遥樹は一瞬ぽかんとした。「え?」小春はふっと鼻で笑い、玉樹に意味深な目配せをした。「あんたの気持ち、バレバレなんだけど。私でも分かったよ。あんた、蒼空を追ってるんでしょ?」遥樹は眉を寄せ、耳までじわじわ赤くなりながら小声で言った。「......そんなに分かりやすい?」小春はまだ玉樹に目配せを続ける。「分からないほうがどうかしているよ」遥樹はしばらく黙り、ぽつりとつぶやいた。「みんな気付いてるのに......本人だけ気付かないなんて」「誰が?」小春は眉をひそめ、あからさまに苛立ちを見せた。その苛立ちは遥樹ではなく、玉樹に向けられたものだった。この玉樹、本当に単純すぎる。こんなに何度も合図送ってるのに、全然反応しないで、呑気にこっち見てるし。ほんと無垢か。「いや......なんでもないよ」遥樹はそっぽを向き、蒼空が去った方向を見た。小春は歯を食いしばり、玉樹を鋭くにらむ。玉樹は困ったように後頭部をかき、どもりながら言った。「どうした?目が痛いの?」小春は思わず天を仰ぎそうになった。そして勢いよく振り返ると、両手で遥樹の腕を掴んだ。遥樹が驚くより先に、小春は玉樹に向き直ってにらみつけた。「まだ分かんないの?さっき蒼空が何て言ったか聞いてなかった?早くこいつを捕まえて!」小春は本気で呆れていた。警戒する前に捕まえておきたかったから、さっきから何度も合図してたのに。何年も友達やってるんだから理解できると思ったのに、まさかの一本気。全然伝わってなかった。玉樹はぱちぱちと瞬きをした。「え?」遥樹は「ちょっと......!」ようやく意味を理解したらしい玉樹は、慌てて駆け寄った。「あっ、ああ、分かった!」遥樹の目が陰り、さりげなく力を込める。しかし玉樹は力だけは無駄に強く、遥樹をがしっと押さえつけ、腕を背中に回してロックし、真剣に言い放った。「暴れないで」長年、時友先生のオーラに包まれてきたせいで、こんな状況でも警告の声に威圧感はゼロ。無感情な朗読みたいな声だった。遥樹「......」玉樹が抑えてくれているのを見て、小春は満足げに手を離す。「時友先生、ここはおとなしくしときな。蒼空が行くなって言ったなら行かないの。行ったら怒る
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