Semua Bab シャレコウベダケの繁殖: Bab 41 - Bab 50

53 Bab

一時の幸福な時間、この時間がいつまでも続けば良いのに

「ママ」彩花は顔をくしゃくしゃにして久々に会えた由樹に向かって駆け寄った。甘い匂いのする娘の体を受け止めた。この日のために辛い日々を耐えた。隆広に見守られながら彩花を抱きしめた。何て幸せな一時なのだろうか。空間が薄っすらピンク色を帯びている気がした。空気もホッとする美味さを含んでいる。今まで普通のことだったが成子の部屋から逃げたことで、味わえなかった旨みを感じ取った。この日、久々に母親に会ったためか、夜にも拘わらず彩花はやけにテンションが高かった。普段なら夜の九時に寝ていたが、今は夜の十一時をとっくに過ぎている。由樹も隆広もそのことを注意しなかった。ソファに彩花と並んで座って保育園での出来事の話をした。秋の発表会はとっくに終わっていたが、楽しかったと話してくれた。見に行けなくてごめん、謝ると、彩花は笑って許してくれた。最後は彩花がソファで寝落ちして幸福の一時は終わった。隆広が娘を抱いて寝室に向かって布団に寝かせてあげた。「おかえりなさい」隆広は皺だらけの褐色の顔をクシャッとさせて微笑んだ。「何だかごめんなさい」「ううん、大丈夫。でも、何があったのか全部教えてほしい。きっと酷い目に遭わされたのだと思う。本当にごめん。もっと僕も行動してあげれたら、もっと早く帰って来れたかもしれないのにね」隆広は泣きべそをかいた。ソファに座る由樹の傍に立って右手を差し出した。由樹はその手を握った。「こちらこそ。辛い日々を過ごして来て、貴方に対して酷いことを言ってたことを後悔しているの。もう怒ったりしないし、酷いことも言わない。だから、これから三人で平和に暮らしていこ」本気で自分を変えようと決めた。もう旦那デスノートなんか見ないようにしよう。全ての元凶はあのサイトのチャットだ。これからの生活において、再び同じ過ちをしでかさないためには由樹自身が変わるのが一番有効だろう。人に甘えるのは良くない。隆広に期待し過ぎてテレビの前で泣き崩れた姿を見て失望などしないように。何の気なしにテレビの電源を点けた。テレビを観ることも久しぶりだった。成子の自宅にはテレビはあったが、電源が点いている時を見たことなかった。外部からの情報は完全に遮断されていた。報道番組が放送されていた。ある殺人事件につ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-24
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第二の成子の存在とは。

「その先に白骨化した死体が放置されていたのでしょうか」女性アナウンサーが尋ねた。「はい。この先に手首と足首を布で括られて、地中から頭蓋骨だけを晒した死体が発見されました」叫び声が出た。浩司の埋められる場面を思い出した。清江の旦那の腐った頭の映像が浮かび上がった。同時に辺りに漂う腐敗臭や便臭などが思い出された。 漆黒の泥土の中で不気味なキノコのような、蠢く蛆に食われ続ける死骸の幻影が由樹に付きまとっている。どこかに行ってほしい。皮膚がずれ落ちて、口のあった場所に大きな空洞を作っていた物体が自身の周囲に浮遊しているような恐怖が植え付けられていた。「死因は何なのでしょうか」「ただいま検証中とのことです。ただ腐敗が酷く、すぐの原因解明が難しいとのことです」耐え切れなくなり、テレビを消した。「どうしたの、由樹」隆広の声が頭上から聞こえる。由樹は自分の顔を手で覆ってしゃがみ込んでいるため、彼がどんな顔をしているのかは分からない。きっと困惑顔をしていることだろう。自分のバンドがテレビ出演していた時のように途方に暮れた顔をしているのだろうか。自宅に戻って来ても成子の呪縛からは完全に解き放たれなかった。テレビを観て意味が分からなくなっていた。どうして浩司や清江の旦那と同じような死骸が和歌山の山奥に存在するのだろうか。確かにテレビのレポーターは言っていた。手首と足首を布で括られて、地中から頭を出した死体があったと。浩司も清江の旦那も殺した場所は、もちろん和歌山県などではない。秩父駅の近くの山であるため、埼玉県内の山だろう。同時頃に同じように殺された人間がもう一人いたということか。成子のような悪魔が同時にもう一人関西にいるというのか。そんな偶然があるのだろうか。とても信じられない。何か裏がある気がした。成子の裏に何か別の人間がいるのだろうか。何者なのかは全く想像することができないし、そんなことあり得ない気もした。「ごめん、もう寝るね。疲れちゃった」フラフラと寝室に向かった。隆広が呼んでいる声が聞こえたが、もう事情を喋る気力は残っていなかった。寝室では彩花が布団に潜って寝息を立てている。今頃、アンジェラや明美は清江の肉を無理矢理旦那に食べさせているのだろう。腐った人間に腐肉を食わ
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第13章 白い悪魔の触手、生活を侵食する

