All Chapters of 禁愛願望~イケメンエリート医師の義兄に拒まれています~: Chapter 131 - Chapter 140

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【27】③

 夕方、漣くんのマンションへ行き、謝罪を受けた件の報告をした。 椅子やソファのない室内で、いつものようにベッドに横並びに座る。「そう。病院からも綾乃からも、ちゃんと謝罪をしてもらえたんだね」  漣くんは私の話を聞き終えると、安堵の息を吐いた。「うん。……新庄さん、すごく申し訳なさそうにしてた」「やっといつもの自分を取り戻してくれたみたいで……本当によかったよ」 漣の言葉に、私も胸を撫で下ろす。 昨夜、彼のもとにも新庄さんから電話があったらしい。嫉妬で自分を見失っていたけれど、漣と話すうちに頭が冷えたのだと。「昨日の電話でも、まるで憑き物が落ちたみたいに反省していたよ。自分でも、自分のしたことが信じられないみたいで」「……それだけ漣くんのことが好きだったんだよね」 会議室での新庄さんの姿を思い出す。 彼女は自分の想いを「執着だった」と言ったけれど、裏を返せば、それほど好意が大きく膨らみすぎてしまったということだ。 愛しすぎて、自分で自分を制御できなくなってしまった――と。「でも私も、負けないくらい大好きだから。漣くんのこと」 思わず言葉にして、となりに座る漣くんの袖を軽く掴む。 見上げれば、彼も視線を合わせてくれて、その瞳が甘く揺れる。「……うん、ありがとう。俺も大好きだよ」 そう言って、漣くんが顔を近づけてきた。 唇が触れ合い、温かなぬくもりに心が満たされる。 ほんの短い時間だけど、やっと平穏を取り戻せた気がして、心がほぐれていった。 ◆◇◆ 夕食の時間に合わせて帰宅すると、リビングには母の姿があった。 ソファに腰掛けていた母は、私を見るなり小さく微笑む。「おかえりなさい。今日は気疲れしたでしょう」「うん、でも大丈夫。…&hel
last updateLast Updated : 2025-09-25
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【28】①

 新庄さんとの件が一段落すると、私の生活は一気に国家試験モードへと切り替わった。 二月下旬に控えた大一番に向けて、授業のある日もない日も大学に詰め、翠や亮介とともに過去問や模試を解き、自分の弱点を一つずつ潰していく。 当然、休日も返上。ほんの少しの休憩を除けば、ほとんど机にかじりついたまま。万が一でも不合格となれば大変なことになるわけで、気合いの入りようは尋常じゃなかった。  ――とにかく今は、合格することだけを考えなきゃ。 そう決めたから、漣くんと会うのもやめた。 提案したのは漣くん自身だった。 今までは、どんなに忙しくても週に一度は彼の部屋を訪れていたけれど、「頭の中を勉強モードに切り替えるために、試験が終わるまでは会うのを控えよう」と話し合って決めたのだ。 正直、会えないのはすごく寂しい。けれど漣くんは「たった二ヶ月の辛抱だよ」と笑って慰めてくれた。  そう、たった二ヶ月。今だけは恋愛を脇に置いて、未来のために努力する時間だ――そう自分に言い聞かせた。 ◆◇◆ 年が明け、一月中旬のある夜。時計はすでに二十三時を回っていた。 過去問と格闘していると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。「はい」 返事をすると、母がトレイを抱えて入ってくる。「お疲れさま。夜食作ったから、ひと息入れるときに食べて」「わ、おいしそう」 湯気の立つ味噌汁。大根や人参、ほうれん草に生姜まで入った具だくさん。眠くならないようにボリュームは軽めで、身体の芯から温まる理想的な夜食だった。 母はこの冬、私が勉強漬けになると生活面を全力で支えてくれていた。夜勤のない日は必ず夜食を作ってくれるし、「水分ちゃんと取ってね」「夜更かししすぎないで」と気遣いの声も忘れない。 相変わらず漣くんのことは話題にしないけれど、それでも母の愛情はひしひしと伝わってくる。「じゃあ、あまり無理はしないのよ」「
last updateLast Updated : 2025-09-26
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【28】②

