夕方、漣くんのマンションへ行き、謝罪を受けた件の報告をした。 椅子やソファのない室内で、いつものようにベッドに横並びに座る。「そう。病院からも綾乃からも、ちゃんと謝罪をしてもらえたんだね」 漣くんは私の話を聞き終えると、安堵の息を吐いた。「うん。……新庄さん、すごく申し訳なさそうにしてた」「やっといつもの自分を取り戻してくれたみたいで……本当によかったよ」 漣の言葉に、私も胸を撫で下ろす。 昨夜、彼のもとにも新庄さんから電話があったらしい。嫉妬で自分を見失っていたけれど、漣と話すうちに頭が冷えたのだと。「昨日の電話でも、まるで憑き物が落ちたみたいに反省していたよ。自分でも、自分のしたことが信じられないみたいで」「……それだけ漣くんのことが好きだったんだよね」 会議室での新庄さんの姿を思い出す。 彼女は自分の想いを「執着だった」と言ったけれど、裏を返せば、それほど好意が大きく膨らみすぎてしまったということだ。 愛しすぎて、自分で自分を制御できなくなってしまった――と。「でも私も、負けないくらい大好きだから。漣くんのこと」 思わず言葉にして、となりに座る漣くんの袖を軽く掴む。 見上げれば、彼も視線を合わせてくれて、その瞳が甘く揺れる。「……うん、ありがとう。俺も大好きだよ」 そう言って、漣くんが顔を近づけてきた。 唇が触れ合い、温かなぬくもりに心が満たされる。 ほんの短い時間だけど、やっと平穏を取り戻せた気がして、心がほぐれていった。 ◆◇◆ 夕食の時間に合わせて帰宅すると、リビングには母の姿があった。 ソファに腰掛けていた母は、私を見るなり小さく微笑む。「おかえりなさい。今日は気疲れしたでしょう」「うん、でも大丈夫。…&hel
Last Updated : 2025-09-25 Read more