「ち、違います、警官の方。加藤さんはうちの旦那様の元妻なんです。体調が悪そうだったので、病院に連れてきただけなんです」ボディガードのリーダーが慌てて説明した。「詳しい話は署で聞きましょう」警察は厳しい口調で言った。要の配下である特殊部隊の隊員たちが、ボディガードを押し退け、病室のドアを開けた。ベッドに横たわる天音は、ドアが開く音に気づき、青ざめた顔に恐怖の色を浮かべた。しかし、要の穏やかな目元が視界に入ると、張り詰めていた神経は完全に解きほぐされ、次の瞬間には彼の腕の中に抱きしめられていた。蓮司はドアの外に立ち、開け放たれたドアから、天音が要の腕の中で泣き崩れる様子を見ていた。まるで何年も前、彼女が怯えた様子で自分を見つめ、助けを求めるように泣きじゃくっていた時のようだ。蓮司の胸は締め付けられるように痛んだ。かつて自分を愛してくれた天音を、自分の手で失ってしまった。そんな思いが頭をよぎった。……病室のドアが閉まり、天音はしばらく要の腕の中で震えていたが、ようやく落ち着きを取り戻した。血が滲むほど強く握りしめていた手を布団で隠そうとした、その時、要に手を握られた。「どうしたんだ?」要はゆっくりと天音の手から包帯を外した。白い肌に赤い傷跡が生々しく、要の気分も重くなった。そして、新しい包帯を巻き直した。「蓮司に連れ去られて、検査をさせられたの」「君の体を心配し、でも、やり方が間違っていたということか?」要は、天音を怖がらせないよう、穏やかに言った。天音は首を横に振り、苦しそうに言った。「心配なんかじゃない。ただの独占欲よ」要は天音の背中に手を当て、優しく撫でながら尋ねた。「他に何かされたか?」天音の体には、蓮司の愛用する木の香りがかすかに残っていた。蓮司に抱きしめられた。天音は首を横に振った。「蓮司のことは、もう話したくないの」要の手が、天音の背中で止まった。気にしないわけがない。気にしないことなんてできない。これは、自分が生涯を共にすると決めた女性なのだ。しかし、天音の目には、自分は部下思いの優しい上司、それ以上には映っていない。「検査の結果は?入り口にいた医者のところにあるのか?」要はさらに尋ねた。「多分」天音は少し考えてから言った。「隊長、山本先生と彼の奥さんにはお世話
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