 そうして迎えた試験本番。根を詰めてきた甲斐があって、手応えは悪くなかった。 会場を出るときには、胸の奥まで解放感でいっぱいになっていた。 やれることは全部やった。あとは結果を待つだけ。 そして――これでようやく、漣くんに会える。  たった二ヶ月とはいえ、直接会えない寂しさは思った以上に堪えた。 けれど、それももう終わり。やっと大好きな人に会いに行ける―― ◆◇◆ 試験が終わった週の日曜。私は漣くんに誘われ、ホテルのフレンチレストランへ向かった。  試験会場の帰り道に「会いたい」と送ったメッセージに、漣くんは「日曜日空けておいて」とだけ返してきた。 てっきり彼のマンションで会うのかと思っていたのに、わざわざお店を予約してくれていたのにはおどろいた。しかも、行ったこともないようなラグジュアリーな場所。 「着ていく服がない!」と騒いだ私を心配して、その日の昼間に近くのセレクトショップへ連れて行ってくれた。 場に相応しいワンピースとヒールをプレゼントしてくれて――最初は恐縮したけれど、「こういうのをひとつは持っておきなさい」と説得され、ありがたく受け取った。 そうして辿り着いたのが、この優雅な夜だった。「瑞希、早いけど合格おめでとう」  ワイングラスを軽く掲げながら、漣がにこやかに告げる。「ま、まだ結果出てないよ」  慌てて返す私に、漣はさらりと言う。「でも合格するんだろ? 俺はそう信じてる」「ありがとう……うん、そうであってほしいな」 今夜のディナーはフルコース。旬の食材を使った繊細な料理が、次々と目の前に運ばれてくる。緊張で固まっていた心と身体が、贅沢な味わいに少しずつ解けていく。「それにしても……ごめんね、漣くん。素敵なドレスに、こんな高そうなお店……」
last updateLast Updated : 2025-09-26
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【28】③

 漣くんがギャルソンを呼ぶと、テーブル脇に黒のビジネスバッグが置かれた。 そこから彼が取り出したのは、きちんと封をされたA4サイズの茶封筒だ。「これは……?」「開けてみてからのお楽しみ」 言葉通りなんだか楽しげな漣くんに促され、私はそっと封を開ける。 中から出てきたのは、旅行の行程表と旅館のパンフレット。 見慣れた温泉地の名前が目に飛び込んできて、胸が高鳴った。「これって……私と漣くんで旅行できるってこと?」「そう。試験が終わったら、ふたりでゆっくり過ごしたいねって話してただろう? だったら温泉かな、と思って」 思いがけないサプライズに、思わず目が潤む。けれどすぐに現実的な疑問も浮かぶ。「うれしいけど……漣くん、仕事は大丈夫なの?」 外科医の彼が常に忙しいことはよく知っている。 行程表には土日の予定が記されていたが、二日も続けて休むなんて、これまで見たことがなかった。「事前に準備しておけば、たまにはね。……もちろん、不測の事態がなければ、だけど」 にっこりと微笑む漣くん。その表情は「心配しなくていい」と告げてくれているようで、不安が和らいでいく。「瑞希のほうこそ、予定は大丈夫? 前に土日は動きやすいって聞いたから勝手に日程を組んじゃったけど……」「うん、私は大丈夫だよ。あとは卒論の発表と内定先の研修が少しあるくらいだから」  日程は三月中旬。卒業式も終わって一段落ついている時期だろう。 行程表を見つめながら、胸の奥からじわじわと幸せがあふれてきた。  ……私をよろこばせるために、忙しい漣くんが予定を調整して計画してくれた。その気持ちがありがたい。 「――うれしい。漣くんと旅行できるのもそ
last updateLast Updated : 2025-09-27
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【28】④

