Semua Bab 異世界クロスオーバー 〜例え愛してはいけなかったとしても年下皇子と愛を紡いでいきたい〜: Bab 11 - Bab 20

37 Bab

言い合いになって初めて真相が明らかになる

「玲喜、何処へ行く?」「帰れたんだからオレはもう用済みだろ。オレは何処か暮らせる所がないか探してくる。もう日本には戻らない」 出て行こうとした所で、距離を詰めてきたゼリゼに後ろから抱きしめられた。「俺にはお前が必要だと言っただろう」 緩く首を振る。 嫌われながらも生活を共に出来る程、強い精神力は今の玲喜にはなかった。「お前にはもう抱かれたくない。関係も終わりにさせてくれ。それに嫌いなオレの顔を見なくても済むぞ。良かったな」 振り返ると何故かまた泣いてしまいそうで、玲喜は扉の方向を見つめたままゼリゼの腕から逃れようともがく。「先程から思っていたが、俺はお前を嫌いだと言った覚えはないが?」「顔を見るだけで苛々するって言ってただろ。もういいってそれは。いい加減離してくれ。日が高い内に寝床を確保しに行きたい」 力を込めれば込めるだけ、ゼリゼの腕の力も強くなった。「住むなら此処に住めばいい」 告げられた言葉に玲喜が力なく笑う。 親切心をそのまま受け取れる状態でもなくて、玲喜は嘲笑するかのように口を開いた。「それでまた夜の慰みものになれとでも言うつもりか? そんなにオレの体は良かったかよ…………ウンザリだ」「お前何言って……」 力が緩んだ隙に振り返り、正面からゼリゼを睨みつける。「お前の顔なんて見たくない。オレはお前と縁を切りたいんだ! 分かれよ! 王族だろうが関係ない。お前との事は全部忘れたい。無かった事にしたい。いい加減オレを解放してくれ!」 叫ぶように言った直後に、有無を言わさず抱え上げられて奥の間にあるベッドに放り投げられた。 逃げ出そうとしたところで押し倒されマウントポジションを取られてしまい、逃げ場を失う。「ゼリゼ!」 両腕をいとも簡単に頭上で固定され片手で押さえ込まれる。 全力で拒否しているのにゼリゼの体はピクリとも動かない。やがて息が上がってきて力さえまともに入らなくなってきた。「玲喜、良い事を教えてやろうか」「何だよっ⁉︎」 上着をたくし上げられ、素肌に手のひらを這わせられる。「ちょ、やめろ! こう
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-28
Baca selengkapnya

お前にとって俺との事は間違いだったのか?

 ——だからあの時態度がおかしかったのか……。 些細な事で互いの間にかなりの齟齬《そご》が生じていたのがおかしくて、玲喜は思わず空笑いした。「何がおかしい。笑い話しはしていない」「誰のせいだと思ってるんだ。説明もしないで不機嫌そうに、お前を見ていると苛々するとか言われたら嫌われてるとしか思わないだろ! なのに体だけは毎晩何度も求めてくるし意味が分からない。嫌がらせついでの欲の捌け口としてしか見られてないって思ってみても、手酷く犯されるどころか前戯から馬鹿みたいに丁寧だし……本当に意味が分からなかった! そのせいでこっちは連日神経ゴリゴリ削られてメンタルやられてんだよ。しかも何勝手に孕ませてんだ! お前マジでふざけんな! オレの気持ちも意思も無視かよ。ゼリゼ……っ、こんな事になる前に、ちゃんとオレに言うべき言葉があっただろ⁉︎」 途中から怒り口調になった玲喜に泣きながら言われて、ゼリゼが戸惑ったように視線を彷徨わせる。やがて観念したのか口を開いた。「…………俺が、悪かった。泣くな玲喜。お前に泣かれるとどうしたらいいのか分からん。もう日本に戻らないのなら俺と此処で一緒に暮らして欲しい。何処にも行くな。お前が必要だと言ったのは本当の気持ちだ」「その前にも、先に言う事があるだろ?」 即座に返され、ゼリゼはだいぶ間を空けて言った。「こんな気持ちになったのは初めてだ。何と表現すれば良い?」 玲喜は体を起こして膝立ちになると、ゼリゼの頭を腕の中に抱き込む。迷子の子どもに言い聞かせるみたいに、落ち着いた声音で玲喜が続ける。「世間一般ではそういうのを好きって言うんだよ、このヤンデレバカ皇子。やる事ばっか上手くて、情緒は死んでるって何だよそれ。お前の倫理観どうなってんだよ、全然笑えねえよ」「好きだ……玲喜。大切なんだ。だがどうやって大切にすればいいのか良く分からない。何をしてもお前は泣く。どうすれば以前のようにまた笑ってくれる?」 玲喜の腰に両手を乗せて、ゼリゼが尋ねる。 本気でそんな事を言っているのが信じられなくて、玲喜は呆れた。 日本ではあり得ない事案もマーレゼレゴス帝国では当たり前なのかと考える。皇子ともなれば世継ぎを求められてもおかし
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-29
Baca selengkapnya

