暁は思わず口を挟んだ。「隊長にはもう婚約者がいますが……」要は暁の言葉を制止せず、淡々とした表情で大輝を見ていた。暁の言葉は、そのまま要の意思だった。大輝は再び口を開いた。「菖蒲は胸を負傷した。完治しても傷跡が残るだろう。あんなところに傷があっては、誰とも結婚できないじゃないか?菖蒲は、あなたに心を捧げているんだ。あの時、二人は確かに関係を持った。菖蒲はずっと俺に、あなたに伝えるなと言っていた。あの時、彼女は妊娠したんだ。妊娠に気づいた時には、大出血を起こしていた。子宮外妊娠で、もう少しで母子ともに命を落とすところだった。どれだけ危険だったか、分かるか?」暁は驚いて要を見た。要は相変わらず冷静で、何の反応も見せない。何を考えているのか分からないので、暁は口をつぐんだ。「菖蒲はそう言ったのか?」要の声に冷たさが混じる。「なんだ?認めたくないのか?菖蒲は一筋だ。あなた以外に男はいない。あなたの体面を考えて、ずっと黙っていたんだ。もし大出血を起こしていなかったら、あの時あなたが彼女に……手を出していたことすら気づかなかった!」大輝は自分が正しいと確信し、少し声を張り上げた。「この結婚、認めたくないと言っても認めざるを得ないぞ!俺は遠藤家のことを考えているんだ。ご両親は体面を何よりも大切にしている。あなただって、自分のせいで遠藤家の名前に傷をつけたくはないだろう?」大輝は、要から発せられる冷たいオーラに気づき、再び穏やかな口調になった。「菖蒲は俺が育て上げたお嬢様だ。遠藤家の顔に恥じない。それに松田家はあなたの出世を後押しできる」要は何も言わず、淡々と口を開いた。「明日、また菖蒲を見舞いに来る」要にわずかな不満の色が見て取れたため、大輝は理解していた。これ以上、恩を盾に無理やり報いさせようとする行為は危険だ。「要、菖蒲は優しく控えめで、度量も広い。結婚すれば、あなたを束縛したりはしない。もしどうしても加藤さんが諦めきれなければ、いずれ……」しかし大輝は、自分の言葉一つ一つが、要の逆鱗に触れていることに気づいていなかった。要はめったに怒らないし、怒るようなこともなかった。しかし、その瞬間、稲妻のような視線が大輝に向けられた。瞳の色は相変わらず薄く、先ほどと何も変わっていないように見える
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