郁梨の記憶では、お母さんは世間と距離を置く人だった。生徒のことだけを思い、ニュースにもほとんど目を向けず、ましてSNSなど使わなかった。それなのに、どうしてお母さんの携帯にSNSのアプリが入っているの?好奇心に駆られ、郁梨はアプリを開いた。検索履歴と閲覧履歴を見た瞬間、郁梨の体はぐらりと揺れ、倒れそうになった。彼女は歯を食いしばり、必死に意識をつなぎとめた。一つひとつ開いて読み進める。下へ行くほど、彼女は崩れ落ちそうになった。如実が見ていたニュースは、どれも承平と清香のこと。そして郁梨自身についてのものもいくつか。コメントはどれもひどく、彼女を「不倫女」「他人の関係を壊した女」となじる声や、さらに耳をふさぎたくなる中傷が並んでいた。この種のニュースは当時処理されていたが、取りこぼしは避けられない。自分から探さなければ目にしないが――一度検索すれば、ネットには残っている。郁梨は震えが止まらず、視界もかすんでいった。「病に苦しむお母さんが、これを目にしたとき、どれほど悲しくて、どれほど無力で、どれほど自分を責めたんだろう……」郁梨には、想像もつかなかった。とうとう偽りは露見し、お母さんはすべてを知ってしまった。自分が作って見せた「幸せ」も、取り繕った笑顔も、一瞬で鋭い刃に変わった。お母さんは、娘が自分の前で承平と仲の良い夫婦を演じていたのだと思い込み、きっと自分のこの体を責め、娘を背負わせていると悔いたに違いない。その重さに耐えきれず、倒れてしまった――もう娘の足手まといにはなりたくない、と。「違う、お母さん、違うの!迷惑なんて……迷惑なんてかけてない!生きていてほしかった。せめて、もう少し。できるなら、ずっと」如実の携帯を抱き締めたまま、郁梨の脚から力が抜け、床に崩れ落ちた。こらえきれない嗚咽があふれ、行き場のない思いが、胸を引き裂くような叫びになってほとばしった。そうだったのね――すべて、こういうことだったのね。なぜ如実が突然倒れ、あの日、二度と目を開かなかったのか。郁梨はようやく、わかった。こんなに大声で泣いたのは初めてだ。ドアの外で見守っていた承平にも、その泣き声は届き、階下の栄徳たちの耳にもはっきりと響いた。栄徳と蓮子は足早に階段を駆け上がり、祖母もその後に続いた。「郁梨、大丈
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