結婚して六年、天音は夫の深い愛情がすべて偽りだったことに気づいた。男ってなんでこんなに演技が上手いんだろう。蓮司は「愛してる、すごくすごく愛してる」と言ってくれた。でも、これが本当に愛なのか?天音は彼のもとを去ることを決めた。「隊長、すぐにチームに復帰させてください」「天音、君が突然いなくなったら、きっと蓮司は狂うぞ」男の淡々とした声にはわずかな驚きが混じっていた。彼は天音と蓮司が六年の結婚生活を送り、一人の息子を育て、円満な家庭を築いていたことを知っていた。夫の蓮司は彼女を深く溺愛していた。「彼のことはもうどうでもいいです」天音は携帯をぎゅっと握りしめた。「分かった。君を失ったことは組織にとって最大の損失だった。長くても一ヶ月以内に、すべてを手配する。その時『天音』はこの世から消え、『叢雲(むらくも)』がチームに復帰することになる」「ありがとうございます、隊長」天音は携帯をしまった。パソコンのモニターには、男と女が別荘のあらゆる場所で体を重ねあっている映像が流れていた。その映像は天音の目を容赦なく刺した。天音はこれまで思いもしなかった。十年の付き合い、学校で出会い結婚まで至った人が、まさか自分を裏切るなんて。彼は息子の家庭教師と浮気していた。書斎の床には色とりどりのコンドームが散乱し、いくつかは金庫中の結婚証明書の上にまで散らかっていた。息子を産んでから、天音の体は消耗しきり、第二子を望んでいたが、もう妊娠することはできない。だから二人はもうコンドームなど使っていなかった。なのに、モニターの中の蓮司は次々とコンドームを開け、満足することがなかった。蓮司はどうして天音にこんなことができたのか。パソコンの画面に、突然チャットログが現れた。蓮司のLINEはパソコンとスマホで同期されている。【大智くんは、これから天音さんのことをお母さん、私のことをママって呼んでくれるって。旦那さん、あなたは?】チャット欄の右下にすぐ返信が来た。【嫁】天音は「嫁」という言葉を見た瞬間、椅子に崩れ落ち、両手で胸を押さえた。両手を握りしめ、爪が手のひらに食い込み、血が流れた。でも、手の痛みよりも心の痛みのほうがそれを凌駕していた。天音は無理に自分を落ち着かせて、数え切れないほどの破廉
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