「もし撮影がうまくいけば、野外でのボランティア活動に加藤さんのお力を借りる必要はなくなります」と暁が続ける。天音は窓の外を見つめ、しばらく黙り込んでいた。暁が天音に断られるだろうと思った頃、「わかりました」という声が聞こえた。天音は要と話し合いたいことがあった。想花が要と頻繁に会うこと、そして要が自分たちの生活に度々現れるのは望ましくない、と。そして、共同親権を取り戻したいと思っていた。要と過ごす時間が長くなるほど、自分だけでなく、想花もますます彼から離れられなくなっていることに気づいた。要はいつも、想花が何を欲しがっているか分かっている。……パパとママと一緒にお出かけできるとあって、想花はとても楽しそうにしていた。海岸沿いを車が走っている間、想花は要の腕の中でキョロキョロと周りを見渡していた。時には、彼の膝から降りて、天音の膝の上に座ったりもした。二人が交代で抱き合うと、時折お互いの顔が触れ合うほど近づいてしまう。要は、天音が眉をひそめているのに気づくと、想花を由理恵に預けた。「もうすぐ着くから、ちゃんと座って」想花は要の言うことをよく聞き、チャイルドシートに素直に座った。小さいながらも生意気な口をきくこともあるが、要にだけは口答えをしない。天音はほっと一息ついたが、不意に要と視線がぶつかった。要がまっすぐ見つめてくるので、天音は窓の外へと顔をそむけた。千葉家に車が到着した頃、想花は車の中ではしゃぎすぎたせいで眠ってしまっていた。由理恵が想花を休ませに連れて行くと、天音もその場を離れようとした時、誰かに呼び止められた。「奥様」天音が視線を向けると、光希のそばに立っていたのは結婚式の時の司会者である智子だった。智子だけではない。いわゆる「身内だけの食事会」には、見知らぬ顔が、それも綺麗な女性ばかりだった。彼女たちは華やかに着飾り、要の周りを囲み、天音の存在を完全に無視していた。天音は要の隣に座り、女性たちの甘ったるい話し声を聞いていると、イライラしてきた。これは一体、身内だけの食事会なのか、それともお見合いパーティーなのだろうか?ここに来たのは要と話をするためだったのに、これでは話しかける隙もない。天音が立ち上がって行こうとすると、要が彼女の腰を抱き寄せた。要は天
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