Home / ファンタジー / 異世界リロード:転生者達の武器録 / 第三十六章:誇りなき剣に、誇りを問う

Share

第三十六章:誇りなき剣に、誇りを問う

Author: fuu
last update Last Updated: 2025-07-09 00:00:15

風の止んだ高原。そこはかつて、騎士たちが名誉を賭けて剣を交えた決闘の地だった。

そこに立つのは、かつての騎士団長――ハウリオス・ヴァルト。

漆黒の外套を纏い、冷笑を浮かべるその姿は、歴戦の気迫に満ちていた。

「ようやく会えたな、“神の剣”の使い手よ。……名を名乗れ。」

「ルークです。……この子は、“ヒナコ”っていいます。」

「“子”とは……ずいぶんと軽い物言いだな。」

ヒナコが眉をひそめる。

「軽くないよ。ただ、私はアイツと並んでいたいってだけ。」

その声には、確かな覚悟が宿っていた。

ハウリオスは剣を抜いた。刃にはかつての騎士団の紋章が刻まれている。

「誇りなき者に、誇りの剣は振るえぬ。……一対一の決闘を所望する。」

リィナたちが止めようとするも、ルークは首を振った。

「わかってる。これは俺たちの戦いだ。」

そして始まった、一対一の剣戟。

だが、剣と剣がぶつかり合うたびに、ルークの動きは鈍り、ヒナコの魔力も共鳴しない。

「くそっ……なんで、覚醒できない……!」

「見えすぎているのだ。“なぜ覚醒できないのか”という迷いが。」

ハウリオスの剣が唸り、ルークの膝をつかせた。

「お前たちには、誇りがない。ただ、“強くなりたい”という願いだけが先走っている。……だが、それだけでは足りぬ。」

敗北は、静かに決まった。

ハウリオスは剣を収め、背を向ける。

「一週間後、同じ場所で再戦を所望する。誇りを携えて来い。でなければ、俺はお前たちを“偽りの剣”として斬る。」

そしてその姿は、風に溶けるように消えていった。

地に伏すルークと、唇を噛みしめるヒナコ。

だが彼らの背に、仲間たちの温かな気配が集まっていた。

「立とう、ルーク。ヒナコ。お前たちの剣は、まだ折れていない。」

「一緒に、見つけよう。“お前たちの誇り”を。」

次なる戦いまでの七日間が、静かに、そして熱く始まった――。

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 異世界リロード:転生者達の武器録   第三十七章:剣の誇り、鉄の赦し

    剣士ルークと“神の剣”ヒナコは、敗北の痛みを引きずっていた。ハウリオス・ヴァルトに打ちのめされ、未熟さを突きつけられた二人は、次なる決闘に向けて鍛錬を重ねていたが、どこか迷いが拭えなかった。「ヒナコ、俺たちは……なにが足りないんだ?」「誇り、かな。たぶん……自分に誇りを持ててないと、剣の意味って消えるんだよ。」かつて全国大会でベスト8に名を連ねた剣士の魂であるヒナコは、その技術とプライドを胸に、今もなお模索していた。「ルーク、あんた自身はどうしたい?誰のために剣を振るうの?」「……守りたいんだ。誰かのために、ちゃんと立てる自分でありたい。それが……俺の誇りになるなら。」ヒナコは微笑んだ。「なら、もう迷わない。あたしも――もう一度、誇りを握るよ。」一方その頃、ライナと“神のハンマー”イオリもまた、自らに課せられた問いと向き合っていた。「……“裁く”って、なに?」ライナの問いに、イオリが答える。「人の過ちを叩いて止める。それが俺たちの“力”の本質だ。だが……それだけじゃ、世界は変わらない。」「赦すって、難しいね。だって、簡単に許していいことなんて、きっとないのに。」「でも、裁くだけじゃなく、“赦す”覚悟があるやつだけが、本当に人を救える。俺は……お前の手で、そういう力になりたい。」鉄と火の魂を持つハンマーは、ライナに“覚悟”を求めたのではなく、“選択”を委ねた。四人の旅は、再び交差する。剣とハンマー――その誇りと赦しは、やがて一つの強さになる。「俺はもう逃げない。今度は、俺たちの“誇り”を持って、立ち向かう!」「うん。あたしの刃は、もう迷わない!」「お前が赦せるなら、俺はどんな過ちも叩き直してやるさ。」「じゃあ、叩く先を間違えないようにね。私たちは、敵と、仲間の区別をつけられる人間でいよう。」決闘の刻は迫る。だがその前に、彼らは自らの心に打ち克つ必要があった。そして、彼らは確かに一歩、強くな

