元彼の弟との密かな恋は三年続いた。私・松村清子(まつむら きよこ)はわざわざ飛行機で海外まで飛び、大森浩司(おおもり こうじ)へのサプライズにと、手作りの誕生日ケーキを作った。ところが、そこで思いがけず、彼が別の女の子にプロポーズしている現場を目撃してしまう。浩司が片膝をつき、かつて自分が気に入っていたダイヤの指輪を、別の女の子の指にはめるのを清子はこの目で見た。巨大スクリーンには、電子日記が映し出されていた。そこには、浩司とその女の子との恋愛の軌跡が記されている。その期間は、清子と浩司が付き合っていたこの三年間と、完全に重なっていた。清子はその場に立ちすくみ、しばらくは我に返れなかった。あの女――吉川美加(よしかわ みか)が化粧直しに出かけると、中からくすくす笑う声と会話が聞こえてきた。「ああ、浩司、そんな風にプロポーズしちゃって、三年も付き合ってる彼女はどうするの?彼女、浩司が結婚してくれるのをずっと待ってんでしょ?帰ってなんて説明するつもり?……もう、正直に話しちゃえば?」「あの時さ、浩司の兄さんにフラれたばっかりで、彼女、すっごく落ち込んでたんだよ。で、どういう風の吹き回しか、急に浩司に猛烈アタックしてきてさ。浩司も、彼女がまた浩司の兄さんに絡みに行くのを心配して、仕方なく付き合ってただけなんだよね。今じゃ浩司の兄さんも海外に引っ越しちゃったし、もう自分を犠牲にする必要もないってわけさ」「この三年間、浩司は仕事の口実で飛んできては、彼の大事な女に会ってたんだ。彼女、全く気づいてなかったんだな」「でもさ、浩司、三年も寝てて、本当に少しも感情湧かなかったの?松村清子って、あの顔とスタイル、男が見たらヨダレ出るよ?彼女、浩司にベタ惚れで、浩司以外の男は眼中になかったから、チャンスなかったけどさ」浩司はだらりと口元をゆるめ、何気ない口調で言った。「遊び相手に、感情なんて湧くと思う?」その瞬間、清子の顔から血の気が引き、体が凍りついた。胸が張り裂けるような痛みが広がる。浩司が席を立って出てこようとするのが見えた。清子は慌てて身を隠し、彼らの後を追った。静かな地下駐車場で、浩司が優しく、その女の子の唇にキスをしているのを清子は目にした。彼女を傷つけないよう、とても慎重に。一番熱くなった時、浩司は車内
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