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第377話

Author: 知念夕顔
郁梨の母が亡くなったのは、彼女と承平の結婚三周年の当日だった。あの日、郁梨がたった一人で病院へ駆けつけ、足元には血がこびりついていた――その光景が伝わるや、各メディアはただ事ではないと嗅ぎつけた。

ほとんどのメディアがあの夜の足取りを追い、承平の車が清香の住むマンションに向かったことを突き止めた。

実のところ、その時に承平が運転していたのは郁梨の車だった。のちに隆浩が合流し、メディアにおなじみの黒いファントムを運転していたのだ。

このニュースが流れると、清香は再び炎上してトレンド入りした。

【前は中泉清香って度胸あると思ってた。受賞したばかりで海外留学まで行ってさ。でも今回は本当に無理。社長が既婚なの知ってて何度も近づくなんて。しかもあの日が結婚記念日って知らないわけないでしょ】

【中泉清香は偽善者だし、折原社長も最低。長谷川郁梨が不憫すぎる!】

【長谷川郁梨は離婚した方がいい。金持ちにロクなのいないって。うちらの「推し」の方が絶対合うよ、早く一緒になって!】

【長谷川郁梨が可哀想すぎて、胸が痛い】

【長谷川郁梨を推すことにした。中泉清香はもう無理】

【中泉清香を5年推してたけど、今日で降る】

【折原グループが声明出した。中泉清香はメンタルに問題があるって!】

この指摘を機に、ネットの関心は一斉に折原グループの最新発表へ移った。声明はこうだ――当夜、社長は夫人の郁梨と結婚三周年を祝っていた。そこへ清香が精神的に不安定になり自傷の恐れがあると知り、「友人として」急いで駆けつけた。しかし運命の悪戯で、その後取り返しのつかない出来事が起きてしまった、と。

これでネットの非難は、さらに清香へと集中した。

大多数のユーザーは「中泉清香に本当に精神の病がある」とは信じず、話を大げさにしているだけだと受け止めた。中には「長谷川郁梨の母の死も、中泉清香が関係しているのでは」と疑う声まで上がった。

ニュースは一晩で拡散し、大炎上に。清香はやむなく、自身にうつ傾向があることを公表した。

明日香は清香が窮地に立たされたのを見て溜飲が下がり、朝いちで郁梨に連絡して一部始終を伝えた。

「清香、今回はそう簡単に逃げられませんわ。心理治療の記録まで出したけど、ネットは全然納得しません。あなたと折原社長の結婚を壊そうとしたとか、ひどいのはお母さんの死の元凶かもなんて
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