   ※ 成子由樹が逃げた。ベッドの上で寝転び、そのことだけを考えていた。完全に自分のミスだ。女たちを監視しきれていなかった。まさかあのタイミングで逃げられると考えてもいなかった。夫も由樹の逃亡に気付き、激しく怒っていた。次に会ったら通電だろう。あの痛みは二度と経験したくない。大好きな彼から痛めつけられると、自分が愛されているのか自信がなくなってくる。初めて通電された時の記憶を思い出す。ユウコと二人でフローリングの上で、夫と名前を忘れたもう一人の女の前で正座していた。「成子、どうして貴方はここから逃げ出したのですか。僕から離れたかったのですか。どうしてですか。成子は僕のことを愛していないのか」「実家に顔を出していただけですなんです」立っていた一人の女によって、首筋に電気を流された。夫の指示だった。「なぜ実家に顔を出す必要があるのですか。過去に執着しているのですか。僕と出会う前に暮らしていた場所を忘れることができないのですか」必死で首を振って否定する。自分の顔に着いた贅肉が揺れていることが分かる。「実家という場所は害悪でしかないのです。分かりますか。過去という時間に直結した空間だからです。過去というものは人を堕落させます。久々に学友と会う同窓会とかを想像すれば分かりますね。あの時間に生産性というものはありますでしょうか。ないですよね。なぜなら何もすることがないからです。最悪の場合、過去を懐かしみ、現在を否定する思考に陥ってしまうのです。そうなると、現在周囲にいる一番大事な人や事を蔑ろにしてしまうことになりかねないのです。貴方は僕を軽視しているのですか。そんなこと許せません。なぜなら僕は成子のことを愛しているのですから」愛していると言ってくれるも、電気を流されれば夫に嫌われたとマイナスに考えてしまう。夫との心的な距離ができた気がする。自分が勝手に実家に帰るというミスを犯したばかりに彼に見損なわれることは嫌だった。隣にいるユウコと同じ扱いを受けることは嫌だ。今回由樹を逃したことで、実際に夫から責められた。挽回するために由樹を捉えなければ。そして夫の楽しみを充実させなければいけない。これが今の自分の使命だと成子は改めて思い知った。    ※ 由樹帰って来た翌日
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-25
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事態は好転することはない、侵食は止まらない