 漣くんから旅行に誘われて、とてもうれしかった。 でも同時に、ひとつ問題があった。 ――泊まりがけで家を空けることを、どう両親に説明するか。 女友達の家に泊まったことは何度かあった。そのときも、誰とどこで、翌日は何時に帰るかまで細かく母に報告してきた。 大切な両親を心配させたくなかったし、きちんと伝えるべきだと思っていたから。 けれど今回ばかりは違う。漣くんと泊まりがけ――しかもまだ国家試験の結果も出ていない。母が快く受け止めてくれるとはとても思えなかった。 ほんの一瞬、翠の名前を借りて『卒業旅行』だと言ってしまおうか、という考えが頭をかすめた。けれどすぐに打ち消す。 せっかく正直にすべてを打ち明けてきたのに、ここでうそをつくなんて違う。 本当に漣くんとの関係を認めてもらいたいのなら、正直に言うしかない。そう彼に話すと、「そうだね」とうなずいてくれた。 漣くんも同席してくれると言ってくれたけれど、私はそれを遠慮した。旅行のために予定を詰めて忙しくしているはずなのに、これ以上負担をかけたくなかったから。「まずは私ひとりで伝えてみるよ」と伝えた。 旅行を一週間後に控えたある夜。その日、非番だった母が夕食後、リビングのソファで緑茶を飲みながらくつろいでいる時間を見計らい、声をかけた。「お母さん、ちょっといい?」「どうしたの?」 となりに座り、胸の奥を落ち着けるように大きく息を吸う。「ちょっと、聞いてほしいことがあって」「あら、なに? かしこまっちゃって」 冗談めかした母の笑顔に少し救われる。それでも緊張は消えない。私は意を決して切り出した。「来週の土日なんだけど、泊まりがけで出かけたいの。いいかな?」「試験も終わったし、いいんじゃない? どこに行くの?」「旅行に行こうと思ってて……その、漣くんと」 母の表情が強張ったのがわかった。急に心細くなったけれど、それでも、逃げずに続けた
last updateLast Updated : 2025-09-27
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【28】⑤

「……昨日の夜、珍しく漣から電話があったのよ。そのときに、旅行の話を聞いたわ」「えっ」 意外な言葉に、思わず息をのむ。 母はゆっくりと顔を上げ、私の目を見つめながらうなずいた。「ここであなたとの関係を打ち明けたときと同じくらい、緊張した声でね。『瑞希とのこれからを真剣に考えてる。決して一時的な気持ちじゃないから、母さんにはどうしても認めてほしい』って」 おどろいた。母に話すのは私の役目だと漣くんもわかっていたはずだ。 それでも先に連絡を入れていたのは――私と母が衝突してしまう可能性まで考えて、少しでも安心させようとしたからなのだろう。漣くんの想いに、胸が熱くなる。 母がふうっと息を吐いてから、膝の上で指を重ねた。「あなたたちが軽い気持ちで告白したなんて、最初から思ってなかったわ。国家試験が近づいたらきっぱりと会わないって決めたことも、知ってる。漣が年末年始に一度も帰ってこなかったのも、そのせいなのよね」「……」「それに――今回の旅行だって、黙ってしまえば済む話だった。でも本当のことを言ってくれた。それだけで、ふたりがどれだけ誠意を示そうとしているか、ちゃんと伝わってきたわ」 母は小さく笑い、遠くを見つめるように視線を外した。「去年の秋、あなたたちのことを初めて聞いたときは……ショックだった。忙しさを理由に、漣にあなたのことを任せてしまったのが間違いだったのかもしれないって、何度も思った。本当のきょうだいみたいに育ててきたのに、なんでって」 母の声は少し震えていたけれど、すぐに「でも」と切り返す。「――この四ヶ月で少しずつ整理ができたの。きょうだいみたいに育てたけれど、実際には違う。もし異性として惹かれ合っているなら、私が邪魔する理由はないのかもしれないって」 私の胸が大きく波打った。母の言葉のひとつひとつが、長い時間をかけてたどり着いた結論なのだと伝わってくる。 それから母が私のほうを見て、柔らかな表情
last updateLast Updated : 2025-09-28
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【29】①

