天音はきつく眉をひそめ、反対したかった。千鶴が続けて口を開いた。「写真を何枚か撮るだけで、紗也香の助けになるの。天音、話してみて。今、外では紗也香のことを厄介者とか、東雲グループが権力を振りかざしているとか言われているのよ」紗也香の今の状況を思い出し、天音は思いとどまった。天音が階段を上がると、紗也香が待っていた。「由美が使用人たちから、勇気が捕まったことを聞いたみたい、ずっと泣きじゃくってるの」「私、見てくる」天音は紗也香と一緒に由美の部屋へ行き、由美をそっと抱きしめた。胸が締めつけられる思いだった。「おばさん、けがしたのはパパにやられたの?みんなが言ってたよ。パパは悪い人で、おばさんを傷つけたって。おじさんが私とママを追い出すって。おばさん、パパはいい人だよね?みんな嘘をついてるんだよね?」幼い顔が不安に曇り、純粋な瞳で天音を見つめていた。もし天音の娘が生きていれば、今の由美と同じ年頃だった。天音は由美を傷つけることがどうしても忍びなかった。「由美、あなたのパパが私のこと傷つけたんじゃないよ。自分でうっかり転んでしまっただけ」「じゃあ、私とママ、ここにいてもいいの?」由美はあどけなく聞いた。「もちろんいいよ。ここも由美とママの家だから」天音は由美の頬をやさしく撫でた。「ありがとう、おばさん」由美は天音の頬にキスをした。「じゃあ、パパに言うね。しばらくここで暮らしてから帰るって。でも、パパの電話がなんでずっと繋がらないのかな……」由美がぶつぶつ言いながら娯楽室へ歩いていき、大智と一緒にアニメを見始めた。天音の胸には言いようのない悲しみがあふれてきた。親が不仲になると、傷つくのはいつも子どもだ。自分もその一人だった。天音は紗也香の手を握った。「近いうちに、一緒に弁護士事務所へ行こう。私と蓮司が結婚したとき、蓮司は自分の株を私に譲ってくれたの。それを、あなたに譲りたいの」紗也香はあまりの驚きに呆然としていた。その顔を見て、天音は少し笑って娯楽室へと向かった。天音は大智ともっと一緒に過ごしたいと思った。残された時間は、あと二十五日しかなかった。法事の日、紗也香はためらうことなく、薬を入れた水を蓮司に手渡した。すべてが順調に進むように。昨夜、天音から株の譲渡を提案さ
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