その体つき、その視線の落ちどころ。美穂は足音を殺して木の後ろへ回り、男がなおも三階の窓を見つめ続けているのを確認すると、ふいに手を伸ばして彼の肩を叩いた。肩先に木の葉が落ちたが、男はそれを払おうとする気配もなかった。トレンチコートのポケットの中でスマートフォンが震えた。秘書からのフライト確認のメッセージだった。怜司はまつげをかすかに震わせ、最後にもう一度三階の窓を見上げると、踵を返して立ち去ろうとした。清霜のSNSは三日前に更新されていた。写っていたのはラボの作業台で、磨き上げられた台面に、彼女の細い影が映り込んでいる。彼はその写真を一晩中じっと見つめ続け、ついに仕事を詰めに詰めて片づけ、最も早い深夜便で帰国する決心をしたのだった。飛行機が京市空港に着陸した頃、空の端がようやく白み始めていた。家族には内緒で帰国したため、家には戻らず、そのままタクシーで京市大学へ向かった。しかし建物の下を二時間も行きつ戻りつしながら、結局一度も上へは上がらなかった。あの出来事以来、二人の間には見えない壁ができたかのようだった。自分が現れれば、清霜をさらに気まずい思いにさせてしまうのではないか――そう思うと、足がすくんだ。遠くから一目、無事を確かめられれば、それでいい。そう思って背を向けた瞬間、突然肩を叩かれた。怜司の神経は一気に張り詰め、反射的に一歩後ずさりして腕を上げ、身を守ろうとする。だが相手の顔を認めた途端、彼は一瞬きょとんとし、固く握りしめていた拳をゆるめた。後退する動きには明らかな警戒がにじみ、フードがずり落ちて、やつれながらも相変わらず端正な顔立ちが露わになる。美穂は眉を上げた。これが、いつもスーツに身を包み、几帳面そのものだったあの怜司だろうか。目の下には濃い隈が刻まれ、顎には青い無精ひげ、きちんと整えられていたはずの髪は乱れ、前髪が無造作に額にかかっていた。かつては常に潤いを帯びていた目も、今はうっすらと血走り、目尻がわずかに垂れて、どこか落ちぶれた印象を添えていた。身に着けた黒いトレンチコートには旅の埃がつき、袖は前腕までまくられている。手首の骨のあたりには、浅い傷痕が一本走っていた。以前はネクタイが半センチずれただけでも結び直していた男が、今では肩の力を抜き、投げやりにも見える倦んだ空
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