隆の件は驚くほどの速さで進み、警察と審査局が協力して、公金横領・企業秘密の窃取・強姦未遂などの罪状で彼を起訴した。裁判所もすでに日程の調整に入っており、間もなく開廷される予定だ。数々の罪が重なれば、隆の行く末は明るくない。隆の醜聞が広まるにつれ、彼の会社の株は大きく揺れ、株価は下落し続けていた。トップを失った飯田家内部では、権力争いが激しさを増していく。内憂外患の中、真浩も手が回らず、隆の件は全て蒼空に任せるしかなかった。すでに隆は失脚し、かつての家族も友人も誰ひとりとして弁護士をつけようとはしなかった。彼についたのは、制度で割り当てられた無料の援助弁護士だけだった。蒼空は夏凛のもとを訪れた。近所に一連の出来事が知られてしまってから、彼女が噂に晒されないよう、蒼空は別の場所に住まわせていた。蒼空が着いたとき、夏凛はすでに隆のニュースを見ており、精神状態は目に見えて良くなっていた。「問題ないなら、私はもう行くよ。まだ仕事があるから」蒼空がそう言うと――「社長」夏凛が慌てて呼び止めた。蒼空は振り返り、静かな目で彼女を見る。「なにか?」夏凛の唇が何度か震える。あの出来事が近所に広まってから、向けられる視線はさまざまだった。同情、哀れみ、嘲り、軽蔑......良意であれ悪意であれ、すべてが針のようで、耐え難かった。ただ蒼空だけは違った。彼女の視線は以前と何ひとつ変わらない。静かで、淡々としていて、何の色もない。まるで、夏凛の身に起きたことが、蒼空にとってはどうでもいいように。それは夏凛にとって、唯一受け入れられる態度だった。乾いた唇を舐め、彼女はようやく言葉を絞り出した。「社長......どうしてここまで私を......」蒼空が隆の件でどれほど動き回っていたか、彼女は知っている。自分のために、大きく遠回りしてまで、隆を追い詰めた。その間、見知らぬ者から脅迫めいたメッセージも届いた。追及をやめろと。金を払うから引き下がれ、と。そんな者たちが自分を探し当てるのなら、蒼空がどれほどの圧力を受けているか想像に難くない。なのに自分たちの関係は、三、四年同じ会社で働いただけの、ただの上司と部下。そこまでしてもらう理由など、どこにもない。蒼空は静
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