電話を切った。新しく買ったスマホをポケットにしまってホテル内の食堂に向かった。食事を終えてから大浴場に入って体を流した。夜の十時には眠った。味気のない生活だが耐える価値がある。この生活を抜けた先に確実に優しい日常が待っている。耳栓をして布団に包まった。早く三人で暮らしたい。スマホでカレンダーアプリを開いた。彩花の誕生日はとっくに過ぎていた。今年はどんな誕生日だったのだろうと心配になった。隆広は誕生日プレゼントを買ってあげただろうが、ご馳走はどうしたのか気になった。翌日の夜の六時、そろそろ隆広から電話が来る時間なのだが一切連絡が来なかった。毎日来ていた連絡が来なくなると心配になる。今朝部屋に戻った時、確かに彼は寝室で眠っていた。彩花を起こす時に見た。隆広もいつもと変わらない日常が始まったはずだ。由樹の脳裡には常に成子の真っ白なニンマリ顔が浮かんでいる。隆広の身に何かあったのではないか。嫌な予感が血液に混じって体中をめぐる。緊急事態かもしれないと思って外に出た。スマホと財布をトートバッグに入れて自宅に向かうことにした。カプセルホテルがある雑居ビルから外の繁華街に出た。冬にもかかわらず熱気と湿度を多く含んだ夜の空気が由樹の顔にまとわり付いた。カラオケ店や居酒屋、パチンコ店、ファミレスが立ち並び煌々とした照明を発している。人が多くて人いきれの臭いで空気が臭い。繁華街の通りの先に駅がある。早く行かなければ。常にスマホに着信が来ないか気にしながら駅へと駆け足で向かった。自宅の最寄り駅に到着した。時刻は夜の七時半前。相変わらず隆広からの連絡はない。どうか自宅にいてくれ。ただの連絡忘れであってほしい。見馴れた商店街を進む。小さな定食屋や焼き鳥屋、居酒屋からは沢山の地元客の声が聞こえて来る。八百屋や魚屋には仕事帰りのコート姿の客が多く入っていた。緩やかな坂道を上る。外灯の数が少ない。以前成子が隠れていた電柱の傍を通る時は警戒して足音を立てずに駆け抜けた。誰もいなかった。自宅のアパートに到着した。思わず足が止まった。見馴れた人間たちの姿を目撃した。愕然として、アパートの前のアスファルトの上に尻餅を着いた。やはり隆広の連絡忘れではなさそうだ。「由樹さんじゃないの」こちらに近付いて
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-27
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最悪な状況へ。悪夢はより残虐に。

「今、私の旦那が神奈川の山の方で可愛がっているところですよ。そこにはアンジェラさんもいらっしゃいます。さっき動画が送られて来たんでした。見ますか」思考が止まった。成子の言葉の後半は殆ど意味を理解することを、脳が拒否しているようだった。だが、明確に意味を理解していた。隆広が土から頭だけ出している映像が思い浮かんだ。あの優しく帰りを待ってくれた隆広が蛆に食われながら死んでいく。嫌だと叫んだ。成子は由樹に対して嫌がらせをして、錯乱させることを企んでいるのだろう。虚無人間にして自宅に連れ戻すつもりだろう。そして清江のように肉団子にされて夫に食わせるつもりなのだろう。彩花の顔を見た。首輪を付けたまま涙を流していた。柔らかくて丸い頬の上を水玉がサラサラを落ちて行った。娘を守らなければ。本能で自分の役目を認識する。理性などなく、本能でしか行動をすることができない。「彩花を放して」明美に向かって吠えた。明美は下を向いた。茶色い皮膚に覆われた痩せぎすな足で立っていた。腐ったゴボウに見えた。初めて会った時は浩司からの暴力跡が残っていたが、それ以外は普通に見えた。今は中身から腐り果てたようだ。彼女の中にある自分自身を動かす動力源が破壊されているようだ。外身だけではなく中身が崩壊している。「明美さん、部屋で言っていたこと。由樹さんにも言ってあげたらどうでしょう」成子の言葉を聞いて、明美は顔を上げて由樹を見た。ゴム人形みたいな顔をしていた。「おい、このアマ」病的に無表情な明美は今まで聞いたこともないほどの大きくて濁った声を出した。今までの自信なさげで囁くように喋っていた女と同一人物には見えなかった。「お前、よくも逃げやがったな。成子さんを置いて行くなんて恩知らずのドブ女」何を恩と思っているのか。明美は成子の部屋で暴力を受け、ベッドで一緒に寝たりする行為をありがたい賜りモノだとでも思っているのか。すっかり心を成子に奪われていた。「私は最初からお前のことが気に入らなかったんだ。お前は汚いことからすぐに逃げ出すような軟弱者で、男に寄りかかったまま生きるような恥知らずだということにも気付いていた」明美が一言発するたびに細かい唾が飛ぶ。成子は満足そうに腕を組みながら明美と由樹の顔を交互に眺め
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-27
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第14章 綻ぶ計画、それでも事態は最悪に