ぜリゼにオレをあげる

「お前をモノ扱いするわけがない。玲喜、なら……」 体の向きを変えてベッドに座り直したゼリゼに頷いてみせる。 また泣きそうになった顔を誤魔化すように眉尻を下げて、緩く微笑んで見せた。「オレを欲しがるのなんてお前くらいだ、ゼリゼ。オレには何もない。それでもいいなら……、お前に全部あげる。オレをあげる。ゼリゼ、オレの家族になってくれて……ありがとう」 こんなに簡単に受け入れて扱うべきじゃ無いという事は分かっている。 それでもゼリゼに惹かれていたのも事実だった。 それとは別で生きる希望が出来たのも本当で、大切で尊くて、胸の奥が熱くなってくる。ベッドの上で膝立ちになったままゼリゼの額に唇を押し当てた。 さっきまでと違う意味の涙が溢れてきて、自分で自分に困った。「これ以上泣くな。その綺麗な目が溶けて虹になるぞ」「ふふ……っ、ならねーよ」 ——それに綺麗なのは、ゼリゼの目の方だ。 船乗りに恋した人魚の涙がアクアマリンになった。船乗りは旅をしていた皇子だった。しかしその人魚は泡になって消える……。 いつか自分も同じ事になるのだろうか。今は楽観的に回ってくれない頭の中で玲喜は思わずそう考えてしまった。 後頭部に回ってきた手に引き寄せられて唇を重ね、啄むように何度も口付け合って額同士をくっつける。 すると、慌ただしい誰かの足音が響いてきた。「ゼリゼ様! こちらにいらっしゃるのですか⁉︎」 ノックの音と共に酷く焦った誰かの声が聞こえた。「入れ」「失礼します。良かった! 突然消えたので私みたいにどこかに異世界転移してしまったのかと思ってしまいました!」「いや、日本という所に飛ばされて今帰ってきた所だ。一カ月は経過していただろう?」「いえ、ゼリゼ様が居らっしゃらなかったのは実質一日程度です」「は?」「え、ラル?」 扉を開けて入ってきたその人物は、銀縁眼鏡に薄いピンク色の髪の毛を斜め分けにした人物で、どう見ても玲喜が知っているラル本人で間違いなかった。 名前を呼んだのはいいが己が服さえ着ていないのを思い出して、玲喜は思わずゼリゼを盾にして隠れるように身
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-30
Baca selengkapnya

