All Chapters of 十五年目の同窓会~ただ、君の隣に帰るために: Chapter 21 - Chapter 30

49 Chapters

嫉妬と混乱

遥が帰った後の家は、やけに静かだった。玄関のドアが閉まる音が、耳に残っている。リビングには、夕方の光が柔らかく差し込んでいた。窓の外では、近所の子供たちが自転車で遊ぶ声がかすかに聞こえる。その日常の音が、妙に遠く感じられた。唯史は、冷蔵庫から缶ビールを取り出した。プルタブを開ける音が、小さく響いた。泡が一瞬だけ盛り上がり、すぐに落ち着く。グラスに注ぐと、氷がカランと音を立てた。その音がやけに大きく聞こえた。「なあ、唯史」佑樹が、隣のソファで足を伸ばして言った。「ん?」「遥、昔からあんなやつやったよな」「……まあな」唯史は、曖昧に返した。視線はグラスの中の氷に向けたままだった。佑樹は、特に気にしている様子はなかった。遥がどれだけ距離を詰めようと、冗談めかして触れてこようと、佑樹は昔と変わらない態度で受け流していた。その自然体の佑樹が、唯史には余計に眩しく見えた。「何が嫌なんやろ」心の中で、また呟いた。遥が佑樹に触れること。笑いかけること。それを見ている自分の胸が、なぜこんなにざわつくのかが分からなかった。嫉妬…なのかもしれない。でも、それがどういう種類の感情なのか、唯史にははっきりしなかった。遥に対しての嫉妬なのか。それとも、佑樹が誰かに取られることへの不安なのか。「……わからん」小さな声で呟いた。その言葉は、誰にも聞こえなかった。グラスを傾けて、ビールを一口飲む。けれど、その冷たさも、胸の奥のざわめきを鎮めることはできなかった。「なあ、唯史」佑樹がまた声をかけた。「なに」「明日、どっか出かけるか?気晴らしに」「……別にええけど」
last updateLast Updated : 2025-08-06
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夜の独り言

唯史は、ビールの缶をキッチンに置き、静かに二階の部屋に上がった。階段を踏むたびに、足元の床が軋む。その音が、夜の静けさに溶けていった。部屋に入ると、窓から微かに外の街灯が見えた。蛍光灯はつけなかった。ただ、薄暗い部屋の中で、ベッドに身体を預けた。仰向けになり、天井を見つめる。天井には、昔の子供部屋時代の名残があった。薄いクロスの模様が、うっすらと浮かんでいる。「俺、なんでこんなに気になるんやろ」心の中で、問いがこぼれた。佑樹と遥が並んでいる姿を思い出す。遥が佑樹に笑いかける。佑樹は、それを自然に受け流す。それだけのことなのに、胸の奥がざわついた。あの時の自分の表情を、鏡で見たらどうなっていたのだろう。笑っていたのか、無表情だったのか。どちらにしても、心の奥では波が立っていた。「誰かと一緒にいることは好きやったはずやのにな」唯史は、天井を見たまま、声を出した。昔から、人と過ごす時間が好きだった。友達と騒ぐのも、部活の帰り道にだべるのも、嫌いじゃなかった。けれど、佑樹と一緒にいると、心が落ち着かなくなる。それが、どうしてなのか分からなかった。「俺、なんかおかしいんかな」ぽつりと漏らした声は、夜の部屋の中で自分だけに返ってきた。誰もいない部屋。天井のシミが、まるで何かを見下ろしているように感じた。胸の奥がぎゅっと縮む。その感覚が、嫌いなわけじゃなかった。けれど、苦しかった。佑樹の顔が浮かぶ。笑った顔。煙草を持つ指先。風呂上がりに濡れた髪でタオルをかけていた後ろ姿。唯史は、目を閉じた。まぶたの裏にも、佑樹の顔が残っている。消そうとしても、消えなかった。「あいつと一緒にいるだけやのに、なんでこんなに苦しくなるんやろ」その問いが、また喉の奥から漏れた。答えは
last updateLast Updated : 2025-08-07
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酔いと愚痴