「由樹さん。良いですか」成子は前方を見て運転しながら由樹に語りかけた。「世の中全ての物事には表があれば裏もあるんですよ。よく考えて下さいね。今回貴方は逃げ出すほど辛い思いを私の部屋でしていたのでしょう。それに関してはこちらも謝ります。だが、本当に悪い面だけしかなかったでしょうか」悪い面しかないに決まっているだろう。実際、今嬉しいことなど一つもない。またあの糞尿の臭いで充満し、段ボールで覆われた陰鬱な部屋で暮らさないといけないのか。きっと一度逃げたので、これからの生活で食事も一日に一度与えられるかどうかあやしい。黴の生えた食パン一枚ということも考えられる。清江や明美の受けて来た仕打ちを見て来たので分かっている。もし口答えでもすれば、スタンガンで局部や乳首に電気を流される。それに今回は彩花までいる。「だって由樹さん。貴方、旦那さんと良好な関係を結んでいたようじゃないですか。もしこのコミュニティに入っていなかかったら、どうだったのでしょうか。隆広さんに不満を抱いたまま、納得のいかない日々を過ごしていたんじゃないですか。なので悪い面ばかりではなかったじゃないですか。良かった面もあったのではないですか」「でも隆広は」成子はその良かった面も潰したではないか。隆広を返してほしい。「そうです隆広さんは貴方の前から去って行きました。きっと小動物や蛆虫に食われて死んでいくことでしょう。だが、よく考えて下さい。貴方は隆広さんと一緒になる日常に戻って本当の幸せになれると信じられますか」「もちろん信じていました」由樹は自身が変わったと自覚していた。もう隆広に対して攻撃的にならない。隆広も安心できて由樹も余裕を持った日々を送るつもりだった。「それは勘違いですよ、由樹さん」成子は由樹の考えを根本からぶった切った。「何が勘違いだ」席を立って成子を殴ろうとした。明美に両肩を掴まれて殴れなかった。拳が座席のヘッドレストに当たった。「由樹さん。人の話を最後まで聞いて下さいね。コミュニケーションを取る上で最も重要なことですよ」「お前に説教される筋合いなんかねえよ。人殺しが」座席に座りながら言ってのけた。「誰が人殺しなんだ」成子が少しだけ声を大きくした。「誰が人殺しだって。え? お前らだろ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-27
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裏側に何者かが存在するのか……

例のアパートに到着した。上がり框を跨ると相変わらず足の裏がべたついた。嫌な記憶が脳の奥底から吹き出して来る。成子が居間に入って電気を点けた。ソファと椅子とテーブルと電源の点かないテレビ、それ以外は物のない部屋。「明美さん。よく由樹さんを連れ戻せましたね。ご褒美を差し上げましょう」成子の右手には焼肉弁当があった。椅子に座った明美は、弁当を目にしただけで床に涎を垂らした。涎は長く糸を引いた。「明美さん。どうぞ」明美は焼肉弁当を受け取って、テーブルの上に置いて透明な蓋を外した。割り箸を割って掻き込むように食べ始めた。食べ方は野球部の男子高校生が牛丼を掻き込む時のようだ。「はははっ。よっぽどお腹が空いていたのでしょうね。可愛い明美さん。そんなに急いで食べなくても焼肉弁当は逃げないでしょう」彩花も椅子に座ろうとした。それを見た明美は立ち上がって、彩花を思い切り蹴飛ばした。床に叩きつけられた彩花は再び泣きじゃくった。由樹はしゃがんで彩花を抱き寄せた。「何すんだよ」明美に怒鳴った。「コッチの台詞だ馬鹿。成子さんの許可なしに椅子を使うんじゃねえ」仁王立ちになって叫び散らす明美の口から、米粒が幾つも飛んで来た。一粒が由樹の頬に飛んだ。「そりゃあそうですよね、明美さん」成子が明美の側に立って、由樹と彩花を見下ろした。「親子揃ってどうしようもないですね。明美さん、教育してあげなさい」スタンガンではなくディルドを取り出した。このディルドは何度も見た。初めてこの部屋に来た時は、明美の口に突っ込まれていた。清江が発狂してからは毎日のように咥えさせられていた。由樹も清江の口に押し込んだ経験がある。根元にあるボタンを押す感触を思い出して眩暈がした。先端から高濃度のアンモニア水が飛び出して来る。「そのションベン臭い女児を離しなさい」明美に言われたが、従わないで由樹は彩花を強く抱き寄せた。彩花の身に危険が迫っている。娘がディルドを咥えて濃いアンモニア水を放出される瞬間を想像して、必死で守ろうとした。娘がこんな目に遭っているのはそもそも自分のせいだ。自分が旦那デスノートを使っていなければ、今頃彩花は隆広のスマホでしまじろうの動画を観ていたはずだ。「嫌」明美を睨み付けて拒否し続けた。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-27
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失敗できない計画は、どう崩壊していくのか

