All Chapters of 離婚したら元旦那がストーカー化しました: Chapter 81 - Chapter 90

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第81話

郁梨が清香のファンに暴力的に取り囲まれた件は、ネット上で大騒ぎになっていた。清香には全く節操がなく、最初から最後まで折原グループのトップとの関係も説明せず、ファンに誤解を与えて他人を傷つけたという声もあった。また、郁梨は自業自得で、不倫しながら聖人ぶり、人を訴えるふりをして注目を集めようとしただけだという意見もあった。意見が分かれる中、ネットユーザーたちは郁梨と清香をメンションしまくり、二人が何かコメントすることを期待していた。郁梨は素直で、明日香からネットのことは気にしないように言われたので、SNSのアカウントからログアウトし、つまらない騒ぎに耳を貸さなかった。一方、明日香は李人に電話をかけていた。「青山さん、長谷川郁梨さんのマネージャーを務めております、白井明日香と申します。ご相談したいことがありまして、今少しお時間よろしいでしょうか」李人は普段見知らぬ電話には出ない。李人に連絡を取るには、まず李人のオフィスを通し、さらに李人のアシスタントを通す必要があった。承平から事前に連絡が入っていなければ、明日香の電話も無駄に終わっていただろう。「ああ、白井さんですね、ご用件は何でしょうか」明日香は単刀直入に切り出した。「郁梨さんの件で、SNS上でのやりとりについて青山さんにご協力頂きたいと考えております」李人は興味深そうに笑った。「白井さん、私に委託した本当の依頼主が誰かご存じないのですか?」「夫婦なのに、今さら区別する必要があるのでしょうか?」この言葉に李人は笑い出した。「白井さんは大胆ですね」「ありがとうございます」明日香は褒め言葉として受け取った。李人はしばらく考えてから首を縦に振った。「わかりました、協力しましょう。ただし、結果についてはあなたが責任を負ってください」「ご心配なく。ご依頼する前に、起こりうるすべての結果についてはもう想定してありますので、あとどうするかは私に任せてください」「白井さんは本当に肝が据わっていますね」李人は承平を思い深くため息をついた。郁梨はすごいマネージャーを見つけたものだ。3年間大人しくしていた郁梨が突然芸能界に復帰するのは、果たして吉と出るか凶と出るか?——郁梨自身は特に何も声明を出さなかったが、郁梨の所属事務所は声明を出した。ネットユーザーは疑
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第82話

【急に中泉清香が腹黒いことに気付いた!】——当の本人である清香はネットの書き込みを見て、手当たり次第に物を投げつけて怒りを爆発させた。リビングはめちゃくちゃな状態だった。俊明は足の踏み場もなく、少し離れた所から機嫌を伺うように提案した。「清香さん、折原社長に電話してみたらどうですか?」「いやよ!」清香は発散した後、少しずつ冷静を取り戻していた。「今電話したら不自然すぎるわ。謝罪声明を出すだけで充分よ」「そうですね。ついでに折原社長との関係についてもこの際はっきりしましょう。折原社長はまだ離婚していないので、清香さん、あともう少しの辛抱です」清香は深く息を吸い込み、沸き上がる怒りを抑えた。「俊明、白井明日香が最近リアリティショーに出る話があるって聞いたけど?」ネットユーザーたちとは違い、清香は郁梨の事務所が設立された日に既に明日香に注目していた。俊明は頷いた。「はい、芸能人が出演する推理系の番組で、最近かなり人気を博しているようです。その中でも、白井さんはレギュラー出演されている東葉平(あずま ようへい)と親しいらしいです」清香は口元を緩めて笑った。「つまり郁梨も出る可能性が高いってことね!」「その通りです」「俊明、私にも出演させて」「清香さんも出るんですか?清香、もし長谷川さんと同じ画面に映ったら、面白いことになりますね!」「面白さを追求するのが番組スタッフの仕事でしょ?私も番組効果を考えてるの。俊明、私が出演することは番組スタッフ内の秘密にしておいて。郁梨にサプライズを仕掛けたいの」俊明はすぐに意図を理解し、いたずらっぽく笑った。「今すぐ手配しますね。長谷川さんより先に制作チームに根回ししておいた方が面白いに決まってます」——ネット上ではみんな清香の反応を待ち構えていたが、清香はその期待を裏切らず、郁梨が所属する事務所の声明発表後にすぐに自身のSNSを更新した。それは謝罪声明だった。長文の中で清香は、自身が公の立場にある人間でありながら、模範となる行動ができず、ファンを前向きに導き、正しい人生観を示すことができなかったことを申し訳なく思っているとあった。同時に、承平とは友人関係に過ぎないと釈明した。この点は折原グループの主張と一致している。つまり、清香と承平が恋人関係でなくても、友
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第83話

