辰巳は藤原家の影響を受けない町に来た。 そこで身分を変え、人の大勢いる場所、大学に足を踏み入れた。 幼少期からずるがしこく、演技力に長けていた辰巳は、おのれの目的のためなら相手に低姿勢で接することもできる。 おとなしくて従順そうで、名前に数字がついている女学生を調べ、さりげなく近づいて行った。 一美(ひとみ) 二葉(ふたば) 三枝(みえ) 四つ葉(よつは) 五実(いつみ) 六子(むつこ) 七湖(ななこ) それぞれに接触し、デートを重ね、告白し、恋人になった。 器用なことに、辰巳は彼女たちの前に出るときは変装し、間違えることはなかった。 何しろ彼女たちのことを数字で覚えていて、一番にはカジュアル、二番には黒縁眼鏡のインテリと役割も決めていたので、手下たちにも情報を共有し、デート前の服装チェック、言葉遣い、何を話したのかまで記録させ、会う前には簡単なおさらいをして彼女の前に立った。 彼女たちは純粋無垢で、多少の戸惑いは見られたが、すぐに辰巳の告白を受け入れて恋人になった。 辰巳は身分を明かさなかったため、彼女たちは辰巳が大金持ちであることも知らない。 なので質素なデートにも何も文句は言わず、ただおとなしく辰巳に従っていた。 7人もいるというのに、彼女たちは似たような性格であり、辰巳のことを知らないはずなのに、口数も少なく、ただただ辰巳の言うことを従順に聞くだけなので、辰巳は満足するとともに退屈を感じた。 辰巳が女たちを手荒く扱うときは、大抵女側が何かをねだったり、わがままを言ったり、気に入らないことをするときなのだが、7人いる彼女たちにはそれが全くない。 一週間、毎日違う女と会っているのに、あまりにも彼女たちは無個性だった。 血のつながりがあるのではと邪推して、部下に調べさせるほどであった。 だが彼女たちは学部も違うし、顔も全く違う。 いつも辰巳の言うことに、 「うん、わかった」 と答えて辰巳の言葉通りに動いた。 誕生日にもらったと嬉しそうに話す一美の手から「うっかり」それを奪って「うっかり」床に叩きつけても怒ることはせず、悲しげに見つめるだけ。 「ごめん」と謝れば、こくんとうなずいた。 「うん、わかった」 二葉と美術館へデートへ行ったとき、二葉は好きな画家のグッズが売られている販売所へ行き、ポストカードを買った
Last Updated : 2025-07-10 Read more