ただの王女が政治的な話の助言をするなんて不審がられるかと思ったけれど、シルヴァンはロレインの言葉一つ一つを聞き漏らさないよう真剣に聞いていた。言葉遣いが『ロレイン』に戻っていたかもしれないけれど、今はそんなことよりもシルヴァンの態度がただただ嬉しかったのだ。「あなたの助言を元に策を練ってみます」「あ、陛下……グラシアル王国への打診は慎重に行う必要があります。あの国は中立を保つために、どちらかに肩入れしていると思われることを極度に嫌いますから」「なるほど。では、どのようなアプローチがいいとあなたは思いますか?」「宗教的な大義名分を前面に出すのはいかがでしょう? 『大陸の平和は神々の意志』『戦争による破壊は神殿への冒涜』といった形で、宗教会議としての仲裁を依頼するのです」「なるほど……それなら思想を重んじるグラシアル王国も断りにくいでしょうね」「あとは、交渉が成立した場合の具体的なメリットも用意しておくべきです。ヴァルモン魔国には技術協力と貿易拡大、グラシアル王国には仲裁成功の名誉と三国間貿易の利益など……」「三者にとって、争うよりも協力したほうが得だと思わせる関係を作り出す、ということか……参考になります」今までのロレインの提案を聞いたシルヴァンは話を頭の中で整理しているのか、じっと床を見つめて微動だにしない。そんな姿を見ると、ロレインはちゃんと彼に助言できたのだなと思えて頬が緩むのが分かった。「明日、早速宰相のクラウスと外務大臣に相談してみます。あなたの提案を具体的な外交戦略として練り上げてみますね」「お役に立てたのであれば幸いです」「本当はこんな話をしに来たわけじゃなかったんですが……あなたのおかげで、希望の光が見えてきました」シルヴァンが柔らかな笑みを向けて、ロレインの心臓が大きく跳ねた。そしてソファから立ち上がるシルヴァンの服の裾を、無意識にきゅっと握りしめてしまったのだ。「……どうか、な
Terakhir Diperbarui : 2025-07-11 Baca selengkapnya