身代わり花嫁の女装王子は狼陛下を遠ざけたい

身代わり花嫁の女装王子は狼陛下を遠ざけたい

last updateDernière mise à jour : 2025-08-04
Par:  社菘En cours
Langue: Japanese
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【愛するお父様、お兄様たちへ。リリアは愛する人と遠くへ行きます、探さないでください……本当にごめんなさい。でも私は耐えられません。】 なんて手紙が妹の部屋に置かれていたのは、隣国の皇帝陛下へ嫁入りする当日。この縁談が破談になればレグルス王国にはもう後がない―― レグルス王国の第二王子であり王国騎士団の一人であるロレインは妹のリリアに変装して、獣人が頂点に君臨する隣国に嫁ぐことになり……!? 果たしてロレインはリリアとして役目を果たすことができるのか――? 「狼の嗅覚をあまり舐めないほうがいいですよ、リリア……いや、ロレイン殿」 ――詰んだっぽいです、俺。 ※後天的オメガバース設定あり ※作中の獣人→ケモ耳

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Chapitre 1

プロローグ

【愛するお父様、お兄様たちへ。リリアは愛する人と遠くへ行きます、探さないでください……本当にごめんなさい。でも私は耐えられません。】

目に入れても痛くないほど可愛がってきた一歳違いの妹、リリア・ローズマリー・レグルス。学生時代に読んだロマンス小説のヒロインが、こんな手紙を置いて愛する人と駆け落ちするようなものを読んだ時に、ロレイン・エマニュエル・レグルスはこう思った。

自分の家族と絶縁してでも愛する人がいるというのはすごいことだし、誰かを本気で愛したことがない自分にとっては羨ましいな、と。

でも、自分の妹がそうなったら話は別。しかも、タイミングが最悪すぎるではないかとロレインは額に手を当てて項垂れた。

「………弟よ」

「嫌です、兄上」

「兄上はまだ何も言ってないが」

「あなたが言いそうなことは大体予想がついてますよ! 何年兄弟やってると思ってるんですか!」

「お前がもう23だからなぁ……23年の付き合いだ」

「真面目に返さんでいいですッ」

リリアの部屋で一緒に置き手紙を眺めているロレインの兄、ヴェストール・アレクサンダー・レグルスは顎に手を当てて難しい顔をしている。ただ、ロレインにはその兄が何を考えているのかが手に取るように分かった。

「……今日が何の日か分かってるよな、ロレイン」

「リリアがアストライア帝国に嫁入りをする日、ですが……」

「でも肝心のリリアが手紙を置いていなくなったわけだ」

「見りゃ分かります」

「この感じだと、まぁ、駆け落ちと言っていいだろうな」

「……ですね」

「というわけで、アストライア帝国に嫁入りする嫁がいなくなったわけだが」

「兄上が言いたいことは分かっていますが、無理ですよ」

「うちの弟は、王国一の美人と謳われるリリアに劣らない美形だと兄上は思っているんだよな」

「……だから、さすがに無理ですってば!」

ヴェストールが言いたいのは『お前がリリアに変装してアストライア帝国に予定通り嫁いでくれ』ということだ。

「俺は騎士ですよ!? 確かに見た目はリリアと似てますし体も細いですけど、体のゴツさでバレますって!」

「お前なら大丈夫だ、ロレイン。騎士だもの」

「兄上ッ!」

「お前が言いたいことは分かるが、考えてみてくれ、ロレイン。アストライア帝国との縁談がなくなれば、レグルス王国はヴァルモン魔国からの侵略待ったなしだ」

「そ、それは、そうですけど……」

「アストライア帝国と同盟を結ばない限り、レグルス王国は滅びる。そうだろう?」

王国が滅びると言われては、ロレインは何も言えずに口をつぐんだ。この最悪な状況をどう打開したらいいのか、アストライア帝国に嫁入りしなくてもいいほどの最善策が瞬時に浮かべば、そもそもこの縁談の話は進まなかっただろう。

「お前がどうにかこうにかアストライア帝国の皇帝を騙してる間、離縁されても大丈夫なように何か策を考えるし、リリアの捜索もして説得してみるから!」

父である国王陛下は床に臥せっていて、国王の代わりを第一王子であるヴェストールが行っているため、彼は連日連夜あまり眠れておらず目の下には濃いクマを作っている。そんな兄に頭を下げられ床に額をつけてまで懇願するヴェストールの姿を見ると、ロレインは噛み締めた奥歯がギリっと鈍い音を立てた。

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【愛するお父様、お兄様たちへ。リリアは愛する人と遠くへ行きます、探さないでください……本当にごめんなさい。でも私は耐えられません。】目に入れても痛くないほど可愛がってきた一歳違いの妹、リリア・ローズマリー・レグルス。学生時代に読んだロマンス小説のヒロインが、こんな手紙を置いて愛する人と駆け落ちするようなものを読んだ時に、ロレイン・エマニュエル・レグルスはこう思った。自分の家族と絶縁してでも愛する人がいるというのはすごいことだし、誰かを本気で愛したことがない自分にとっては羨ましいな、と。でも、自分の妹がそうなったら話は別。しかも、タイミングが最悪すぎるではないかとロレインは額に手を当てて項垂れた。「………弟よ」 「嫌です、兄上」 「兄上はまだ何も言ってないが」 「あなたが言いそうなことは大体予想がついてますよ! 何年兄弟やってると思ってるんですか!」 「お前がもう23だからなぁ……23年の付き合いだ」 「真面目に返さんでいいですッ」リリアの部屋で一緒に置き手紙を眺めているロレインの兄、ヴェストール・アレクサンダー・レグルスは顎に手を当てて難しい顔をしている。ただ、ロレインにはその兄が何を考えているのかが手に取るように分かった。「……今日が何の日か分かってるよな、ロレイン」 「リリアがアストライア帝国に嫁入りをする日、ですが……」 「でも肝心のリリアが手紙を置いていなくなったわけだ」 「見りゃ分かります」 「この感じだと、まぁ、駆け落ちと言っていいだろうな」 「……ですね」 「というわけで、アストライア帝国に嫁入りする嫁がいなくなったわけだが」 「兄上が言いたいことは分かっていますが、無理ですよ」 「うちの弟は、王国一の美人と謳われるリリアに劣らない美形だと兄上は思っているんだよな」 「……だから、さすがに無理ですってば!」ヴェストールが言いたいのは『お前がリリアに変装してアストライア帝国に予定通り嫁いでくれ』ということだ。「俺は騎士ですよ!? 確かに見た目はリリアと似てますし体も細いですけど、体のゴツさでバレますって!」 「お前なら大丈夫だ、ロレイン。騎士だもの」 「兄上ッ!」 「お前が言いたいことは分かるが、考えてみてくれ、ロレイン。アストライア帝国との縁談がなくなれば、レグルス王国はヴァルモン魔国からの侵略待った
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