菖蒲は涙を流し続けながら、心の奥底で激しい怒りが燃え上がっていた。どうして天音は要と結婚できるっていうのに、自分はこんな男にこんな目に遭わなきゃいけないの?菖蒲は、悔しくてたまらなかった。あと5日もしないうちに、二人の結婚式がある。結婚式の当日、この手で天音を地獄の底に突き落としてやる。……大輝は保釈され、集中治療室から一般病棟へと移された。手錠を外されたのも束の間、海翔の証言により再び手錠をかけられ、ベッドの柵につながれた。和也の部下たちは全ての手続きを終え、病室を後にした。要が病室に入ってきた。要の顔を見るなり、大輝の冷たい瞳は怒りに燃え上がった。だが、要に食ってかかることはできなかった。「道明寺部長はあなたの同期で、例の先生の愛弟子の一人だ」大輝は冷たく言った。「いずれあなたの席を奪ってやるだろう」要はソファに座り、影に身を隠していた。それを見た大輝は、なぜか背筋が凍るような気がして、落ち着かずにベッドからずり落ちそうになった。幼い頃から一緒に育ってきた要は、昔から厄介な奴ではあったが、ここまで威圧感のある男ではなかった。なのに、今は、見つめられるだけで恐怖を感じる。「なぜ俺があの時、菖蒲との婚約を破棄したのは、天音のせいだって分かったんだ?」監視カメラの映像を見て、要は大輝が天音にしたこと、そして言った言葉を全て知っていた。その言葉を聞いて、大輝は一瞬ひるんだ後、冷たく笑った。「なんだ、怖いのか?そっちが思っているほど、俺は無能ではない。白樫市に行って帰ってきてすぐにうちの妹との婚約を破棄しようとしたからには、何か理由があるはずだと思って調べた。その時に、接触した人物の中に、あの女がいたんだ。今回再会して、あの女のために婚約破棄した可能性が高いって確信した。人妻に13年間も執着し、ついに手に入れたか。あなたこそ、人の夫婦仲を壊した張本人だ!風間が知ったら、大変なことになるだろうな!」大輝の言葉には、かすかな脅しの響きがあった。「そういうことか」要の声は淡々としていた。落ち着き払った声で話し終えると、要は立ち上がり、大輝の方に歩み寄ってきた。大輝は反射的に後ずさりした。要の冷酷な一面を、この目で見ていたからだ。「何をする気だ?」その言葉が終わると同時に、特殊
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