言って葉蝉は帰っていく。「良かった…… みんな、よくな~れ!」 梅乃は満足げな顔をする。「すまん、嬢ちゃん……君は禿という者かい?」 梅乃に話しかけてきた男は軍服を着ており、子供にも優しい口調で話していた。「はい。 私は三原屋の梅乃といいますが……」「そうか。 よかったら見世に案内してくれないか?」 軍服を着た男は見世を探していたようだ。「わかりました。 こちらです」 梅乃は三原屋へ案内する。「お婆……兵隊さんが来たよ」 梅乃が采に話すと、「兵隊? なんだろうね」 采が玄関まで向かう。「ここの者ですが……」 采が男性に言うと、「私は近衛師団の使いできました大木と申します。 短めなのですが、宴席を設けていただきたい」 男性の言葉に采の目が輝く。「もちろんでございます」 采は予約を確認する。「では、その手はずで……」 男性が去っていくと、「お前、よくやったー」 采が梅乃の頭を撫でる。「よかった♪」 梅乃もご機嫌になった。三日後、予約の近衛師団が入ってくる。 この時、夜伽の話は厳禁である。あくまでも『貸し座敷』の名目だからだ。相手は政府の者、ボロを出す訳にはいかない。この日、多くの妓女が酒宴に参加しているが「ちょっと妓女が足りないね…… どこかの見世で暇をしている妓女でも借りるか……」 采が言うと、「お婆、聞いてきます」 梅乃と古峰が颯爽と出て行く。それから梅
last updateLast Updated : 2025-12-11
Read more

第五十七話 木枯らし

第五十七話    木枯らし  明治六年 秋。 夏が過ぎたと思ったら急激に寒さがやってくる。 「これじゃ秋じゃなく、冬になったみたい……」 こう言葉を漏らすのが勝来である。 「日にちじゃなく、気温で火鉢を用意してもらいたいわね……」勝来の部屋で菖蒲がボヤいていると、  「姐さん、最近は身体を動かさなくなったから寒さを感じるのが早くなったんじゃないですか?」 梅乃が掃除をしながら二人に話しかける。 菖蒲や勝来も三原屋で禿をしていた。 少し寒くなったからといっても、朝から掃除や手伝いなどで朝から動いて汗を流していたのだが 「そうね……確かに動かなくなったわね」菖蒲は頬に手を当てる。 「せっかくだから動かしてみるか……」 勝来が薄い着物に着替えると、「梅乃、雑巾貸しな!」 手を出す。  「えっ? 本気ですか? 勝来姐さん」梅乃が雑巾を渡すと、勝来は窓枠から拭きだした。 「勝来がやるんだから、私もやらないとね~」 菖蒲も自室に戻り、着替え始める。 「……」 梅乃は開いた口のまま勝来を見ている。 そこに小夜がやってきて、「梅乃、まだ二階の掃除 終わらない? ……って。 えっ?」小夜が目を丸くする。 そこには二階の雑巾掛けをしている菖蒲がいた。 「ちょ ちょっと姐さん―」 慌てて小夜が止めに入る。「なんだい? 騒々しいね」隣の部屋から花緒が顔を出す。
last updateLast Updated : 2025-12-16
Read more

第五十八話 魅せられて

第五十八話    魅せられて  それから梅乃たちは元気がなかった。玲の存在を知ってしまった梅乃。 それに気づいた古峰。 それこそ話はしなかったが、このことは心に秘めたままだった。  しかし、小夜は知らなかった。 (小夜ちゃんには言えないな……)気遣いの古峰は、小夜には話すまいと思っていた。 姉として、梅乃と小夜に心配を掛けたくなかったのだ。  それから古峰は過去を思い出していく。(あれが玲さんだとしたら、似ている人……まさか―っ)  数日後、古峰が一人で出ていこうとすると「古峰、どこに行くの?」 小夜が話しかけてくる。 「い いえ……少し散歩をしようと思って」「そう……なら一緒に行こうよ」 小夜も支度を始める。   (仕方ない、今日は中止だ……)  そう思い、仲の町を歩くと 「あれ? 定彦さんだ…… 定彦さ~ん」 小夜が大声で叫ぶと “ドキッ―” 古峰の様子がおかしくなる。  「こんにちは。 定彦さんはお出かけですか? 今度、色気を教えてくださいね」 小夜は化粧帯を貰ってから色んな人に自信を持って話しかけるようになっていた。 「あぁ、采さんが良いと言ったらね」 定彦がニコッとして答えると、「古峰も習おうよ」 小夜が誘う。 「は はい
last updateLast Updated : 2025-12-20
Read more