夜の空気は、湿度を含んで身体にまとわりつくようだった。窓を少しだけ開け、網戸越しに夜風を入れているが、それでも蒸し暑さは抜けなかった。リビングには間接照明だけが灯っている。薄いオレンジ色の光が、ソファとローテーブルを柔らかく照らしていた。テレビは消され、BGMもない。静けさの中で、時折聞こえるのは氷がグラスの中でカランと鳴る音だけだった。唯史は、ローテーブルに置かれた焼酎の水割りを持ち上げた。グラスの表面には、薄い水滴が浮かんでいる。手のひらにじんわりとした冷たさと温かさが同時に伝わってきた。「なんや、よう飲むなあ。もう四杯目やで」佑樹が笑いながら言った。ソファの隣に座る佑樹は、焼酎のペースを守っている。唯史の方は、明らかに酒の量が増えていた。「……しゃあないやろ。飲まなやっとれん」唯史は、グラスを口に運んだ。焼酎の匂いが鼻に抜ける。喉が少し焼ける感覚が、気持ちよかった。「今日も遥、来たな」佑樹がぽつりと言った。「……ああ」唯史は、グラスを置いた。ローテーブルの木目をじっと見つめる。視界の端で、佑樹の足が組み替えられるのが見えた。「なんであんな女に構わなあかんねん」唯史は、思わず吐き出すように言った。声は少し掠れていた。自分でも、なぜそんなに苛立っているのか分からなかった。けれど、心の奥がざわついているのは確かだった。「べつに構わんでええやろ」佑樹は、さらりと言った。声は落ち着いていて、特に動揺もない。その温度に、唯史の胸がまた軋んだ。「お前、ほんまにあんなやつ相手にする気あるんか?」「ないわ」佑樹は笑った。けれど、その笑い方はいつもの柔らかいものだった。口の端だけが少し上がり、目は優しかった。「俺はお
last updateLast Updated : 2025-08-08
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抱擁と接触

焼酎の湯割りが、唯史の体内をじんわりと巡っていた。顔が火照り、視界の端がぼんやりと滲む。けれど、意識は妙にはっきりしていた。酔っているはずなのに、隣にいる佑樹の呼吸や、腕の動き、視線の動きが細かく伝わってくる。それが逆に、胸の奥をざわつかせた。「酔ったんか?」佑樹の声が近くで響いた。低くて柔らかい声。昔から変わらないそのトーンが、今はやけに胸に刺さる。「……別に、酔ってへん」唯史はそう答えたが、声がかすれていた。手元のグラスを持ち上げようとしたが、指先が少し震えているのが分かった。酔いのせいか、何か別のものか、自分でも分からなかった。「ほら、こっち来いよ」佑樹が、唯史の肩を軽く引いた。ソファの隣同士。ただの軽いハグのつもりだったのかもしれない。けれど、その距離は近すぎた。佑樹の腕が、唯史の肩を包む。身体が寄り添う。互いの呼吸が、肌にかかる。佑樹の吐息が、耳元に当たるたびに、唯史の背筋が微かに震えた。「……佑樹」小さな声で名前を呼んだ。けれど、次の瞬間、唇が触れた。思いがけず、互いの顔が近づきすぎていたのだ。ほんの一瞬、柔らかい感触が重なる。それは、冗談でも偶然でも済まされない感覚だった。「……やめろよ」唯史は、唇を離しながら呟いた。けれど、その声には力がなかった。拒否するには遅すぎた。心臓が大きく跳ねているのを、自分でも感じていた。まつ毛がわずかに震えた。唇の端が乾いて、無意識に舌で濡らした。喉の奥が、ぎゅっと詰まるような感覚。体は動かない。逃げることもできなかった。佑樹は一度、腕を緩めた。唯史の顔を見て、少しだけ眉を寄せた。目の奥には、何か探るような色が
last updateLast Updated : 2025-08-09
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ベッドへの移動