   ※ 成子今度はアンジェラが逃げ出した。夫は完全に失望しているようだ。明美と眼鏡の男にも連れ戻すように指示した。由樹と彩花の監視をしないといけないので自分の足で探すことはできそうになかった。「とりあえず、由樹さんと彩花ちゃんは立って下さい。そこで立ったまま動かないでいて下さい」由樹と彩花を立たせて居間の段ボールで覆われた壁の際に立たせた。彩花はずっと泣いている。娘の佳苗のことを不意に思い出す。夫に迷惑をかけていないだろうか。東京に来る前のように逃げ出すことはしていないだろうか。二度と夫に迷惑をかけないでほしい。母親である自分の評価に繋がるからだ。佳苗の顔を見ていると、よく自分の幼少期を思い出した。成子は自身が滋賀県の田舎で育った記憶が蘇る。畑に囲まれた土地で一人娘として育てられた。だが小学校に入った時を境に、高島市一のブスと男子生徒や男の先生に罵られるようになった。同じクラスメイトの男子が楽しそうに成子のことを殴ったり蹴ったりした。男の先生はそれを見て愉快そうに笑っていた。真っ白なサッカーボールだと言う時に口から覗く金歯が忘れられない。悔しかったが何も反撃できなかった。ただ下を向いたまま暴力に耐え忍ぶしかできなかった。あの時の苦しみを今取り返したい。そのためには夫の雄作から離れる訳にはいかない。彼のような王子様のような男と一緒に暮らすことが人生の目標だったのだと気付いた。この試練を乗り越えれば、雄作が自分を可愛がってくれるはずだ。眼前に立っている由樹と彩花を睨み付ける。のうのうと暮らしている苦しみを知らない者たちに苦しみを与えることも自分の使命であろう。もし失敗なんてしたら死ぬしかない。それくらいの覚悟を持っている。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-27
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第15章 未熟探偵の水川大輔登場、悲惨の破滅へ

