混乱の収束とともに、最初の都市には仮初めの静けさが戻っていた。リィナたちはそれぞれ、短い安らぎのひとときを思い思いに過ごしていた。傷を癒やす者、食事を楽しむ者、眠りを貪る者……。だが、その静寂は、決して永遠ではなかった。夜明け前、街の塔に設置された監視鈴が鳴る。風を断ち切る鋭い音が、リィナの耳を打った。「……また、来たの?」そう呟いたのは、タカフミのページを開いていたレオナだった。「違う。今度は……去っていく音だ。」アマネの杖が微かに震え、彼女が目を閉じる。「霧の主……ネーヴァ・ヴォイド。奴はもうこの都市にいない。けれど……“残響”がある。人の心に囁いた声が、未だに都市に染み付いてる。」その言葉に、一行は集まった。「逃げたってことか。」銃を肩に担いだリィナが、静かに呟く。「いや、“転移”だろう。精神干渉が彼の力なら、人と街の“境界”をたやすく越えられる。」フィアの分析に、全員がうなずいた。「だったら、俺たちが分かれて追うしかない。」ルークが立ち上がる。隣ではヒナコの剣が光を反射していた。「一都市ずつ洗うのは効率が悪すぎる。行動を分散して、奴の“痕跡”を探る。そういうことだな?」アベルが煙草に火を点けながら言った。「ちょっと賭けにはなるが……他に道はない。」「俺とショウで北へ行く。古い文献に、似たような精神干渉が起きた記録がある。」カイルの言葉に、ショウが不安げにうなずく。「……大丈夫。君がいれば、怖くない。」「私たちは光の神殿都市へ行くわ。」アマネがアベルを見上げる。「あそこには聖なる結界がある。霧の主でも、完全に隠れることはできないはずさ。」「じゃあ、私は空から。コウジと一緒に上空から都市間の移動経路を探る。霧が流れる“風”を読めば、奴の動きも読めるはず。」ブーメランを片手に、フィアが軽やかに笑った。「ボクたちは、彼を
Dernière mise à jour : 2025-07-06 Read More