「鈴ちゃん、H国の宮部先生に全顔皮膚移植の整形手術を予約して」木田紅那(きだ くれな)の言葉を聞いた瞬間、親友の宮部海鈴(みやべ みすず)はすぐに異変を察した。「全顔皮膚移植なんて相当苦しい手術だし、感染のリスクも高いよ。北都はあれだけあんたを愛してるんでしょ?そんな危険をあんたにさせるの?」「私たち、もうすぐ離婚するの。電話じゃ説明できない。H国に着いたら話すよ」電話を切った後、紅那は目を伏せ、スマホでリピート再生されている動画を見つめた。映像では、長浜北都(ながはま ほくと)が余裕なしに山根葉月(やまね はつき)を押し倒し、激しく動いている。葉月は長い脚を彼の腰に絡ませ、頬を赤らめ、媚びるような目つきで言った。「旦那様、あの傷だらけの奥様の顔を見て、立てるんですか?」「あの女の話を出すな。興が削がれる」北都は荒い息を吐きながら、彼女を叩いた。「よけいな動きすんなよ、この小悪魔。俺を干からびさせたいのか?」葉月はふざけながら甘えた声で言った。「もう、やだ~」紅那と北都は幼馴染で、結婚式の前日に一緒にウェディングフォトを撮りに行く途中で事故に遭った。彼を庇った彼女は車に撥ねられ、全身に重傷を負い、顔は地面に擦れて潰れてしまった。それでも北都は変わらず彼女を娶り、結婚後も変わらずに愛してくれていた。誰もが「彼は外見など関係なく、彼女を心から愛している」と言った。かつて彼女もそう信じていたが、半月前、何かがおかしいと感じ、密かに探偵を雇って調査させた。そして先ほど、その探偵から送られてきたのが、あの動画だった。北都は、ずっと前から家の家政婦と不倫していたのだ。動画はスマホのバッテリーが切れるまで繰り返し再生されていた。どれほど時間が経ったか分からない。玄関の扉が開かれる音がした。北都が慌てて部屋に駆け込んできて、紅那を抱きしめる。「紅那、心配したぞ。なんで電話に出なかったんだ?」彼の体には、まだ情事の残り香が漂っていた。紅那は吐き気を覚え、彼を突き放した。「スマホの電源が切れてたの」葉月が遅れて部屋に入ってきた。紅那の傷だらけの顔を見て、わざとらしい声で言った。「だから言ってたじゃないですか。奥様はずっと部屋にいて出ていないんだから、何かあるはずないっ
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