  • 異世界リロード:転生者達の武器録   第三十六章:誇りなき剣に、誇りを問う

    風の止んだ高原。そこはかつて、騎士たちが名誉を賭けて剣を交えた決闘の地だった。そこに立つのは、かつての騎士団長――ハウリオス・ヴァルト。漆黒の外套を纏い、冷笑を浮かべるその姿は、歴戦の気迫に満ちていた。「ようやく会えたな、“神の剣”の使い手よ。……名を名乗れ。」「ルークです。……この子は、“ヒナコ”っていいます。」「“子”とは……ずいぶんと軽い物言いだな。」ヒナコが眉をひそめる。「軽くないよ。ただ、私はアイツと並んでいたいってだけ。」その声には、確かな覚悟が宿っていた。ハウリオスは剣を抜いた。刃にはかつての騎士団の紋章が刻まれている。「誇りなき者に、誇りの剣は振るえぬ。……一対一の決闘を所望する。」リィナたちが止めようとするも、ルークは首を振った。「わかってる。これは俺たちの戦いだ。」そして始まった、一対一の剣戟。だが、剣と剣がぶつかり合うたびに、ルークの動きは鈍り、ヒナコの魔力も共鳴しない。「くそっ……なんで、覚醒できない……!」「見えすぎているのだ。“なぜ覚醒できないのか”という迷いが。」ハウリオスの剣が唸り、ルークの膝をつかせた。「お前たちには、誇りがない。ただ、“強くなりたい”という願いだけが先走っている。……だが、それだけでは足りぬ。」敗北は、静かに決まった。ハウリオスは剣を収め、背を向ける。「一週間後、同じ場所で再戦を所望する。誇りを携えて来い。でなければ、俺はお前たちを“偽りの剣”として斬る。」そしてその姿は、風に溶けるように消えていった。地に伏すルークと、唇を噛みしめるヒナコ。だが彼らの背に、仲間たちの温かな気配が集まっていた。「立とう、ルーク。ヒナコ。お前たちの剣は、まだ折れていない。」「一緒に、見つけよう。“お前たちの誇り”を。」次なる戦いまでの七日間が、静かに、そして熱く始まった――。

  • 異世界リロード:転生者達の武器録   第三十五章:閑話休題・武器たちの休日

    旅の途中、隊は久方ぶりに静かな夜を迎えていた。 魔物の気配もなく、火もよく燃える。 その夜は、戦いではなく――“手入れ”の時間だった。「さて……今日こそ、ちゃんと磨くよ。」リィナがそっと銃――ナギを膝に乗せる。 布でゆっくりと金属部分を拭うと、ナギが気恥ずかしそうに呟いた。「……そんなに見つめないでよ、照れる。」「うるさい。あんた、最近ちょっと焦げてたでしょ。」「しょうがないだろ、炎の中に突っ込んだんだから……。」それでも、布の動きはどこか優しかった。「よっしゃあ、俺たちも始めるか!」カイルは薪を組み替えながら、ショウを手に取った。 小手に宿る少年の声が震える。「だ、大丈夫だよ。僕、壊れてないと思うけど……。」「壊れてたって、直してやる。俺が“お前を守る”って決めたんだからな。」火に照らされた義手と小手の接続部分を、丹念に拭っていくカイルの手は、不器用ながらも丁寧だった。「ふぅん……光加減、悪くないわね。」ヒナコ――ビームサーベルが呟く。 ルークは研磨用の布を使って、柄の中に仕込まれた光源ユニットを清掃していた。「こういうの、剣道部ではやらなかったから、ちょっと緊張する。」「ふん。構えは良いのに、手入れで戸惑うとは……でも嫌いじゃない、その真面目さ。」ヒナコの声が、微かに照れていた。「さてと、俺たちの番かねぇ。」イオリ――神のハンマーが軽口を叩く。 ライナはハンマーの打面を見つめながら、真剣な表情を浮かべていた。「叩いてばっかりで、こんなときしかゆっくり話せないから……今日はちゃんと聞いてね。」「はっはっ、重い言葉だなあ。……だけど嬉しいよ。ありがとな、相棒。」「うん、調子は……いいわよ。」フィアが頬を染めながら、ブーメラン――コウジを磨く。

  • 異世界リロード:転生者達の武器録   第三十四章:記録の清算、懺悔の祈り

    滅びた都市の中央、かつての議事堂の広間に、灰が舞い、風が静かに吹き抜ける。そこに立つのは、一人の男――記録守(アーカイブ・キーパー)を名乗る者、オルネウス。「……来たか、“異世界の武器たち”よ。」彼の声は静かだが、空気に揺らぎをもたらす重みがあった。「ネーヴァ・ヴォイドは、確かにここでその生を閉じた。だが、その爪痕は深い。この都市に、魂の歪みと記録の矛盾を残したままだ。」一同が集まる中、彼の眼差しが、漆黒の大剣――その内部に宿る“魂”に注がれる。「君だ。君は、“あの運転手”であり、“罪を背負った魂”でもある。あの惨劇の震源でありながら、今なお戦おうとする者……。」静かに、大剣が地面に突き刺さる。刃の奥から、重々しい声が響いた。「……俺は、あの日、ハンドルを切れなかった。ただ、それだけのことだ……だが、ただそれだけで、命が失われ、誰かの人生が狂った。」その声に、仲間たちは耳を傾けた。「俺は……謝りたい。だが、誰に?許されるはずもない。あの日の俺に戻れたとしても、同じように、手は震えて動かなかっただろう。……情けない、未熟な、ただの人間だ。」誰も言葉を挟まなかった。風が、一度だけ広間を吹き抜けた。だが、最初に口を開いたのは、カンテラの中の“先生”だった。「それでも、君は今ここにいる。そして、君の声を、子どもたちも、仲間たちも聞いている。」次に、ブーメランの“コウジ”がふざけた調子で呟く。「運転ミス? それ、俺だって日常茶飯事だし。まあ、こっちは武器になってから転がってばっかだけどな!」その軽口に、場の空気が少しだけ和らいだ。「……人は、過ちを犯す。それを否定するのではなく、向き合うことに価値がある。」アマネがゆっくりと言った。「生きてる者も、死んだ者も……それを無駄にしないと、あたしは思いたいねぇ。」そして、ナギが大剣を見つめて言った。「俺は、お前を信じてる。だって、あの時、お前が俺たちのために剣を振るってくれたから。

