「そんなはずない……母と千鶴おばさんも親友だったし、千鶴おばは私を本当の娘のように大切にしてくれた。今でもかわいがってくれるのに」杏奈は大きな瞳を見開き、感情を抑えきれず低く叫んだ。「彼女んはもともと善良な人よ」恵里の裏切り以外で、千鶴は本当に善良だった。だからこそ、天音は千鶴が自分の幸せと結婚を壊した事実をどうしても受け入れられなかった。「嘘よ、そんなことあるはずがない!私の青春は全部蓮司だった。私は彼を愛していたし、両親もその気持ちを知っていたの」杏奈は現実を決して受け入れられなかった。天音はもう杏奈の気持ちを考える余裕もなかった。「あなたへの告訴は取り下げる。私たちはもう友達じゃない」「な……?私を責めないの?」杏奈は信じられないという顔で天音を見つめた。「どうして?もし私が恵里を千鶴おばさんに紹介しなければ、あの女があなたと蓮司の結婚を壊すことなんてできなかったのに。どうして私を責めないの?」「恵里じゃなくても他の女がいたはずよ。あなたじゃなくても、誰かが蓮司に女を近づけていた。でも女を受け入れた蓮司こそが、私を傷つけた本当の加害者よ」天音はそう言い残し、椅子を立ち出口へ向かった。「天音、たとえそうされても私は感謝しないから!どうせ数日間の拘留と数千円の罰金なんて私には痛くもかゆくもない。あなたの同情なんていらない、聞こえてる!?」杏奈は絶叫したが、天音は一切振り向かなかった。涙があふれ、杏奈はその場に膝をついた。「天音、あの女は他でもない、恵里なのよ。私はあなたの親友だった。あなたのすべての気持ちも痛みも理解していた、どうすれば一番あなたが苦しむかも分かってた」「彼女は恵里……私が必死で探し出した恵里、あなたによく似た中村恵里だ天音、聞いたのか?このバカ、どうして私を許すの!情けが何よ!私には要らない!」杏奈の叫びに、天音は一度も振り返らなかった。天音は事務所で告訴取り下げの書類にサインし、そこへ駆けつけた蓮司と出会った。天音は蓮司の首筋に残る痕や香水の匂いを無視し、まっすぐ手を差し出した。「母の『海の星』はどこ?」天音は蓮司の瞳に一瞬の迷いを見逃さなかった。だが、あのネックレスだけは絶対に譲れなかった。「あなたは、4億円で落札して私にくれるって言ったよね?」天音は蓮司の目をじっ
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