郁梨は思いもよらなかったが、郁梨と明日香が一緒に仕事をしてからまだ数日も経っていないのに、明日香は郁梨のために仕事を取ってきた。「前からコンタクトを取っていましたが、『真犯人は誰だ』は最近とても人気で、私はレギュラーメンバーの東君とも仲が良くて、彼に聞いてみたんだ。今日やっと決まったよ」郁梨はスマホを見ながら、目を細めて笑った。「さすが白井さんです。最近こんなに忙しいのに、私のために仕事を取ってくれるなんて」明日香も自分の手柄を自慢しなかった。「あなたのマネージャーとして、仕事を取ってくることは当たり前です。でも確かに最近忙しいので、あなたのアシスタントを探す暇がなかったの。番組には一人で行けますか?」「住所さえあれば一人で行けますので大丈夫です」「わかりました、後で住所と番組スタッフの連絡先を送ります。そちらにも連絡しておくので、明後日の撮影に直接行けば大丈夫です」「はい、わかりました」明日香は少し考えて、付け加えた。「東君があなたの面倒を見てくれるって約束してくれました。リアリティショーの撮影では、自分の言動に気をつけてくださいね。視聴者はサバサバした女性タレントが好きだけど、場をわきまえない発言はダメですよ。そこの加減をうまくやってくださいね」「わかりました、白井さん。安心してください」「安心はもちろんしていますが、ただ……」明日香は舌打ちをした。「聞いたところによると、今回もう一人のゲストがいるらしいのですが、制作チームは口が固くて、どうしても聞き出せなかったのです。もしかしたらお偉いさんかもしれないから、気をつけてくださいね」「はい、気をつけます」明日香はさらに郁梨に他のレギュラーメンバーのことについて話し、ようやく電話を切った。——『真犯人は誰だ』の撮影場所は南城市内で、一泊二日の撮影スケジュールだ。郁梨が遠出するなら、当然承平に知らせる必要があった。二人は同じ屋根の下で生活しているのだから。「南城市に行くのか?」食卓で、承平は郁梨が二日間いなくなるのを聞くと、途端に食事が喉を通らなくなった。「うん、白井さんから仕事の連絡があって、リアリティショーにゲスト出演することになったの。ワンシーズンだけの出演よ」「いつ行くんだ?」「明日かな。明後日が撮影だから、前泊するの」承平は眉を
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第84話

