剣の稽古場に、朝の光が差し込む。ルークの額から汗が滴り、ヒナコの構えはいつになく鋭かった。二人は「覚醒」について考えていた。「……覚醒、ね。あたし達もやれるのかな。」ヒナコが息を吐きながら言う。「わかんねぇ。……けど、強くならなきゃってのは、もう決まってるんだ。」ルークは剣を振り、空を斬った。「じゃあ、いつも通り、やるしかないね。」ヒナコがにっと笑い、構えを取る。「うん、いつも通りだ。」そう言って、剣と剣が交錯した。彼らにとって「覚醒」は、突然起きる奇跡ではなく、日々の延長線にあるものだった。 一方、調理場ではアベルとアマネが、鍋を囲んでいた。「……お前、意外と豆なとこあるよな。」アベルが玉ねぎを刻みながら呟く。「ふふ……スープはね、人の心をあたためるの。殺伐とした空気に効くのよ。」アマネは薬草の束を解きながら優しく返した。「お前は……誰かを守りたくて、見てるんだな。あいつらのこと。」「お前さんは違うのかい?」「俺は……どっちかって言うと、背中を押す側だな。保護者っていうより、戦友って感じか。」「私はね、放っておけないのよ。あの子たち、まだまだ未熟で……それが愛おしいの。」アベルは微笑んだ。「違う視点でも、同じ想いってのは、面白いもんだ。」「そうねぇ、だから旅ってやつは奥深いのよ。」二人は、スープに火を入れた。香りが立ち、心を溶かすような湯気が広がった。 稽古を終えたルークとヒナコが、スープを口にする。「……うまっ。」「これ……アベルさんとアマネさんが?」「あの二人が作ったにしては……あったかいな。」ルークとヒナコは、顔を見合わせて笑った。 誰もがまだ、“覚醒”に至ってはいない。だが、進んでいる。
Huling Na-update : 2025-07-01 Magbasa pa