子どもを持たないと決めていた五年間。それがある日、夫の桐島 時臣(きりしま ときおみ)が突然、双子の赤ちゃんを養子に迎え入れた。それだけではない。彼は葉山 綾乃(はやま あやの)に、その双子を「実の子ども」として育ててほしいと言い出し、将来、自分の莫大な遺産をすべて彼らに継がせるつもりだというのだ。もしかして、時臣は気持ちを変えて子どもを望むようになったのかもしれない。そう思った綾乃は、避妊リングを外し、妊娠の準備をするため病院を訪れた。ところが、医師から告げられたのは――あまりにも衝撃的な事実だった。綾乃の子宮は、五年前にすでに摘出されていたのである。……「生まれつき子宮がない女性もいますが、綾乃さん、あなたはそのケースではありません。あなたの子宮は手術で切除されたのです」綾乃は完全に呆然とした。五年前、彼女が受けた手術は、たった一度きりだった。それは避妊リングを装着するための手術で、夫の時臣が付き添ってくれたときのことだった。それも、全身麻酔は不要のはずだったのに、時臣が痛がらせたくないと言って、病院に強く頼んで最高額の全身麻酔を受けさせた――まさか。あの時に、子宮を……いや、そんなはずない。時臣は手術中、ずっと手術室の外にいた。病院側だって勝手なことをするはずがない。混乱と不安に押しつぶされそうになっていたその時、遠くから聞こえてきたのは、義姉・桐島 瑶奈(きりしま ような)の怒りに満ちた声だった。「時臣、あんた本当に最低よ。あの私生児たちを家に連れて帰っただけでも酷いのに、今度は望月 美月(もちづき みづき)まで家に入れる気? 綾乃の目の前で不倫でもするつもりなの?」「姉さん、誤解だ。俺と美月はそんな関係じゃない。彼女は……命の恩人なんだ。ただ、それに報いたいだけだ」時臣は顔をしかめて反論した。「はあ!恩返しって言って、美月に男女の双子を産ませたのか?時臣、男ってのはやることにはちゃんと限度を持つものよ」「それは俺の望みじゃなかったんだ」と時臣は怒りを込めて言った。「彼女の父親が重病になった時、死ぬ間際の唯一の願いが、娘が結婚して子どもを持つ姿を見たいってことだった」「それを叶えたんだよ。彼女の恩に報いるため、俺は彼女に子どもを与えた。仕方なかったんだ」「また恩返し?じゃあ、綾乃に内緒で美月
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