布団の中は、まだ熱がこもっていた。汗ばんだ肌が重なり合い、互いの体温がゆっくりと馴染んでいく。けれど、誰も動こうとはしなかった。唯史は、佑樹の胸の上に頭を預けたまま、静かに呼吸をしていた。耳の奥に、佑樹の心臓の音が聞こえる。一定のリズムで、どくんどくんと鳴っている。その鼓動を聞いていると、自分の体も自然に同じリズムで呼吸をしていることに気づいた。部屋の中は、夜の静けさに包まれていた。障子の隙間から、月の光が細く差し込んでいる。外では、虫の声がかすかに聞こえた。その音が、やけに遠く感じられるほど、唯史の意識は佑樹に集中していた。「なあ」唯史は、喉の奥で呟いた。声はかすれていた。唇が、まだ少しだけ震えていた。「これからも、ずっと一緒なんやろな」それは、問いかけというよりも、自分に言い聞かせるような言葉だった。佑樹の腕の中で、唯史は目を閉じた。けれど、佑樹はすぐに答えてくれた。「当たり前やん」その声は、低くて、優しかった。胸の奥に染み込むような響きだった。佑樹の腕が、唯史の背中をぎゅっと抱き寄せた。その力が、ほどよく強くて、心地よかった。唯史は、佑樹の胸に顔を埋めた。額が肌に触れる。汗ばんだ感触が、妙に安心感を与えた。佑樹の心臓の音は、まだ続いていた。そのリズムが、自分の鼓動と重なっていく。「これが俺の帰る場所なんや」唯史は、心の中でそう思った。声には出さなかったが、その言葉は胸の奥に確かに響いていた。今まで、自分はどこに帰ればいいのかわからなかった。家族のもとにも、元の生活にも、帰る場所が見つからなかった。けれど、今は違った。佑樹の腕の中が、自分の居場所だった。佑樹の指が、唯史の髪を撫でた。その指先は、やさしくて、どこか頼りがいがあった。唯史は、目を閉じたまま、その手の感触を受け止めた。涙は、もう出なかった。けれど、胸の奥はまだじんわりと熱かった。「唯史」佑樹が、小さな声で名前を呼んだ。その声は、どこまでも柔らかかった。「ん」唯史は、目を閉じたまま応えた。声はかすれていたけれど、不思議と落ち着いていた。「これから
Last Updated : 2025-08-26 Read more