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第589話

Penulis: 浮島
写真を見た瞬間、美紗希の視線がぴたりと止まり、瞳がわずかに揺れた。

彼女は小さく眉をひそめる。

写真の中の老人は、見慣れた顔だ。

その隣の若い娘の顔も、同じようによく知っている。

――最近よく店に来てはコーヒーを飲み、ピアノを弾いていく客人。

間違えるはずがない。

あんなに珍しくて、しかも綺麗な人を見間違えるわけがない。

名前までは尋ねたことがなかったけれど、今回が初めて知った。

胸の奥がざわりと揺れ、重い石が落ちてきたような圧迫感が広がった。

こんな偶然、あり得るのか?

思音。

自分と面識があって、たまたま友人が骨折で入院していて、そして祖母とも知り合った?

瑠々と接触し続けてきたこの数年、普通じゃない出来事には慣れている。

強い直感が告げていた――

これは単なる偶然じゃない。

梅子は楽しそうに訊いた。

「どう?この子、綺麗でしょう?」

「うん。とても......綺麗だよ」

美紗希は頷き、少しだけ迷うように問いかける。

「おばあちゃん、その子に会ったのって、いつ?」

梅子は記憶を探るように眉を寄せた。

「ええと、数日前だったかな」

「具体的には何日くらい?」

「どうしたの、いきなり?」

「大事な話なの」

梅子は一瞬ぽかんとした。

「四日前くらいかね」

四日前......

つまり、思音は先に彼女のカフェに来て、そのあと病院でおばあちゃんに会ったことになる。

思音に怪しい素振りはない。

数日の会話で好印象すら抱いていた。

それでも、どうしても引っかかる。

この数日のやりとりを思い返す。

礼儀正しくて、距離感も適切で、話していて心地よくて、ユーモアもある。

ピアノも上手い。

――ピアノ。

今日はちょうど自分の新作のピアノ曲を瑠々に送ったばかりで、今の彼女はピアノという単語だけで敏感になる。

美紗希は写真を上田に返し、「この写真、私にも送ってください」と言った。

上田は頷いて操作を始める。

梅子は不安げに訊いた。

「何か問題?」

美紗希は梅子の隣に腰を下ろす。

「その思音って子......この数日、うちのカフェにも通ってた。おばあちゃんと会うより前から」

梅子の目がぱっと輝く。

「本当に?これも何かの縁よ!私ね、前から美紗希に紹介したいって思ってたのよ」

美紗希は唇を軽く噛む。

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