要は外に向かって声をかけた。「遠藤家から蛍の服を一式持ってきてください」外にいた木村家の使用人は、すぐに返事をした。要はそう指示しながらも、手を止めず、ショールの中に手を差し込んで天音の胸の横にあるボタンを外そうとしていた。彼は慣れていない上に、見えないので、ただ感触だけを頼りにしていた。天音は要に咎められ、しょんぼりしてしまった。要は今まで一度も自分に怒ったことがなかったからだ。自分は撫子と同じくらい細身だと思っていた。でも要がそこに座っているだけで、とても緊張してしまい、早く着替えを終えたいと焦っていたのだ。要は、天音が今にも泣き出しそうにしょげているのを見た。なんて甘えん坊なんだ、と要は思った。まるで熱い鉄板の上に立たされているような気分だった。要はぐっと目を閉じ、高鳴る気持ちを抑えようとした。仕方なく、天音の胸元のショールを少しだけ緩めて、脇のボタンを外した。すると、その雪のように白い肌があらわになった。要は慌ててショールで彼女の肌を覆った。その時突然、ガチャリと音を立てて部屋のドアが開けられた。要は、とっさに天音を抱きしめ、ドアの方を睨みつけた。その冷たい眼差しは、人を殺さんばかりの鋭さだった。入ってきた蛍は、その視線に一瞬で怯んでしまった。冷たい眼差しだけではなかった。「なぜノックもせずに入ってくる。出て行け」要は怒りがこもった声で言った。蛍はびくっとして、慌てて背を向けた。でも、何が何だかわからなかった。「だって、服を持ってきてって言ったじゃない?お兄さん、私に見られたら困ることでもあるの?別にお兄さんは脱いでるわけでもないし、天音さんがちょっと肌見せしてるだけでしょう?それに、私と天音さんはどっちも女なのよ?」蛍の悔しそうな声を聞いて、天音は自分が要の腕の中にいることにようやく気づいた。天音は要の胸に手をついて、押し返そうとした。見上げると、ちょうど要と視線がぶつかった。要の眼差しは少しも優しくなく、さらに天音を強く抱きしめた。「服を置いて出て行け」要は蛍にそう言った。蛍は二着の服をテーブルに置くと、「お兄さん、めっちゃ怖い」と呟きながら部屋を出て行った。そして、ドアが閉められた。要は天音をソファに座らせ、彼女の頭を優しく撫でた
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