唇が重なる時間が、徐々に長くなっていった。最初はただ触れただけだったはずが、気づけば互いの唇がゆっくりと動いていた。佑樹の手が、唯史の背中を撫でる。その指先が、シャツの上からなぞるたびに、皮膚の奥がざわついた。心臓の鼓動が、妙に大きく聞こえる。自分のものか、佑樹のものか、もう分からなかった。「……佑樹」名前を呼ぶ声が、震えていた。けれど、止めるための言葉は出てこなかった。唇が離れた瞬間、互いの呼吸が浅くなっているのがわかった。顔が近すぎて、息がかかる。湿った夜の空気よりも、佑樹の吐息の方が、ずっと熱かった。「ベッド、行くか」佑樹が、低く囁いた。その声は、さっきまでとは違うトーンだった。優しさと、欲望と、長年の想いが入り混じった声音。耳元でその言葉を聞いた瞬間、唯史の胸はぎゅっと縮んだ。「いや……」口ではそう言った。けれど、足は止まらなかった。ソファから立ち上がり、ふらりと体を起こす。足元が少しふらついたのは、酔いのせいか、それとも心の揺れか。佑樹が手を差し出してきた。唯史は、その手を見つめた。ほんの一瞬だけ躊躇したが、結局その手を取った。掌が触れ合う。佑樹の手は大きくて温かかった。指先が少しだけ震えていたのは、唯史自身か、佑樹か、わからなかった。二人で、ゆっくりと階段を上がる。古い家の階段は、ぎしりと小さな音を立てた。その音が、夜の静けさに溶ける。足元だけを見つめて、唯史は無言で階段を登った。佑樹の手が、背中に添えられている。その感触が、妙にリアルで、逃げ場がなかった。「これ、ほんまにしてええんか」心の中で、何度も問いかけた。けれど、答えは出なかった。するべきじゃない。けれど、したくないわけじゃない。その矛
last updateLast Updated : 2025-08-10
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初めての体

ベッドに腰を下ろした瞬間、唯史の胸はぎゅっと縮まった。月明かりだけが、部屋の中をぼんやりと照らしている。夜風が窓から入り、カーテンがかすかに揺れた。その音が、妙に大きく聞こえた。佑樹が、隣に座る唯史の顔を見つめた。その目には、焦りも躊躇もなかった。けれど、決して強引ではなかった。ただ、長い時間をかけて積み重ねた感情が、そこにあった。「唯史」低い声で名前を呼ばれた。胸の奥が、また跳ねた。唇が触れる。今度は、もう逃げなかった。唇から首筋へ。佑樹の唇が、喉元をゆっくりと滑る。その感触が、肌に直接染み込んでいくようだった。「……やめろって」唯史は小さく呟いた。けれど、その声にはもう拒絶の力はなかった。体は素直に反応していた。背中をなぞる佑樹の手に、肩が震える。皮膚の奥まで、熱が伝わってくる。こんな感覚は、今まで知らなかった。女と触れ合ったときとは違う。ただ触れられているだけなのに、心臓が早鐘のように打つ。唇の端が乾き、無意識に舌で濡らす。視界の端が、ぼんやりと滲んでいる。佑樹が、唯史の耳元で囁いた。「大丈夫や」その声に、体の力が抜けた。「大丈夫」という言葉が、こんなにも深く胸に刺さるなんて思わなかった。「……もう戻れへんな」心の中で呟いた。けれど、それを止める理由がなかった。自分の中の何かが、もう止まらなかった。佑樹の手が、唯史のシャツをめくる。素肌が空気に触れる。肌と肌が重なる。微かな吐息が漏れた。「……っ」自分の声に、自分で驚く。けれど、それを止められなかった。身体の奥がざわめく。女とは違う快感。ただ撫でられ
last updateLast Updated : 2025-08-11
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朝の光と自己嫌悪