第五十九話 椿と山茶花

第五十九話 椿《つばき》と山茶花《さざんか》 明治七年 正月。 「年明けですね。 おめでとうございます」 妓女たちは大部屋で新年の挨拶をしている。 すると文衛門が大部屋にやってきて、 「今日は正月だ。 朝食は雑煮だぞ」 そう言うと片山が大部屋に雑煮を運んでくる。 「良い匂いだし、湯気が出てる~♪」 この時代に電子レンジはない。 なかなか温かいものを食べられることは少なかった。 「まだまだ餅はあるからな。 どんどん食べなさい」 妓女たちが喜んで食べていると、匂いにつられた梅乃たちが大部屋にやってくる。 「良い匂い~」 鼻をヒクヒクさせた梅乃の目が輝く。 「梅乃は餅、何個食べる?」 片山が聞くと 「三つ♪」「私も~」 小夜も三本の指を立てている。 「わ 私も三つ……」 古峰も遠慮せずに頼んでいた。 「美味しいね~♪」 年に一回の雑煮に舌鼓を打つ妓女たちであった。 この日、三原屋の妓女の多くは口の下を赤くしている者が多い。 「まだヒリヒリする……」 餅を伸ばして食べていたことから、伸びた餅が顎に付いて火傷のような痕が残ってしまった。 (がっつくから……) すました顔をしている勝来の顎も赤くなっていた。 梅乃たちは昼見世までの時間、掃除を済ませて仲の町を歩いている。 そこには千も一緒だった。 「千さん、支度とかはいいの?」 小夜が聞くと、 「私は張り部屋には入れませんので……」 千は新造であり、まだ遊女のようには扱われない。 それに入ったとしても妓女数名からは良く思われていないので、入ったら険悪なムードに耐えきれないのも分かっていた。 「それに、三人と仲良くしていた方が私としても嬉しいので……」 千が言葉をこぼすと、梅乃たちは顔を下に向ける。 「私、何か変な事をいいました?」 千がオロオロすると、 「なんか、嬉しくて……」 小夜が小さな涙をこぼす。 「う 梅乃ちゃんと小夜ちゃんは大変な時期を送っていました。 わ 私もだけど……」 古峰の言葉は千にとっても重い言葉だった。 気遣いの子が苦労話をすることで、余計に納得してしまうからだ。 「でもね。 私たちは三原屋だから良かったんだ」 小夜がニコッとする。 「う うん。 私も」 古峰も微笑むと、千はホッとした表情になる。 「梅乃~ 小夜~」 仲の町で呼ぶ声が聞こ
last updateLast Updated : 2025-12-24
Read more

第六十話 笑う三日月

第六十話    笑う三日月  夕方、引手茶屋に向かう梅乃は勝来と千と一緒だった。 「最近、勝来姐さんの共をしてなかったな~」  「お前が誰かを贔屓にしていたんじゃないかい?」 勝来が笑いながら梅乃を見ると、 「贔屓というか、お婆に目を付けられたから……」 シュンとしていた。   ここ最近、梅乃は遣り手の席が多い。 本当に妓女にしたいのか疑問に思ってきていた。  「それは梅乃さんが凄いってことですよね?」 ここで千が会話に参加すると 「そうとも言うな……私や菖蒲姐さんでも遣り手の席は無理だから……」 勝来が言うと、千は不思議そうな顔をする。  「どうしました? 千さん」 梅乃が顔をのぞき込むと 「今、遣り手の席はお婆と、梅乃さんと信濃姐さんですよね? 信頼されているんだな~と」  遣り手は帳簿や金の管理をする。 見世にとって重要なポジションだ。 その大役を信濃や梅乃に任せることが出来る采の度胸も凄かった。   千堂屋に入ると 「お前たちは待ってなさいね。 それに梅乃……お前は特にだからな! 千、ちゃんと見張っておきなさいよ!」 勝来が釘を刺すと、奥の座敷に入っていく。   「梅乃さん、どうして勝来姐さんに言われたのです?」 千が興味本位で聞くと、梅乃は数々の失敗を話した。  引手茶屋で待っている時にも玲を追いかけていったり、気になれば飛び出して命を落とす寸前までいったことなど……   (壮絶すぎる……それでも行こうとするから釘を刺されてるなんて……) 千は梅
last updateLast Updated : 2025-12-28
Read more
PREV
1
...
456789
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status