 母とのわだかまりもなくなった、三月中旬の週末。 私は漣くんと予定通り、一泊二日の旅行に出かけた。 行き先は車で二時間ほどの距離にある温泉地。レンタカーを運転してくれる漣くんの横顔は、いつもより一段と落ち着いて見えて、ハンドルを握る指先まで頼もしく映る。 安全運転のなかで流れる景色は心地よく、ドライブ自体が楽しかった。 出発したのは午前中。チェックインは午後三時なので、その間に観光を楽しむことにした。 街並みの残る参道でおみくじを引き合ったり、串団子や温泉まんじゅうを食べ歩きしたり。 人力車を見かけたときには「乗ってみる?」と漣くんがからかってきて、私は慌てて首を振ったけれど、本当は「ちょっと乗りたいなぁ」なんて思ったりした。 そんな心が弾むやりとりを繰り返しながら歩いていると、時間があっという間に過ぎていく。 観光を終え、旅館へ移動。漣くんが予約してくれていたのは、旅行サイトでも高評価の高級旅館だった。 部屋に案内され、襖を開けると――目の前に広がったのは、窓越しに望む専用の露天風呂。「わぁ……!」 思わず声がもれる。これを私たちで独占できるなんて、贅沢過ぎる。 客室は和室で、畳の香りが心地いい。障子や照明も上質。古き良さを残しながら、モダンな家具が配置されていて、落ち着きと華やかさが同居している雰囲気に好感を抱いた。「食事は十八時半からだって。まだ時間はあるね」「そうだね」 部屋をひと通り見て回ってからローテーブルに戻り、私が言う。すると、漣くんが柔らかくうなずいた。「――せっかく温泉に来たんだから、お風呂をゆっくり楽しもうか」「うん。こんなに立派なお風呂もあるし」 この旅館には大浴場もあるけれど、せっかく部屋に露天風呂が付いているなら、それを楽しまないともったいない。「瑞希、先に入っていいよ」「え、いいよ。漣くんが先に入りなよ」
last updateLast Updated : 2025-09-28
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【29】②

「お湯に浸かりながら景色が見られるの、いいね」「う、うん……そう、だね」 目の前には、湯けむりの向こうに山あいの緑と川のせせらぎが広がっていた。遠くに灯る旅館街の明かりが、夕暮れの薄紫の空に溶けて幻想的に映えている。 けれど私にとってはその景色よりも、となりにいる漣くんの存在のほうがずっとまぶしくて、心臓が高鳴るばかりだった。 「一緒に入る?」という提案を、結局受け入れてしまった私。今までふたりで湯船に浸かったことなんてなかったし、だからこそ恥ずかしかった。 でも、こういう機会でなければ経験できないことでもある。思い切って「うん」と答えた瞬間から、ずっと心は落ち着かないままだった。 服を脱いで露天風呂に向かうときの緊張は、もう限界に近かった。 もちろん漣くんの前で裸になるのは初めてじゃない。けれどそういうときだって、私は恥ずかしさをまぎらわすために意識して目を細めてしまうくらいで――改めて向かい合う状況となると、やっぱり一大事だ。 湯に肩まで浸かりながらも、視線の端に映る彼の身体にドキドキが止まらない。 引き締まった身体なのに、男性らしい逞しさを秘めた筋肉のライン。水滴が肌を伝うのを見てしまうと、意識しないようにしようと思っても鼓動が勝手に早まってしまう。「さっきから静かだね、瑞希」「そ、そう?」 必死に平静を装っていたのに、やっぱり気付かれてしまった。口数が少なくなっていた自覚があるから、内心で慌ててしまう。 漣くんが私の顔を覗き込み、ふふっとおかしそうに笑った。「顔真っ赤だし。恥ずかしがってるの、バレバレだよ。まるでのぼせたみたい」「~~~っ……だって……」「わかってるよ。俺が誘ったから、頑張ってOKしてくれたんだろう? ……そういうところ、すごくかわいい」 低い声でささやかれると、胸がきゅんと締め付けられる。 漣く
last updateLast Updated : 2025-09-29
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【29】③<R18描写を含む>

