それでも皮肉を言えるってことは、どこも悪くはないんだろう。「雲和と長話すると思って、下で何度もぐるぐる回ってたんだ。そのあと片岡さんに会って、ちょっと話しただけだ」「離婚のことは、もう外にも知れ渡ってるから」夕星は真剣に説明した。もともと険しかった凌の顔色はさらに暗く沈み、胸が何度も激しく上下した後、冷たく言った。「彼は本気でお前のことを思って、離婚弁護士まで探してくれたんだ。お前が雲和を嫌ってると知ると、彼女を悪く言うほどに」「彼なんて一体何様だ。先祖の威光にすがって、無責任に口を滑らせている」夕星は唇を薄く結んだ。凌が怒っている理由がようやくわかった。怒っているのは離婚のことではなく、雲和のことを悪く言ったからだ。夕星は何も言わなかった。凌は命令した。「今後、あいつとは関わるな」夕星は、凌が自分を守るために正邦に後頭部を殴られたことを思いやり、黙って反論しなかった。だけど、文弥と関わるなと言われるなんて。彼女にはできない。「片岡さんはどこが言い間違ったの?」凌は相変わらずの表情だが、視線は氷のように冷たく彼女を見つめている。「あいつをかばうのか?」どちらも反語で、言葉の火花が散った。空気が一気に重くなる。夕星は喧嘩をしたくなかった。だって大事な後頭部を守らなきゃいけないから。彼女はスマホを手に取り、ソファに移動して俯きながら画面を操作した。ところが凌は、今日に限ってどういうわけか不機嫌で、怨念のある夫のように言った。「夕星、片岡文弥が陰で女性を悪く言うなんて、人としてどうかしてる」夕星はスマホから顔を上げ、無表情で言った。「雲和は腹黒くないの?」「彼女が泣きわめかなければ、あなたはこんな一発を食らわずに済んだだろうに」「それともその一撃で、あなたの脳みそが飛んだの?」「夕星」凌の瞳は墨のように深く暗く、怒りに満ちていた。「雲和は今夜の送別会を心を込めて準備した。でも片岡先生は明らかにお前を気に入っている。彼女はただ落ち込んでいるだけだ。その涙を気持ち悪いなんて言うべきじゃない」夕星の冷たい瞳には全てが見透かされた。雲和が告げ口したことも、彼がそれを知って胸を痛めていることも。「彼女の涙はまるで永遠に流れ続けるかのようね。気持ち悪くないの?」雲和の涙は強力な
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