「この前、郁梨が殴られたそうだな?」明らかに清香が帰国してから、栄徳は芸能界の動向をよくチェックしていたようだ。承平の祖母は驚いた。「郁ちゃんが殴られた?どういうこと?大丈夫なの?」承平はお箸を置いた。「大したことない。李人に処理させた。相手はすでに相応の罰を受けた」栄徳は不機嫌そうに言った。「ふん、聞くところによると、郁梨を殴った奴は清香のファンだそうだな」蓮子は承平の方を向いた。「あんた、まだ清香と付き合っているの?」「お母さん、それはファンの行為であって、清香が指示したわけじゃない。この件はもう終わったことで、郁梨も何も言ってないし」これはつまり、彼らがとやかく言うことではないということだ。栄徳はお箸をバンと置いた。「郁梨が何も言わないからといって、郁梨が傷ついていないわけではない。お前は郁梨の夫だ。しっかり守るべきだ」この言葉は承平にも響いた。「分かったよお父さん。気をつけるから」「うん」承平の良い態度を見て、栄徳の口調もだいぶ和らいだ。「郁梨が今回南城市で仕事するのに、お前はボディーガードを付けさせたか?」承平はギョッとした。「それについては……」栄徳は不満そうに承平を見た。「付けていない?郁梨は我が折原家の一員で、折原グループの社長夫人だ。お前たちが世間に公表していないとはいえ、万が一誰かが郁梨の身分を知って、誘拐しようとしたらどうするんだ?」承平の祖母はそれを聞いて、居ても立っても居られ亡くなった。「郁ちゃんは一人で行ったの?郁ちゃんはタレントになるんじゃなかったの?タレントってみんな大勢のボディーガードに囲まれているものだと思ってたわ」蓮子は承平の祖母をなだめた。「お母さん、心配しないでください。郁ちゃんにはきっとアシスタントがついているはずです」承平は唇を噛んだ。承平は郁梨にマネージャーがいることしか知らず、白井という人物がアシスタントを手配したかどうかもよくわかっていなかった。蓮子は承平の祖母をなだめた後、承平に言った。「あんた、後で郁ちゃんに電話しなさい。郁ちゃんが一人で出かけているんだから、夫として無関心でいるわけにはいかないでしょう」承平はうなずいた。「わかった、後でかける」「今夜も帰るのか?」栄徳は承平に念押しした。「お前、もう長い間実家に泊まってないだろ」前回は
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第85話

承平は自分の失態に気づき、戸惑いと気まずさでいっぱいになった。二人はどう話を続ければいいかわからず、二言三言交わしただけで電話を切った。環境を変えても承平は相変わらず眠れなかった。20年以上使い慣れたベッドでさえ、承平の寝付けれない癖を治すことはできなかった。承平は寝返りを打っても眠れず、郁梨が一人で南城市にいることを考えると、ますます目が冴えてしまった。どうして郁梨はあんなに美しい人に生まれたんだ?承平は郁梨の美貌が災いするのではないかと心配でたまらなかった。結局眠れない承平は、隆浩に電話をかけた。隆浩は電話に出る前に時計を見た。時計は午前2時20分を指していた。あっぱれだ!「折原社長、こんな夜遅くに何かご用でしょうか?」隆浩は笑顔で、特に「こんな夜遅くに」という言葉を強調した。しかし承平は隆浩の不満など全く気にせず、淡々と聞いた。「会社の事業群で南城市に何か進行中のプロジェクトはあるか?」南城市?社長夫人が南城市で働いているじゃないか。折原社長は千里の道でも妻を追いかけるつもりか?隆浩は急に目が覚めた。「ありますとも!ちょっと確認しますね!」たとえなくても、現地視察が必要なプロジェクトを無理くりでも作り出してやる!承平は軽くうなずき、隆浩の返事を辛抱強く待った。「昨年始めた分譲マンションのプロジェクトですが、現在まだ建設中です」隆浩は提案した。「折原社長、明日建設状況の確認に行きませんか?」承平は淡々と言った。「手配しておけ」隆浩は布団の中で背筋を伸ばした。「承知しました!」——南城国際空港にて。「折原社長、『真犯人は誰だ』の番組スタッフに確認しましたが、今日は遅くまで撮影があり、少なくとも22時以降にならないと終わらないそうです」「そんなに遅くまでか?」「番組スタッフによると、撮影時間は進捗次第で変わるそうです」承平はやや不機嫌そうに聞いた。「車の手配は済んだか?」「すべて手配済みです」承平は軽く頷き、それ以上は何も言わなかった。承平は郁梨に南城市に来たことを伝えていなかった。郁梨の仕事が終わるのを待ち、自分で迎えに行ってサプライズをしようと考えていた。——『真犯人は誰だ』は、芸能人が参加する推理系リアリティショーで、スリル満点のミステリアスな雰囲気が特徴的
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第86話

