馬車に揺られている間、私の髪を撫でながら気遣うスタンリーに寄りかかっていると急に馬車が揺れた。 急停止して浮き上がりそうになった私の体をスタンリーが抑えてくれる。「何事だ?」「公爵閣下、それが、その⋯⋯」 窓を開けて尋ねたスタンリーに馬車に並走していたモリレード公爵家の騎士が何かを言い淀んでいる。 外を見れば、もう屋敷のすぐ側まで来ていた。 門の近くの人影が近づいてくる。 銀髪に水色の瞳をした、スタンリーの浮気相手であったメアリア嬢だ。 騎士たちの静止を振り払い近づいてくる彼女を見て、私はスタンリーに寄りかかるのをやめた。 そのような私を悲しそうな目で見つめてくる彼はずるい。 「公爵様、あの⋯⋯私⋯⋯やっぱり⋯⋯」 涙を浮かべながら、頬を染めているメアリア嬢は女の私から見ても可愛かった。 私は馬車の扉を勢いよく開けて、彼女の前に立った。「何か御用でしょうか。夫の相手を一晩して頂いたお礼は申し上げたはずですが」「ルミエラ様、20歳という生涯残りそうな記念の誕生日の朝にあのような屈辱を受けても離婚されないのですか? もっと、プライドのある方かと思ってました」 彼女は涙を浮かべているが、口角が上がっている。 私を挑発しているつもりのようだが、彼女の作戦が分かってしまった。(記念とか、そのような祝い事は意識したくないような前世を私は過ごした⋯⋯誕生日とか、どうでもいいわ)「私はレイダード王国の貴族令嬢はもっと節度がある方ばかりかと思っていました。娼婦のような商売もなさっているのですね。花代を請求しに来たのかしら?」「な、なんて失礼な方なの? 元メイドの下賤の民の癖に!」 結局、私が血筋で見下され続けるのは避けられない。でも、人の夫に手を出す下品な女に蔑まれる覚えはない。「元メイドですが、今はモリレード公爵夫人です。そして、スタンリーの妻です。私は彼の隣を譲るつもりはありません」 浮気など到底許せないと今でも思っている。 それでも、4年間私の愚行
Terakhir Diperbarui : 2025-07-27 Baca selengkapnya