   ※ 大輔 時は由樹と成子たちと会った直後に戻る東中野駅から歩いて五分ほどのところに一つの探偵事務所が存在する。神田川を渡る手前の住宅街に紛れて三階建ての雑居ビルがある。そこの一階が水川探偵事務所だ。扉を開けて中に入った時の印象は悪くないはずだと所長の水川大輔は自負していた。閾の低いアットホームな事務所にするため、内装には拘っていた。先代の所長の父から引き継いだ際、大輔自身が事務所の内装を大きく変えた。事務所の外にも拘りがあり金木犀の木が植えられている。今の時期、真っ盛りで秋色の甘い香りが漂っている。事務所の中は殆どお洒落な喫茶店と言っても過言ではない。木製の丸テーブルが幾つも置かれている。壁沿いの棚には真空状態でコーヒー豆を保存できる透明のキャニスターが並んでいる。キャニスターには大量のコーヒー豆が詰まっている。お洒落に見せるため常に補充している。コーヒーミルも何種類も揃って棚に並べている。ミルの木の色が右から濃い茶色のもので、左に行くほど薄い茶色になるように飾られている。相談に来る客には大輔が淹れたコーヒーを飲んでもらう。もちろん豆にも拘っている。壁には水彩画が何枚か飾ってある。BGMは相談の邪魔にならない静かなクラシックを選んでいる。他の誰よりも大輔は自分の事務所が好きだった。もしかしたら自己満足のために、気遣っているだけかもしれない。浅薄な自身の思考を想い、ムフッと笑った。「何で笑っているの」アンジェラは丸テーブルに身を乗り出して大輔の顔を見る。二人はテーブルを間にして対面になって座っていた。「いや、アンジェラと一緒で幸せだなって思ってさ」これは事実だ。来週の日曜日から木曜日にかけてアンジェラが連休を取得したため、北海道旅行に行く予定が決まっていた。丁度大輔の仕事もひと段落付いたので、一緒に出かけることに決めた。こんなチャンスは今までは滅多になかった。アンジェラが今年からフリーのフィリピンパブ嬢になったため、休みが自由に取れるようになった。今までは契約の嬢だったため勝手に休みを取れなかった。「そうだ、今度の旅行は北海道のどこに行くの」彼女は楽しみ過ぎて、何度も北海道のことをスマホで調べているらしい。本人が言っていた。「とりあえず札幌は行っておこうよ。俺も始
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-28
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平和な一時、旅先での喜び

アンジェラは強がりだ。そんな彼女の性質をよく知っている。彼女はフリーになってから、毎月入って来るお金の三分の二をフィリピンにいる家族に送っている。契約ホステス時代も給料の半分は送っていた。残った三分の一は生活費や美容メイク代、衣装代で消えてしまう。 一緒に食事に行った際など、アンジェラの生活の辛さを知っているため奢ると毎回提案してみるが、アンジェラは一度も首を縦に振ったことはない。「大丈夫。私も出す。私、お金はあるんだから」お金なんてないはずだ。客から貰ったグッチの長財布の角は擦り切れている。自分で購入できないのだろう。良心の呵責もあって客に強請ることもできないようだ。今回の旅行の飛行機代とホテル代も全て出そうとしたが許されなかった。「何で大輔だけ払う?私と一緒に行くんだから、私も払わないとダメ」そんなアンジェラが大好きだが、心配になることが多い。常に自分がいないとダメだと責任を感じる。そんなところも魅力なのかもしれない。飛行機は新千歳空港に到着した。アンジェラは飛行機の小窓から外の景色を楽しそうに目を輝かせながら見ていた。「今日すっごい晴れてるね。お出かけ日和って言うんだっけ?」朝早くから家を出て羽田空港に向かったため、北海道に到着した時点で、まだ昼の十二時にもなっていなかった。太陽も高く昇り、柔らかな光を地上に放射している。飛行機から降りて新千歳空港の中を歩いて、JR千歳線のホームに向かった。「すごく涼しいね。まだ秋なのに」「そりゃそうだ。北海道なんだから」当たり前のことに感動するアンジェラが可愛い。Gジャンの前を閉じながらニッコリ笑っていた。電車がやって来た。札幌に着いたらまずは昼食を取ろうと決めていた。二条市場が海鮮丼で有名らしい。大輔もアンジェラも北海道は初めてなので、ベタなところに行ければ良いと考えていた。二条市場はビル群の狭間に広がっていた。通りには食事処や商店が並んでいる。建物全てが低く開放感があった。旅行客を気持ち良くさせる心遣いが感じられた。商店の暖簾を潜ると、蟹やアジの干物などが並んでいた。海産物の潮の香りが心地良い。食べログを開いて評価数の多い店に入ることにした。その店に向かうと看板に、うにいくら丼、かに汁、と書かれていた。
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