朝の光が、カーテンの隙間から差し込んでいた。白くて淡い光が、天井に模様を描いている。唯史は、ゆっくりと目を開けた。まぶたの裏に残っていた夜の記憶が、瞬間的に蘇る。身体が反応する前に、心が先にざわついた。隣では、佑樹が寝息を立てていた。肩まで布団をかぶり、穏やかな呼吸を繰り返している。その寝顔を見て、唯史の胸はまた締め付けられた。昨夜の出来事が、現実だったことを突きつけられた気がした。唯史は、そっと布団の中で自分の手を見つめた。指先が、かすかに汗ばんでいる。その手は、昨夜、確かに佑樹の体温を知った。触れて、握って、絡めた。それが、頭では理解できなくても、体はちゃんと覚えていた。「なんで、こんな気持ちよかったんやろ」心の中で、ぽつりと呟いた。女とする時は、こんな風にならなかった。身体の奥から震えるような感覚も、息が詰まるような熱も、知らなかった。けれど、昨夜は違った。恐ろしいほど、素直に感じてしまった。喉の奥が、ぎゅっと詰まる。胸の奥に、じわりと黒いものが広がっていく。それは、自己嫌悪だった。自分がこんなことをしたこと。こんなにも身体が反応したこと。何より、それを「嫌じゃなかった」と思っている自分に、耐えられなかった。「……どうかしてるわ」小さな声で呟いた。声は、布団の中で消えた。佑樹は、まだ寝ている。穏やかな顔だった。それを見て、唯史はさらに胸が苦しくなった。佑樹は、何も後悔していないんやろな。ずっと前から、こうなることを望んでたんやろな。けれど、唯史は違った。いや、違うと思い込もうとしているだけかもしれない。本当は、心のどこかで、望んでいたのかもしれない。「……わからん」頭と体が、全然違う方向を向いている。
last updateLast Updated : 2025-08-12
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曖昧な関係

夜の風が、少しだけ肌寒かった。窓を開けたままのリビングに、涼しい空気が流れ込んでくる。秋の虫の声がかすかに響いていた。夏が終わりきらない湿度が、まだ部屋の隅に残っている。唯史は、風呂上がりの濡れた髪をタオルで軽く拭きながら、ソファに座った。薄手のTシャツと短パン。肌に触れる布の感触が、やけに鮮明に感じられる。隣には佑樹がいた。同じように風呂上がりで、髪からぽたぽたと水滴を落としながら、無造作にタオルを首にかけている。「風、気持ちええな」佑樹がそう言った。唯史は頷きながら、視線を窓の外に向けた。夜風がカーテンを揺らしている。月は雲の間から、ぼんやりと顔を覗かせていた。何も言わずに、佑樹が唯史の肩に手を伸ばした。抵抗する理由がなかった。身体が自然に、佑樹の方へ傾く。肩と肩が触れる。そのまま、佑樹の腕が唯史の背中に回った。柔らかい温度が、じんわりと背中に伝わる。唇が重なった。ごく自然な流れだった。もう何度目か分からない。けれど、そのたびに心臓が跳ねるのは変わらなかった。唯史は、目を閉じた。佑樹の唇が自分の唇をなぞる感触を、ゆっくりと受け入れる。手が佑樹の腕に絡む。指先が、無意識にその肌をなぞっている。「これ……恋人なんやろか」心の中で、ふと思った。けれど、それを口に出すことはできなかった。もし言葉にしてしまったら、何かが壊れそうな気がした。今のこの空気は、「曖昧なまま」が一番心地よいのかもしれない。そう思い込もうとした。唇が離れる。佑樹は、唯史の髪を撫でた。その指先は、優しくて、けれどどこか切実だった。佑樹の目が、じっと唯史を見ていた。けれど、その瞳の奥にあるものを、唯史は見ないふりをした。「……なんや、今日は甘
last updateLast Updated : 2025-08-13
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遥、ふたたび