ラルって思ってたのと違ってた……

「玲喜……それは本当に貴方の望まれた妊娠ですか? この性欲無節操バカ皇子に無理矢理仕込まれたんじゃ?」 ——性欲無節操バカ皇子て……。 苦笑する。しかも的確に言い当てられた。 ラルの声音は静かなのに、地響きが聞こえてきそう程に剣呑な空気が流れている。 その通りだとは言い出し難い。伝えようものなら殺傷沙汰にさえなり兼ねなかった。それと、この国でのゼリゼの素行が知れた気がする。「あ……うん。心配しなくて大丈夫だよ、ラル」 ゼリゼは飄々とした態度で、当たり前のように玲喜を抱き上げて、横向きに抱え直す。 こうなってしまうと気遣いで巻かれたシーツがまるで拘束具のようだ。それにまだラルとの関係性を疑われている気がして嘆息する。それを見たラルが「頭でも打ったのか」と言わんばかりにゼリゼを見ていた。 ——もしかしてゼリゼがこういう態度を取るのって珍しいのか? 何だか居た堪れなくなり、玲喜はゼリゼの腕の中から出ようとしたが、がっしりと捕まれている為に微動だにできなかった。「ゼリゼ、人前でこれは恥ずかしいから下ろしてくれ」「断る。俺に全てやると言ったばかりだろう? 約束は違えるな。お前は俺のものだ。誰にも渡さない」 解放されるどころか額と頬に口付けられてしまい、玲喜の羞恥心を更に煽っていく。 ——恥ずかし過ぎる……無理。 恋愛初心者には直球すぎる求愛行動には耐えられなかった。 玲喜は、気持ち的に静かに瞑目した。「ゼリゼ様……頭でも打たれましたか?」 とうとうラルから問われ、ゼリゼが訝しげな視線を向ける。「おかしな事を言うな。お前も特定の相手を見つけろと言っていただろう? 俺は日本で玲喜を見つけた。玲喜以外にはもう手を出さんし、誰が何と言おうと玲喜以外とは結婚もせん」 ——不特定多数と遊んでいたんだな? 納得すると同時に頭が痛くなった。 玲喜は抗うのも辞め、ゼリゼに身を任せたままだ。同じく別の意味で黙ってしまったラルがフラフラとしながら部屋を出ていく。「あのゼリゼ様が……馬鹿な。天変地異の前触れか」 一人ブツブツと呟いているのが、玲喜の方まで丸聞こえだった
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-31
Baca selengkapnya

実はチートだった

「コイツはいつもこうだ。性格が歪んでるんだろうよ。気にしなくて良い」 「そうなんだ……」 それってゼリゼのせいなんじゃ? とは言わずに玲喜は慣れないナイフとフォークに手を伸ばす。玲喜からすれば箸がほしい所だ。 「箸もあるか見に行くか?」 ちょうど考えていた事を言われ、大きく頷く。 「でも明後日でいいよ。予定埋まってるんだろ? オレの事は気にしなくて大丈夫だ。オレからすれば全てが目新しいものばかりだから、見ているだけでも楽しい。ゼリゼが仕事をしている間は、城内でも探索しとくよ」 日本に来たばかりのゼリゼを思い出す。電車に興奮していたのも無理ないな、と玲喜は考えてしまった。実際自分が同じ立場になってみてよく分かる。 「この城は複雑な作りになっていて広いからな。年に何人かは行方不明になって、城内の何処かから餓死寸前で見つかっている。独り歩きは辞めておいた方が良い」 「え」 ——何だそれ怖すぎる。 青ざめた玲喜を見てゼリゼが笑んだ。 「行くのなら従者をつけよう。ラル、信頼の置ける奴を一人貸せ。玲喜につけろ」 「畏まりました。その前に玲喜にも一応魔力検査と試験を受けて貰います。因みにセレナ様は光属性の中でも貴重な聖《せい》魔法の使い手でしたよ。治癒能力にかけてはかなりの腕前でした」 「へえ、セレナってそうだったんだな。属性についてはオレには良く分からないけど、治癒か。言われてみればセレナが触る所は怪我が治るから不思議だったんだ。おまじないの言葉があるんだよな。よく教えて貰ってた。でもオレは魔法とか使えないぞ。セレナにも言われた事なかったし、ゼリゼの見て初めて魔法って知ったくらいだからな」 玲喜の話を聞いて「それはまじないの言葉と称して魔法を教えて貰っていたのでは?」とゼリゼとラルは顔を見合わせた。 食事が終わり、城から少し移動する。 左手にあった丘に登って大きな広場に移動した。周りには遠くに山が見え、その合間に深い色合いの海が広がっている。山は見慣れているが、海は電車に乗って遠出した時に見る程度だった玲喜は胸が高鳴った。 「綺麗だな、この国」 「だろう?」 ゼリゼが世界屈指と言った理由が分かり、玲喜が頷く。 「玲喜、こちらへどうぞ」 地面に描かれた大きな魔法陣の上に案内される。記号のような文字
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-31
Baca selengkapnya

