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二人だけの帰郷

Auteur: 中岡 始
last update Dernière mise à jour: 2025-08-31 17:36:55

空は、少しずつ夜に変わっていった。橙色だった西の空は薄紫に染まり、やがて藍色が広がっていく。川面には、その色が静かに映り込んでいた。水は穏やかで、時折小さな波が立ち、光を揺らす。二人は、ただ並んで座っていた。言葉はもう必要なかった。沈黙の中に、言葉以上のものがあった。

唯史は、空を見上げた。昔と同じ場所にいるはずなのに、見える景色はまるで違っていた。十五年前は、こんな風に肩を並べて空を見ているだけで、胸がざわざわしていた。隣にいる佑樹の存在が、嬉しいようで苦しいようで、どうしていいかわからなかった。けれど今は違う。ただ、隣にいることが当たり前で、自然で、心地よかった。

風がそっと吹き、唯史の髪を揺らした。隣にいる佑樹の肩に、唯史はもう一度ゆっくりと体を預けた。佑樹の体温が、じんわりと伝わってくる。そのぬくもりが、胸の奥を優しく満たした。

「帰る場所って、案外こんなとこかもしれんな」

唯史は、ぽつりと呟いた。その声は、空気に溶けるように静かだった。けれど、自分の中では、ずっと前から言いたかった言葉だった。

佑樹は、少しだけ間を置いてから答えた。

「そうやな」

その一言には、重みがあった。声は低く、落ち着いていて、どこか安心させる響きがあった。隣にいるだけで、自分がここにいていいと思える。そんな感覚が、唯史の胸の奥に広がっていった。

二人はそのまま、肩を寄せたまま、黙って空を見ていた。星が少しずつ瞬き始める。川面にも、その星が揺れて映る。風がまた吹き、草がさわさわと音を立てた。その音さえも、心地よい背景になっていた。

唯史は、佑樹の肩に額をそっと預けた。目を閉じると、佑樹の呼吸がわずかに感じられた。ゆっくりとした、そのリズムに合わせて、唯史の胸の奥も静かに落ち着いていった。

「これが、俺の帰る場所なんや」

唯史は、心の中でそう思った。その瞬間、胸の奥がすっと軽くなった。今まで抱えてきた不安や迷いが、ふっと消えていくような気がした。どこにも行かなくていい。誰にも見せなくていい自分を、ここでならさらけ出せる。佑樹といるだけで、それができる。

夜は、静かに深まっていった。川面には、まだ星が揺れている。二人

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