翌日の昼下がり、チャイムの音が鳴った。唯史はソファでスマホをいじっていたが、反射的に顔を上げた。玄関の方から「佑樹ー」と呼ぶ声が聞こえる。女の声。それが誰かを考えるまでもなかった。佑樹がリビングから立ち上がり、玄関に向かった。唯史はそのままソファに座り続けた。体は動かないのに、心臓だけが少しだけ跳ねた。「また来たで」遥の声が、玄関から軽やかに響いた。笑い声混じりだが、その声色には何か引っかかるものがある。唯史は、スマホの画面を見つめたまま、耳だけで会話を聞いていた。「おお、ありがとな。わざわざ」佑樹の声は変わらず穏やかだった。靴音が近づく。玄関からリビングまで、遥がそのまま上がってくるのが分かった。袋に入った野菜を持って、遥が現れた。トマト、きゅうり、茄子。実家の畑で採れたばかりのものだ。「ほんま、うちの親も野菜ばっか作るからなあ」遥は笑いながら袋をテーブルに置いた。けれど、その笑顔の奥に、探るような視線が含まれていた。目だけが、少しだけ鋭い。「これ、また漬物にでもしたらええやん。佑樹、今度作り方教えてや」遥は、佑樹に体を寄せた。肩が軽く触れるくらいの距離。その仕草は自然に見せかけて、明らかに意図的だった。唯史は、ソファに座ったまま、視線をスマホに落とした。けれど、画面の文字は全く頭に入ってこない。心の奥が、妙にざわついていた。「また飲みに行こうや。最近全然誘ってくれへんやん」遥は、佑樹の肩を軽く叩いた。声は明るいが、瞳の奥が揺れている。その視線が、ふと唯史に向けられた。笑っている顔のままで、目だけが鋭くなる。「唯史も来たらええのに。なあ?」遥は、そう言いながらも視線は探るようだった。口元は笑っている。けれど、その笑みはどこか挑発的だった。「
last updateLast Updated : 2025-08-14
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夜の沈黙

リビングの時計が、夜の十時を少し回っていた。窓の外からは、虫の声がかすかに聞こえてくる。遥が帰った後の部屋は、妙に静かだった。ソファには、唯史と佑樹が並んで座っていた。二人とも缶ビールを手にしている。テレビはつけていない。間接照明だけが、薄暗い光を投げていた。唯史は、缶を軽く揺らして中身を確かめた。半分くらい残っている。けれど、口をつける気にはなれなかった。さっきから、喉が妙に渇いているのに、何も飲み込めない。「……佑樹」唯史は、目を伏せたまま呟いた。声は乾いていた。隣にいる佑樹が、ビールを口に運ぶ気配がする。缶の底がテーブルに軽く当たる音が、静かに響いた。「ん?」「お前、あんな女に構わんでええやん」唯史は、なるべく淡々と言ったつもりだった。けれど、声の奥には、隠しきれない棘が混ざっていた。佑樹は、少しだけ眉を上げた。けれど、表情は崩さない。「遥のことか?」「ほかに誰がおるんや」唯史は、缶を唇に近づけたが、飲まなかった。唇が、缶の縁に触れたまま、じっとしている。心臓の音が、自分でも聞こえるくらいに大きかった。「別に構ってへんやろ。野菜もろただけや」佑樹は、軽く笑った。けれど、その目はどこか柔らかかった。唯史を見つめる視線が、いつもと同じで、それが逆に胸に刺さる。「俺はお前がおればええんやで」佑樹は、さらりとそう言った。缶ビールを手にしたまま、肩を少しだけすくめる。冗談みたいに聞こえるその言葉に、唯史の心がざわついた。「……それ、どういう意味やねん」唯史は、心の中でそう思った。けれど、言葉にはできなかった。口に出したら、全部が変わってしまいそうで怖かった。この曖昧な関係が壊れるのも、怖
last updateLast Updated : 2025-08-15
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