城下街へ行こう

「よろしく、アーミナ」「はい! よろしくお願いします!」 玲喜はそのままアーミナと共に城内の探索に行き、それを見送ったゼリゼはラルと共に政務の為に執務室へと足を向けた。 ゼリゼは作業用のデスクに腰掛けて、昨日の分と纏めて書類に手をつけていく。そして二時間程時間が経過し、その作業がひと段落した時に、飲み物を用意してきたラルがゼリゼのデスクに置いた。「ゼリゼ様、セレナ様が何故お亡くなりになられたのか玲喜に聞いていませんか?」 静かな口調でラルが問い掛ける。「ああ。病気だと言っていたな。だが、セレナは治癒能力に秀でていたのだろう? その能力を持ってしても治せないくらい重い病だったのか疑問が残るな」 顔を上げたゼリゼが答えながらラルに視線を向ける。ラルはどこか遠い目をしていた。「セレナ様は此方の世界と日本を自由に行き来できました。そして初対面だったにも拘らずにも、態々此方に赴いてまで、誰にも治せなかった妹の不治の病を治して下さいました。私が知る限りでも帝国随一の光属性聖魔法使いです。恐らくセレナ様に治せない病はありません。ただ、誰かの命をお繋ぎになる為に自身の寿命を対価と差し出したのならば、それは契約上の縛りとなりますので、そこから生じた病は治せません」 その言葉にゼリゼは息を呑んだ。「まさか……」「ええ。もしかしたら、玲喜はセレナ様が亡くなられる前に死亡……もしくは一度亡くなられる程の重症になられていた可能性があります。それをセレナ様が己の寿命と引き換えに玲喜の命を繋いだ。それ以外にセレナ様があの歳で亡くなられる理由がありません。喜一郎の為だったとも考えたのですが、喜一郎の性格上、後二十年も生きられるか分からない己の為に、態々難易度の高過ぎる魔法を使わせるとは思えないんです。喜一郎はそれ程にセレナ様を愛しておられました。それと気になる噂話も耳にしたんですよ」「噂?」「ええ。私は個人的にどうしてセレナ様が王族から除名されてしまったのかも、ずっと調べていました。能力も人格も共に秀で、また誰からも好かれるようなお方でした。故に理解が出来なかったんです。そんな時に教会の外れにある小さな村に調査で訪れた時に耳にしたんです。それは聖女が産んだとされる子との話でした。〝子を産んですぐにその聖女は姿を消した。その子は類を見ない程の魔力を有していて、子の身であり
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-31
Baca selengkapnya

易者

「何でオレの名前……?」 訳が分からず困惑する。「お兄さんとはまたすぐ会えると思うから、それはその時に話すよ」 声を聞く限りでは若い少年なのだが、ヴェールを被っているのもあって年齢性別共に不詳だった。「今日は忠告だけしとく。二度目の死が貴方について回っている。気をつけなね、お兄さん。貴方が消えると混沌が訪れるから」「え? 二度? 混沌て……」 濃い黄色がかった易者の目がチェシャ猫のように細められる。 本心で言っているのか冗談なのかも分からなかった。 どういう意味だろう? そのまま鵜呑みにすると、己は一度死んでいてその後で生き返った事になる。そしてまた死ぬ危険があると言われているのだ。 しかし、混沌とは何だ?『玲喜っ、ダメよ……玲喜、戻ってきて』 全身が脈打ったかのように熱くなった。 そんな記憶はない筈なのに、セレナがそう叫びながら泣いていた。 ——何だ、これ。 ある筈のない記憶の一部が脳に直接なだれ込んできて、訳が分からず困惑する。 そんな玲喜の思考を遮るようにゼリゼが口を開いた。「おい、貴様。適当な事をほざくな。行くぞ玲喜」 手首を取られてどんどん先に進まれ、玲喜は自然と絡れそうになるくらいの早足になった。リーチの差を考えて欲しい。「ゼリゼちょっと待て。止まれよ! お前と二十センチは身長差あるんだぞ。その歩幅に合わせるのはしんどい!」「ああ、すまん。つい……。抱き上げるのを失念していた」「そこじゃねえよ!」 寧ろ抱き上げられなくて良かった。 あれは恥ずかしすぎる。握られていた手首が痛いくらいに熱を持っていた。 一体どうしたというだろう。ゼリゼらしくない行いだった。 反対側の手で手首を擦りながら周りを見渡すと、ラルの姿がなくなっている事に玲喜は気がついた。「あれ? ラル居なくなってる。逸れたんじゃ? 戻った方が良いんじゃ無いか?」 日本みたいにスマホなどの電子機器はマーレゼレゴス帝国にはない。 玲喜が一人あたふたしているとゼリゼが右手を挙げて空に何かを書いていた。「何してるんだゼリゼ?」「ラルに送るメッセージを作成している。これで後で問題なく合流出来る」 ゼリゼが呪文を唱えると文が空気に溶ける。「凄いなゼリゼ! 魔法使いって感じでカッコいい! オレもそういう魔法なら使いたい。前にお前がやってた鍵開けたり
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-31
Baca selengkapnya