「わあ、郁梨さん、お肌がすごくきれいね!どうやってケアしてるの?」愛麗は郁梨を見るなり、思わずじっと見つめてしまった。まだそんなに親しくない間柄でなければ、もう手を伸ばしてつねっていたかもしれない。胡陽は笑いながらからかった。「年が若いからさ、羨ましがっても仕方ないよ」この言葉に、みんなは一斉に笑い出した。陶馬がすかさずフォローに入った。「愛麗、こいつを叱ってやれ!誰だって若い頃はあったんだからさ!」「そうよ、私も……あれ?陶馬さん、それだとちょっと変じゃない?まるで今の私は若くないみたいじゃない?これって私を助けてるの?それともけなしてるの?言っておくけど、後でキャンディ2本ちょうだいね、じゃないと許さないからね!」愛麗は典型的なバラエティタレントで、ユーモアがあり表情も豊かで、場の雰囲気を一言二言だけで盛り上げるのが上手だった。メイク中、愛麗は郁梨の隣に座り、時々郁梨の顔をじっと見ては感心していたので、郁梨は思わず笑ってしまった。「本多さん、触られてみますか?」愛麗の目が輝いた。「触っていいの?」「どうぞ、触ってください」郁梨は進んで小さな顔を差し出し、愛麗も遠慮せずに、両手でつねったり揉んだりした。「わあ、なんて触り心地がいいの!私はあなたくらいの年頃の時はこんなに肌がきれいじゃなかったわ。これは生まれつきの美しさね」愛麗は惜しみなく賛辞を贈った。愛麗は郁梨が今まで接してきた女性芸能人とは違って、全く偉ぶったところがなく、自然体だった。芸能界で長く過ごしてきて、こんな清らかで純粋な人に出会えるのは珍しく、郁梨はとても嬉しかった。その後も郁梨はレギュラーメンバーと打ち解け、みんなで雑談を楽しんでいた。愛麗がふと口にした。「今日はもう一人、秘密のゲストが来るらしいけど、誰だか知らないわ」郁梨は驚いた。「皆さんご存知ないんですか?」葉平たちは郁梨の方を見て、首を横に振った。郁梨は自分だけが知らないと思っていた!このゲスト、本当に謎に包まれているわ!「この秘密のゲスト、いったい何者なんだろう?こんなに隠されてると、逆に不安になっちゃうわ」不安になっちゃう?郁梨は理解できなかった、何に不安になるんだろう?葉平は笑いながら愛麗をなだめた。「心配しないで、みんな仕事で来てるんだから、きっと協
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第87話

清香は3年前にアカデミー主演女優賞を受賞後、海外留学し、3年間芸能界から姿を消していたが、今や堂々と帰国し、評価は高まる一方だった!『真犯人は誰だ』の番組チームはなんと清香をキャスティングすることができた。今回の視聴率は間違いなく過去最高を更新する!スタッフに案内されて入ってきたのは、まさに清香だった!清香は整った顔立ちに美しい巻き髪をなびかせ、艶やかで魅力的だった。「お待たせして申し訳ありませんでした」清香は耳元の髪をかき上げ、申し訳なさそうに皆に笑いかけた。アカデミー賞女優の清香だが、偉ぶった様子はなく、ただしこれはカメラの前での姿にすぎず、本当の姿は撮影が始まってから明らかになるだろう。今日のサプライズゲストが清香だなんて、誰も予想していなかった!郁梨は驚きながらも一抹の不安を覚えた。清香が自分が番組に参加するのを知って来たのか、それとも自分は考えすぎなのか、確信が持てなかった。どちらにせよ、同じ番組で顔を合わせるのは実に気まずい状況だ。最近の郁梨と清香のスキャンダルはネットで大騒ぎになっており、業界で知らない者はいない。今の状況はまさに修羅場と言える。一気に気まずい空気が流れた。おそらくこれこそが番組スタッフの狙った効果なのだろう!——「皆さん、ご自身の役柄カードを引いてください!」メンバーが全員揃い、撮影も正式に始まった。番組はゲストがそれぞれ役柄カードを引くところから始まる。各ゲストは封筒を受け取り、中には今回の事件で演じる役柄や人物情報、事件のアリバイなどが記されている。郁梨が引いたのは容疑者の役柄で、30分かけてストーリー全体を把握する時間が与えられた。ストーリーはこうだ。映画「ジャガイモ君よ、俺はサツマイモだ!」の撮影開始日当日、監督がまさかの無断で欠席。スタッフが監督の仮住まいを訪ねると、監督すでに死亡していた。容疑者は以下の通りだ。安西圭一(あんざい けいいち)。かつてのスター俳優で、監督の圧力に屈し、「ジャガイモ君よ、俺はサツマイモだ!」に無報酬で出演させられ、監督に恨みを抱いている。白戸蓮実(しらと れみ)。人気女優で、映画では主演を務めるが、監督とは何か秘密を共有しているようだ。松本星也(まつもと せいや)。時代を代表するスターであり、映画では主演を務める。監
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第88話