  • 異世界リロード:転生者達の武器録   第三十三章:信じる力、断ち切る刃

    滅びた都市に再び、霧が満ちていた。かつて繁栄を誇ったその場所は、今や荒廃の象徴。灰と瓦礫が舞い、かすかな残響だけが風に溶けてゆく。だが、その中心に――“それ”はいた。四天王、ネーヴァ・ヴォイド。 沈黙する監視者。 霧のように揺らぐその姿は、見る者によって形を変える。「ようこそ、勇敢なる“武器持ち”たちよ。今日は少し……遊びをしようか。」その声は、頭の中に直接響く。まるで記憶をなぞるように。気がつけば、仲間の姿が揺らいでいた。リィナがルークを睨みつけ、アベルがカイルに銃口を向ける――そんな幻覚が彼らの視界を覆ってゆく。「やめろッ、俺じゃない……っ!」ルークが叫ぶ。だが目の前のリィナは、剣を構えたままだ。「お互いの心を疑えば、信頼などすぐに崩れる。さぁ、壊しあえ。お前たちの“絆”とやらの脆さを見せてくれよ。」笑うネーヴァ。だが。「……違う。」その声は、燃えるような決意とともに放たれた。立ち上がったのは、カイルとショウ。「俺たちは、そんなに脆くねぇ!」カイルが叫び、義手の小手――ショウがそれに応える。「ぼ、ぼく……もう怖くない!」二人の魂が共鳴し、ショウの小手に光が走る。「覚醒――“貫く意志”!」飛び上がるカイルの拳が、霧のような幻影を貫き――その中心に潜むネーヴァの核を、正確に撃ち抜く。「なっ……!」ネーヴァが後退する。そのとき、もう一つの光が生まれた。「まだ……終わってない。」静かに立ち上がったのは、傷だらけの青年と、その背にある漆黒の大剣。「お前が俺たちを欺き、操ったあの夜……俺は、何もできなかった。」彼の頬に走る傷は、かつて都市が滅んだ日の記憶。「でも、今は違う。今は――仲間がいる。」「俺を信じてくれた、こいつが……!」彼の背で、無口だった大剣が低く唸

  • 異世界リロード:転生者達の武器録   第三十二章:再起の火、交わる言葉

    夕暮れの色が、戦いの痕を優しく包み込む。焼けた瓦礫、崩れかけた村の門。そこに座り込んだのは、覚醒に至れなかったルークとライナ、そして、理性を失いかけた大剣使いの青年だった。「……やっぱり、俺じゃ駄目なのかもしれない。」ルークがぽつりと呟く。その手には、未だ真の輝きを得られぬビームサーベル――ヒナコ。「駄目じゃないよ。」その声は、ヒナコからだった。「むしろさ、あんたの“迷い”がちゃんと私に伝わってきた。それって、悪いことじゃないと思う。」ライナも、焚き火の前で項垂れていた。「覚醒って……なんでできないんだろうね、イオリ。」「そりゃお前……俺とお前の距離がまだちょっと遠いからだろうな。」とぼけたような声だが、優しさがにじんでいた。「お前は、俺を“道具”として見てたかもしれない。でも、それじゃダメなんだ。“武器”ってのは、ただの力じゃねぇ。“信頼”で初めて、本物になる。」ライナは、ゆっくりと目を閉じて頷いた。「……わかった。もっと、ちゃんと向き合う。私自身の弱さも、あなたの存在も。」その時、大剣使いの男が、ようやく口を開いた。「俺は……また、同じ過ちを繰り返すところだった。」彼の声は、静かで、深く沈んでいた。「何もできなかった過去が、ずっと俺を縛っていた。だけど……カイル、お前たちが俺を止めてくれた。」「止めたのは、ショウの一撃だよ。」カイルが微笑みながら答える。「でも、撃てたのは俺が信じてたから。あいつなら、俺の気持ちを絶対に受け止めてくれるって。」ショウは小さく、でも力強く言った。「……ぼくも、強くなりたい。だから、誰かを傷つけるのは……もう、嫌だよ。」誰もが、何かを乗り越えようとしていた。 自分の弱さ、過去、痛み。 それらを抱えたまま、前に進もうとしていた。「俺は……皆と一緒に、ネーヴァ・ヴォイドを倒したい。」大剣使いが、そう告げる

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status