交錯していく

「玲喜、走るな」 味噌を手にしたゼリゼが追いかけてきて、男たちの体を浮かせたまま玲喜を見つめる。「ああ、そうだな。走ると危ないな。……ごめんゼリゼ。まだ実感ないから忘れてた」 自覚がないあまり失念していた。「ゼリゼっ? て、だ……第三皇子⁉︎ どうして此処に⁉︎」「問おう。貴様ら俺のものに何か用か?」「ひっ、い、いや……別に……」 眉間に皺を寄せて不機嫌そうに口を開いたゼリゼを見て、小さく悲鳴を上げながら男たちは空中で口籠もっていた。「ゼリゼ様、玲喜、やっと追いつけました。その者たちは? どうかされたんですか?」「玲喜に絡んでいた」 ラルが合流した事により、てっきり現状を止めて貰えるのだと安堵の吐息をつく。そんな玲喜の思いはアッサリと裏切られる事となった。「でしたら二度とこの様な事態にならぬ様に異空間にでも飛ばして閉じ込めてしまえば良いと思います」 眼鏡のブリッジを押し上げてラルが真顔で言った。 ——え、ラル?「そうだな」 男たちの顔色はどんどん悪くなっていく。「待て! 待て待て待て! そこまでする必要ないだろ! ゼリゼ本当にやめろ!」 呪文を唱え始めたゼリゼの腕に慌てて飛びつく。 しかし片手で持ち上げられてしまい腰あたりで体を固定されてしまった。 三人のいる場所には、何事かと集まった野次馬で人垣が出来始めている。「ゼリゼ、やめてくれ!」 首元に抱きつき、玲喜はゼリゼの意識を自分に向けさせようと必死だった。「ふん、玲喜に免じて許してやろう。今度玲喜に手を出してみろ。タダじゃ済まさん」 一目散に逃げていく男たちを見て、ふふふとラルが楽しそうに笑いを溢す。ゼリゼもニヤニヤと笑みを浮かべていた。「まさか……」 玲喜が漸く茶番だと気がついた時には、三人の周りには人で輪が出来ていて、玲喜たち三人の名前を口にしている。「第三皇子様のお気に入りらしい。呼び捨てにしていたぞ」「変わり種ばかり置いているあそこの店で箸というものを買っていた」「さっきあの子ウチの店にも来ていたな」「変な発酵物ばかり作るレトのとこで何かの定期購入の契約も結んでいたぞ」 ——やられた……。 これでは嫌でも第三皇子イコール玲喜という図が出来てしまう。 それにゼリゼの従者であるラルまでもが玲喜を害する相手を排除しようと加わった事で、玲喜の立ち位置
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-31
Baca selengkapnya