——グランドベイ・レジデンスの工事責任者は恐る恐る承平を建築現場へ案内した。工事責任者は本当に理解できなかった。この時代にプロジェクト開始からほぼ1年も経ってから、わざわざ進捗状況を見に来る出資者なんているか?もしかして折原社長は手抜き工事をしているとでも疑っているのか?全くの冤罪だ!絶対にそんなことはしていない!折原社長に信じてもらえないなんて、本当に悲しいし、何より悔しい!しかし、折原社長はあちこちを見回るだけで、建築資材の調査やプロジェクトの収支項目を見るようなことはなかった。では一体何しに来たんだ?どうせダメだしするんだったら早く言ってくれないか?こんなの心臓に悪いよ!承平は現場を一通り見回り、午後は工事責任者のオフィスで時間を潰し、ようやく一日が終わった。グランドベイ・レジデンスの工事責任者は夕食の時間になったのを見て、勇気を出して試しに聞いてみた。「折原社長、せっかくですから、夕食をご一緒にいかがですか?」こう言いながら心の中で思った、本当に何か調べたいことがあるなら、もうそろそろ言う頃だ。「そうだな、じゃあご馳走になるわ」工事責任者は呆然とした。折原社長と一緒に夕食だって?工事責任者の本音はこうだ。折原社長、もう遅い時間ですよ。必要な資料があれば早く言ってください。確認が終われば私は退勤して家に帰って妻子と過ごせる、だった!工事責任者は泣きたい気持ちでいっぱいになり、社長のアシスタントに向かって視線で訴えようとしたが、相手は全く目を合わせようとせず、むしろ視線が合った瞬間にそらされた。彼らは一体何を考えているんだ?工事責任者は何も悪いことをしていないのに!不安な気持ちを抱えながら、工事責任者は承平と隆浩を食事に招待した。食事中は異様に静かで、誰も一言も発しなかった。この不気味な雰囲気に、工事責任者はその場で死にたくなるぐらいビビっていた!ようやく食事が終わり、承平は工事責任者が一日付き合ってくれたことに気を遣ったのか、励ましの言葉をかけた。「今日はありがとうな。よくやってくれてるよ。この調子で引き続き頑張ってくれ」承平を迎える車はすでにレストランの前に停まっており、そう言うと承平は車に乗り込み、工事責任者だけがその場にポツンと取り残され、頭の中はハテナでいっぱい
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第89話

