天音は要を引っ張ろうとして逆に勢い余って、彼の胸に倒れ込んだ。要の胸に倒れ込んだ天音は、すぐに要に抱きしめられた。でも、要は目を覚まさなかった。ただ無意識に、天音を腕に抱きしめただけのようだった。お酒の匂いも、香水の匂いもしない。代わりに、ほのかに墨の香りがした。彼の温もりは、薄いシャツ越しにも伝わってくる。鍛え抜かれた体躯、彼特有の匂いが、天音の意識を海辺での情熱的なキスへと引き戻した。あの時、彼は何度も唇を重ねてきた。顔がぽっと赤くなり、すらりとした首筋までほんのり染まっていった。はっと我に返ると、そっと要の腕から抜け出した。すやすやと眠るその寝顔をどうすることもできず、想花が使っていた小さな毛布を彼にかけてあげた。「重すぎる。もう、こうするしかないわね」と天音はつぶやいた。まるで、ベッドで寝かせてあげられないことへの言い訳みたいだった。要のそばに座り込んで、しばらくその顔を眺めていた。そして、少しむっとしたように呟いた。「なんでこんなに重いのよ?なんで酔っぱらうまで飲むの?なんで私が面倒見なきゃいけないのよ?」しばらくぶつぶつ文句を言っていたけど、結局は要を支え起こした。ソファで寝たら、明日きっと体が痛くなるだろうと思ったからだ。ここに残るために、要がどんなに必死で我慢していたか、天音は知るよしもなかった。要らしくもなく、駄々をこねていた。今度は、要もようやく体を動かした。天音は、まるで要の杖代わりだった。彼に体を預けられ、腕を回されて支えている。しかし、想花ベッドに、要がどうやって収まるというの?天音は、よろめきながら要を自分の寝室まで連れて行った。でも天音は華奢すぎて、要の体を長くは支えられなかった。ベッドのそばまで来たところで、力尽きて倒れ込んでしまった。要はさっと腕を伸ばして天音を抱きしめ、二人で大きなベッドへと倒れ込んだ。天音が驚いて要を見ると、要も彼女のことを見ていた。要の大きな手が天音の細い腰に回り、もう片方の手で天音の後頭部を支えている。そして、穏やかな瞳で、じっと天音を見つめていた。要に抱きしめられたまま、驚きのあまり、天音の頭の中が真っ白になった。視線が絡み、互いの息遣いが感じられる。甘い雰囲気が二人の間に広がっていく。天音が要を押しのけ
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