聖属性魔法

 ***「いや、それは勘弁してくれ」 城に戻ったのはいいが、夕食からすぐに味噌汁が飲みたいというゼリゼの言葉に玲喜は困っていた。 玲喜が作るという事は、専属シェフたちの仕事を取るようなものだし機嫌を損ねるばかりか、玲喜の立ち位置までもが危うくなるだろう。 なるべく諍い事は避けたいし、目立つ行動も取りたくはない。 理由を話してゼリゼがいつも食べている夜食で手を打って貰った。 夜食ならシェフたち従業員は休んでいる時間帯なので差し障りないだろう。 予め使っていい食材をシェフに確認して許可を貰う。そしてその時になった。 作っている間中玲喜の周りをウロつくゼリゼと、一緒に夜食待ちをしているラルと、数日前から玲喜の従者をしているアーミナの分を考慮し少し多めに作った。 日本にいる時は値段も手頃で使い勝手の良い豆腐やワカメ、油揚げかほうれん草がメインだったが、今日は魚介類の味噌汁だ。 玲喜からすればかなり豪華である。それに加えツマミを何品か出してテーブルの上に並べた。「具が変わるとこうも違うものなのだな。これもこれで良い」 ゼリゼの言葉にラルが頷いている。「久しぶりに食べました。これは喜一郎仕込みですか? セレナ様の手料理は壊滅的でしたからね。ダークマターを出された時は暗黒物質を視認出来た驚きと、断ろうかそれとも死を覚悟で食すべきか、という究極の二択を前に本気で悩み、脂汗が止まらなかったのを覚えています。喜一郎に助けて貰わなければ今頃どうなっていたか、想像するだけで寒気がします」 ラルが自分の両腕をしきりに擦りながら言った。「玲喜もう一杯だ」「ボクも欲しいです!」 ゼリゼに続き、アーミナが瞳を輝かせながら完食しおかわりを要求していた。 ゼリゼの分を先に入れて、アーミナのも入れる。「そう。喜一郎からだ。セレナの料理は確かに酷かったからな。オレと喜一郎は何度もあの世を見たよ」 玲喜が遠い目をする。 それから表情を崩して笑い、思い出に浸るように玲喜が目を窄めた。 家族を何より大切にする玲喜は喜一郎やセレナの話をされるのが好きだ。 日本にいる時は思い出の中で一人でいるのはつらかったが、誰かと共有しこうして懐かしむのは心が温かくなる。 纏う雰囲気さえも朗らかになって、玲喜の表情を柔らかくさせた。 その日を境にして夜食を摂るメンバーが決まった
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-31
Baca selengkapnya

双子の兄弟皇子

「魔力量が多いな。もう少し落とせ。それでは照明器具が壊れてしまうぞ」「う……案外難しいんだなこれ」 調整してみたものの、今度は落とし過ぎて指先から魔力が消えてしまう。「意識し過ぎているのかも知れん。回復魔法をかける時のように、もっと肩の力を抜いてみろ。それから灯りが点る様子を実際に想像してみてはどうだ?」 一度深呼吸する。頭の中で灯りが点くようにイメージしてから魔力量を調整した。それに呼応し、間接照明に灯りが点る。「嘘だろ。出来た!」「呑み込みが早いな。次は十回中何回出来るかやってみろ。その前に一度消せ。点けて消す。この一連の流れを一セットにしての十回だ」「分かった!」 幾度か練習して、その日は二人揃ってベッドに転がった。 いつもは夜遅くまでゼリゼが政務で居なくて、先に玲喜の方が眠りについていた。日本では逆パターンだったのを思い出す。「そういえばさ、二人同時に寝るのって何気に初めてだな。日本にいる時は初めだけは別々の布団だったし。まあ、途中からはゼリゼがオレの布団に入って来てたけど」「そうだな。玲喜の側は居心地良い」 電気を消されて目を瞑る。「なあ、ゼリゼ……」 大分間を置いて話しかけた時には、ゼリゼから寝息が聞こえてきた。 いつも遅くまで仕事をしているのだ。疲れていない筈がない。起こさないようにゼリゼの胸元に軽く手を乗せて玲喜は小さな声で音を紡いだ。「νΰβΰιΰνάοΰ」 これが回復呪文だと知れたのは大きい。ゼリゼが疲れている時に役立つから。「玲……喜?」「あ、悪い。起こしちゃったか? そのまま寝てていいよ。いつもお疲れ様」 フッと表情を崩してゼリゼが小さく笑んだ。そんな顔は初めて見たので、玲喜は不意打ちを喰らった気分だった。 一気に顔に熱が篭り、茹っていく。「お前のそういう所も好きだ」 腕を伸ばされ、頬を撫でられた。 ——顔が良いってズルい。 何をやっても様になる。熱のこもった視線から逃れるように、ソッと目を伏せた。「オレも……頑張って仕事をこなしているゼリゼも、好きだよ」 ゼリゼはまた眠りについている。聞こえていたのかも怪しいが、気持ちを言葉にすると気恥ずかしくて玲喜は暫くの間、ベッドの上に座ったままでいた。 ——心臓の音がうるさい。 自分で思っているよりもずっと深くゼリゼに惹かれているのかもしれな
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-31
Baca selengkapnya
Sebelumnya
1234
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status