擦り傷とはいえ、範囲が少し広く、ほとんど手のひら半分ほどの大きさだった。蒼空が膝の皮が剥けて血が細く流れ、足首まで伝っていたことに気づいたのは、車に乗ってからだった。傷の処置が終わらないうちに、遥樹が駆けつけてきた。来たときの顔色はまだまともだったのに、蒼空の膝を見た瞬間、表情が最悪になった。「......今度は何したの?」遥樹は本気で崩れ落ちそうだった。――どうして蒼空は、自分の見ていないところでこんなにボロボロになるのか。もう二回目だぞ!蒼空は髪を払って、気まずそうに言う。「ちょっと転んだだけよ。そんな目で見ないでよ」遥樹は眉間にしわを寄せ、彼女の前でしゃがみ込んで傷口をじっと見た。「どこで転んだら、こんな大きく擦るわけ?」蒼空は適当にごまかす。「夜暗くて、足元見えなかっただけ。大したことないから、表面だけの傷だからすぐ治るよ」もちろん、本当のことを言うつもりはない。もし「事故を止めるために助けに入った」なんて言えば、遥樹の性格からして、間違いなく彼女も自分もまとめて無人島まで引っ越すと怒鳴りかねない。遥樹は不満げに睨む。「いい大人なんだからちゃんと前見て歩きなよ。他は?ほかの箇所はもう検査した?」「全部診てもらったよ。問題あるのはここだけ」彼女の言葉に、遥樹はようやく息をついた。そして指先で彼女の額を軽くつつく。「次やったら、夜出かけるときはついていくしかないな」「遠慮しとくよ。どうせ遥樹、このあとまたどっか行くんでしょ?」蒼空が眉を上げた。遥樹は少し驚いた。「なんで分かった?」「ここ数日ずっとスマホ見て、返信返してばかり。見れば分かるよ」蒼空が言うと、遥樹は彼女を見つめ――次の瞬間、堪えきれない笑みが唇に浮かぶ。「お前さ、そんなに俺のこと気にしてくれてんだ?」蒼空は無表情で返す。「考えすぎ。ただ誰かさんが『ひと月は働く』って言ってたくせに、途中で逃げるんじゃないかと心配してるだけ」遥樹は舌打ちして言う。「あのな。もう少しは優しくしてくれない?」「病人は私なんだけど?」「はいはい、分かったよ。悪かったって」遥樹は笑いをこらえながら言った。コン、コン、コン――ノックの音がして、二人同時にそちらを見る。さっき処
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