郁梨が清香のファンに暴力的に取り囲まれた件は、ネット上で大騒ぎになっていた。清香には全く節操がなく、最初から最後まで折原グループのトップとの関係も説明せず、ファンに誤解を与えて他人を傷つけたという声もあった。また、郁梨は自業自得で、不倫しながら聖人ぶり、人を訴えるふりをして注目を集めようとしただけだという意見もあった。意見が分かれる中、ネットユーザーたちは郁梨と清香をメンションしまくり、二人が何かコメントすることを期待していた。郁梨は素直で、明日香からネットのことは気にしないように言われたので、SNSのアカウントからログアウトし、つまらない騒ぎに耳を貸さなかった。一方、明日香は李人に電話をかけていた。「青山さん、長谷川郁梨さんのマネージャーを務めております、白井明日香と申します。ご相談したいことがありまして、今少しお時間よろしいでしょうか」李人は普段見知らぬ電話には出ない。李人に連絡を取るには、まず李人のオフィスを通し、さらに李人のアシスタントを通す必要があった。承平から事前に連絡が入っていなければ、明日香の電話も無駄に終わっていただろう。「ああ、白井さんですね、ご用件は何でしょうか」明日香は単刀直入に切り出した。「郁梨さんの件で、SNS上でのやりとりについて青山さんにご協力頂きたいと考えております」李人は興味深そうに笑った。「白井さん、私に委託した本当の依頼主が誰かご存じないのですか?」「夫婦なのに、今さら区別する必要があるのでしょうか?」この言葉に李人は笑い出した。「白井さんは大胆ですね」「ありがとうございます」明日香は褒め言葉として受け取った。李人はしばらく考えてから首を縦に振った。「わかりました、協力しましょう。ただし、結果についてはあなたが責任を負ってください」「ご心配なく。ご依頼する前に、起こりうるすべての結果についてはもう想定してありますので、あとどうするかは私に任せてください」「白井さんは本当に肝が据わっていますね」李人は承平を思い深くため息をついた。郁梨はすごいマネージャーを見つけたものだ。3年間大人しくしていた郁梨が突然芸能界に復帰するのは、果たして吉と出るか凶と出るか?——郁梨自身は特に何も声明を出さなかったが、郁梨の所属事務所は声明を出した。ネットユーザーは疑
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