ホテルの構造は複雑で、番組メンバーは前回の捜査でここに秘密トンネルがあると推測していたが、通路の入り口はまだ見つかっていない。清香と郁梨はペアを組み、二人は事件現場に到着し、すぐに二度目の捜査を開始した。彼女たちはそれぞれ別々に探し、ほとんど会話を交わさなかった。郁梨は手がかりを探しながら、頭の中で事件全体を整理していた。安西は売れない俳優で、ここ数年仕事がなく、生計を立てるのもやっとだった。ようやく『ジャガイモ君よ、俺はサツマイモだ!』で重要な役を得たが、監督から無報酬で出演するよう脅されていた。これが安西の殺人の動機だ。安西のアリバイによると、昨夜監督の部屋に行ったこと、そして実際に殺してやりたいと思ったことを認めているが、部屋に到着した時には監督は既に死んでいたという。白戸は映画のヒロインだが、監督からセクハラを受け、私的な写真を保有していることを脅しに、長期的な愛人関係を強要されていた。これが白戸の殺人の動機で、昨夜白戸も監督の部屋を訪れたが、同様に部屋に着いた頃には監督は既に死んでいたと主張している。松本は今回の出演陣の中でも一番俳優歴が長く、本来なら『ジャガイモ君よ、俺はサツマイモだ!』のような作品に出演するようなスターではないが、自ら志願して出演したため、監督はより多くの投資を得ることができた。捜査の結果、松本は監督を殺すために来たことが判明した。松本は監督の私生児で、監督が松本の母親を騙したせいで、母親は一生苦しむ人生へと追い込み、最終的に自殺に至らせた。母親の復讐のために松本は来たのだ。前回の投票では、多くの番組出演者が松本に票を投じ、松本が最も犯人である可能性が高いと考えていた!得票数第2位は大友プロデューサーだった。大友プロデューサーと監督の間には、10億円もの金銭トラブルがあり、監督を殺せば大友プロデューサーがその全額を独り占めできるため、大友プロデューサーは監督を殺したいと強く思っていた。誰もが殺人動機を持っており、郁梨が演じる藤崎カメラマンも例外ではなかった。藤崎カメラマンの重要な手がかりは、松本とほぼ同じで、藤崎カメラマンも監督の私生児であり、自身の母親も自殺しており、母親の復讐のために来たのだ。藤崎カメラマンのビデオカメラには多くの秘密が収められており、彼女が密かに撮影した映
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第90話

秘密トンネルの入り口の高さは少し低く、人の背丈の半分ほどしかないが、一旦中に入ってしまえば立ち上がれる。通路の幅は狭く、二人が並んで歩くことはできない。「郁梨さん、こんなところで会えるなんて思ってもいませんでした。驚きましたか?」突然、清香は郁梨と世間話を始めた。「確かに驚きはしましたけど、それほどでもなかったです」郁梨は不思議に思った。番組は放送前に編集されるし、流すべきではない映像は使わないはずだ。でも万が一のことがあったら?清香はどうして突然こんな話をし出したんだ?「郁梨さん、実はわざとなんです。あなたが来るのを知ってて、私も来ました」この言葉を聞いて、郁梨の心の中のサイレンが鳴り響いた!実は郁梨は思っていた。清香が『真犯人は誰だ』の番組に出演するのは決して偶然ではないことを。だからといってこんなに露骨に言ってもいいことではないのだ!郁梨と清香はどこへ行ってもカメラがついて回る。こんなことを言えば、弱みを握られるのではないか?それに、清香がこんなことをする意味は?まさかカメラの前で郁梨を陥れるつもり?もしかして……カメラマンを前もって買収したのか!この可能性を考えた郁梨はハッとなり、足を止めて後ろを振り返った。カメラマンも、ディレクターもいない。いつの間にか、秘密トンネルには郁梨と清香だけが残されていた!清香は郁梨を見て、あからさまに笑った。得意げな笑みで、まるで全て清香の思い通りになっているような態度だった。郁梨も笑った。淡々とした、どうでもいいような笑い方で。「何が可笑しいのよ!」清香は郁梨の笑いが気に入らなかった。そんな笑顔は、まるで自分が郁梨の目にはピエロのように映っていると感じさせた。退屈な生活に笑いを提供するピエロのように。「あんたが可笑しいから笑ってるのよ」郁梨は依然として淡々としており、この状況に慌てる様子もなかった。「私が可笑しい?郁梨さん、私がここで少しでも問題を起こせば、全てあんたの責任になるわ。その時でも笑っていられるの?」「どうして笑えないの?清香さんはまだ自分の立場が分かっていないの?あんたのような不倫女なら、道端で殴ったとしても、誰も私を責められないわよ」「郁梨さん、あんたは口を開けば『不倫女』って言うけど、私と承くんは3年前から付き合っていたのよ
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