夜明け前の静寂は、土を這う音によって破られた。「っ……また来た!」ルークが即座に剣を抜く。リィナも銃を構えた。今度は、迷いも、戸惑いもない。「数は……前より多いぞ。」アベルが低く唸る。アマネの杖が発光し、仲間たちに小さな結界を張る。地の裂け目から、壁の影から、木の上から――“幼体”たちが這い出てくる。前よりも速く、前よりも統率されて。「繭の子……進化させてきたな。」銃の声が唸る。「でも、こっちも、進んだんだ!」「ルーク、回り込んで!距離、開けすぎ!」「了解!」少年の動きに、訓練の成果が見える。無駄がない。息が合っている。リィナのトリガーに合わせてルークの剣が閃き、一体、また一体と幼体を消し飛ばしていく。「アベル、右後方に流れてる!結界の調整頼む!」「言われるまでもねぇ!」アマネの結界が一瞬で補強され、横合いからの奇襲を防ぐ。「ショウ、いける?」「……うん!」カイルの拳に魔力が収束し、地面を穿つような一撃が炸裂。吹き飛ばされた幼体が樹に激突し、霧のように散る。それでも、数は止まらない。千の声が、母を呼ぶように鳴いている。「母さん……母さん……母さん……。」その呼び声に、リィナの胸が締めつけられる。(この子たち……生きようとしてる……でも……。)「負けない!」叫びと共に、引き金を引いた。空気が砕けるような轟音。銃から放たれた弾は、魔力を帯び、一直線に幼体の密集地を貫い
Last Updated : 2025-06-25 Read more