「ありがとう。ママはもう全然悲しくなんかないよ」景凪は真剣な表情でそう言う。神様に感謝している。こんなにも可愛い二人の子どもを授けてくれたことに、たとえ清音が今はまだ自分を好きになってくれなくても、少なくとも辰希がいる。それがどれだけ自分の慰めになっていることか。ダイニングへ行くと、すでに典子が主席に座っていた。眉間にしわを寄せ、どうやら誰かのせいでご機嫌斜めの様子だ。「ひいおばあちゃん」辰希が素直に声をかける。「おお、なんていい子なんだい、辰希」典子は、辰希の顔を見るや否や、険しい顔が一気に笑顔に変わった。「おばあさん」景凪も丁寧に挨拶する。典子はさらに嬉しそうな表情を見せた。「さあ、辰希も清音も、こっちに座って。景凪も早くおいで」典子は景凪に手招きし、続けて深雲の方をきつく睨む。「深雲、何をぼーっと座ってるの?景凪の椅子を引いてあげなさい」深雲は立ち上がり、景凪のために隣の椅子を引く。典子はようやく満足げにうなずく。その様子を斜め向かいから見ていた伊雲は、内心、景凪はまた典子の前で猫を被って……と舌打ちしたくなる。しかしそれを口に出せるはずもない。典子は歳を重ねても耳も目も確かで、しかも会社の株やこの屋敷まで全てを握っている。何より、孫嫁の景凪のことを実の孫娘である自分以上に可愛がっているのだ。もしこの場で景凪に突っかかろうものなら、本当にこの家から追い出されかねない。「深雲、景凪におスープをよそってあげなさい」典子がそう言うと、深雲はためらわず従う。景凪が手を伸ばすと、お椀が小さいせいでどうしても深雲の手に触れてしまう。深雲はちらりと景凪を見て、静かに言う。「熱いよ。俺が持つから」「……」景凪はそっと手を引き、深雲がお椀を自分の前に置いてくれるのに任せる。典子はそれを見て、とても満足そうだった。「景凪、体調が整ったら、深雲ともう一人、可愛いひ孫を産んでおくれ。男の子でも女の子でもいい。子どもは多いほど福があるんだし、うちには余裕もあるんだから」この話題には、景凪もどう答えていいかわからず、苦笑いを浮かべて素直にスープを口に運ぶしかなかった。典子は、それを照れていると思ったのか、テーブルの下で深雲の足を小突く。深雲は困ったように言う。「おばあさん、そういうことは自
Read more