二人の子どもは翔吾に連れられて出てきたが、医師によると大事には至らなかったようだ。蓮司は天音の手を取り、大智を連れて、龍一たちに別れを告げた。三人が去っていく後ろ姿を見ながらしょんぼりする直樹に、龍一は頭を撫でた。「パパは頑張るから」直樹は頷いた。「大智くんは愛莉ちゃんのママの方が好きで、自分のママには全然優しくないし、いつも怒らせてばかり。なのにそのママを僕に譲ってくれないんだ。ずるいよ。お姉さんは、今日僕が良い子だって褒めてくれた。僕も頑張る。もっと良い子になって、お姉さんを怒らせないようにする。大きくなったら、お姉さんを守るんだ。そうしたら、お姉さんは大智くんじゃなくて僕を選んでくれるんだ」直樹の無邪気な言葉に、龍一は思わず笑みをこぼした。しかし、それは叶わぬ願いだった。大智は天音の実の息子だ。何をしようと、彼女は彼を愛し、許し、支え続ける。それは変わらない事実だ。龍一は直樹の夢を壊したくなくて、静かに頷いた。「ああ」「教授、桜華大学の学園祭から招待状が届きました。名誉卒業生として、明日の式典でスピーチをしてほしいそうです」翔吾は覇気がない龍一に声をかけた。「招待者リストには、加藤さんの名前もありました」龍一の目に光が灯った。直樹を抱き上げ、歓びを隠せず帰路についた。「パパのスピーチ用に、格好いい服を選んで」翔吾はその後ろを歩きながら、楽しそうに話す二人の様子を見ていた。夜も更け、天音は車のドアにもたれて眠ってしまった。天音の寝顔を見ながら、蓮司は大智を本家に送り返すことにした。「パパ、もういい子にするから。悪いことはしないから、ここに置いていかないで」「大智、おばあちゃんのこと大好きでしょ?」今日の渡辺家の婚約式で起こったことを、千鶴は当然聞いていた。「もう遅いから、お風呂に入って寝ましょう。おばあちゃんが後で、絵本読んであげるわ」大智はしぶしぶうなずき、執事に連れられて二階へ上がった。天音は寝心地が悪くて体勢を変えようとし目が覚め、車の後部座席で寝てしまっていたことに気づいた。まだ、本家の門の前にいた。彼女は車から降り、あまりに疲れていたので、今夜はここに泊まろうと思い屋敷に入った。アーチ形の門を抜け、奥へ進むと、リビングで蓮司と千鶴が話しているのが見えた。千鶴は座っていて、蓮
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