 露天風呂を出た漣くんと私は、身体を拭くのもそこそこに浴衣を羽織り、部屋の奥にあるベッドへと身を沈めた。 畳に馴染むように置かれた低めのベッドは、しっかりしたスプリングで支えてくれて、柔らかいのに安心感がある。 抱き合いながら唇を重ねると、さっきまで温泉で温まっていた身体がさらに熱を帯びていくのがわかった。「……瑞希がほしい」「私も……漣くんがほしい……」 浴衣を軽く押さえていた手がするりと滑り、合わせ目が開くと、胸の膨らみが露わになった。 温かな手がそれを包み込み、やさしく揉みしだかれる。それから指先で頂を転がされ、甘い痺れが走った。「んんっ……そこ、そんな風にしたら……」「ここ?」「ぁあっ……!」 わざとらしく問いかけながら、頂をきゅっと摘まれる。お腹の下から快感が突き上げてきて、思わず声が大きくなった。「……かわいい。瑞希の反応が素直すぎて、意地悪したくなる」「漣くん……」 咎めるように名前を呼ぶと、彼はふっと笑って、今度は太腿へと手を伸ばす。撫でられるたびに力が抜け、足が勝手に開いてしまいそうになった。 やがて指先が秘めた場所へたどり着き、ためらいなく熱を帯びた溝をなぞった。くちゅり、と濡れた音がして、身体が小さく跳ねる。「……もう、とろとろだね。待っててくれたの?」「ち、違……う、けど……漣くんと一緒にいたら、ドキドキして……」 羞恥で顔が熱くなるのに、耳元でやさしく囁かれると素直に答えてしまう。そんな自分に気付いて余計に恥ずかしさが募る。「俺も同じだよ。……早く瑞希とひとつにな
last updateLast Updated : 2025-09-29
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【29】④<R18描写を含む>

「身体、大丈夫?」 ベッドの上で乱れた呼吸を整えていると、漣くんが顔を覗き込んで訊ねてくる。「うん……。あの、漣くん」 私はそっと身体を起こし、ひとつの決意を抱きながら愛しい人の名前を呼んだ。彼は「なに?」と優しく問い返してくれる。「いつも私ばっかり気持ちよくしてもらってるから……その……今日は、私も漣くんにしてあげたいんだけど」「瑞希……」 驚いたように目を見開く彼。シャイな私がそんなことを言い出すなんて思っていなかったのだろう。自分でも信じられないくらいだったから、当然かもしれない。「知っての通り、経験はないから……上手にはできないと思う。でも、それでもよければ」 口に出した瞬間、顔どころか全身が熱くなって、汗がにじむ。自分から望むなんて、漣くんが引いてしまわないか心配で、胸がどきどきする。 私の心配をよそに、漣くんは目を細めて微笑んだ。「その気持ちがうれしいよ。ありがとう。……無理のない範囲で、お願いしてもいい?」「うん……頑張る、ね」 好意的な返事がもらえて安堵する。 漣くんはベッドに腰を下ろし、私はその脚の間に跪いた。視界に飛び込んでくる彼の昂ぶりに、思わず息を呑む。「すごい……もう、こんなに」 普段は隠れているものが、目の前で存在感を放っている。女性の私にとっては、いつ見ても不思議で――でも今日は直視することを選んだ。少しでも彼に悦んでもらいたくて。「……触るね」 漣くんが静かにうなずくのを見て、私はおずおずと指を伸ばした。 触れた瞬間、熱と脈動が手のひらに伝わってくる。「熱い……それに、びくびくしてる。……
last updateLast Updated : 2025-09-30
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