病院に向かう直前、昇から突然メッセージが届いた。時間の調整がついたので、兄の沢に一目会わせてくれるという。「ミキ」の事件から、すでに二日が経っていた。それ以来、沢の姿を一度も見ていない。覚せい剤と媚薬のダブルパンチで、二人のボディーガードの前で苦しみ悶える次兄の姿だけしか知らない。この面会の機会は、昨夜あれほどまでに蓮の前で跪いて、「奉仕」することでようやく手に入れたものだ。だからこそ、彼女は行かないわけにはいかなかった。チン——エレベーターのボタンを押すと、すぐに扉が開いた。美夜が中へ入ろうとしたそのとき、突然腕を掴まれた。浩司が一歩踏み出して彼女の腕を引き止め、美しいツリ目を細めて問いかけた。「誰と約束してるんだ?」強くは握られていなかったが、それでも腕に鈍い痛みが走った。美夜はため息をついた。「馬場昇よ。今日の午後、次兄に会わせてくれるって言ってた」「お前……」浩司は怒りを抑えきれない様子で、一瞬言葉に詰まり、声をひそめて低く言い放った。「バカなんじゃないのか?馬場秘書が来たんじゃない、蓮が動いたんだぞ。やつがお前にまともな用で声をかけると思ってるのか?」「まともなわけがないわ」彼女にも、それは分かっていた。もう、離婚して間もない頃のような、未練がましい幻想は捨てた。あの頃はまだ、蓮がいずれ離婚を後悔し、これはただの衝動だったのだと、自分に言い聞かせていた。でも時間が経つにつれ、蓮が泉家とグループに対してますます苛烈な弾圧を加える姿を目の当たりにし、どんなに甘く見ても、離婚は紛れもない現実であり、蓮が自分を愛したことなど一度もなかったのだと、ようやく気づいた。この間、何度も蓮と顔を合わせる中で、さらにはっきりしたことがある。彼はおそらく、最初から私のことを少しも好きではなかったのだ。ほんの少しでも情があれば、ここまで傷つけようとは思わないはずだ。美夜は顔を向け、浩司を見た。彼を刺激してはならないと分かっていたので、意識的に柔らかい口調で話した。「あなたが言いたいのは分かる。兄を助け出すって。でも、兄がどこにいるか、あなたにも分からないでしょう?津海市に戻ってきたばかりのあなたに、あの人たちと渡り合える地盤はまだないと思う。これはあなたを責めてるんじゃない。ただ…
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