裕也も微笑み、部屋を出て行く。天音は窓辺まで移動した。不安に胸を締めつけられる。まるで、いろんなことが自分の手に負えなくなっていくようで。そして、自分自身さえも思うように動かなくなっていく気がした。「あなた、いつごろ着くの?」天音は、緊張を隠せない声で、小声で尋ねた。要は腕時計に目をやる。「二時間後かな」「もっと早く来れない?」「どうした?」「ううん……ただ、早く来てほしくて」天音は手のひらに冷たい汗をかいていた。プレッシャーで押しつぶされそうだった。「おじさんとおばさんが、あなたのかわりに来賓の方々をもてなせって」要が車の窓から手を伸ばす。すると、車列はゆっくりと路肩に停車した。要のまなざしは静かに澄んでいた。そして、その端正で涼やかな顔立ちは、真昼の陽ざしの中でふと止まった。その漆黒な瞳は太陽の光を反射し、虹色にきらめき、潮風が白いシャツを優しく揺らす。要は、天音を驚かせないよう、ゆっくりと落ち着いた声で語りかけた。もっと踏み込んで、天音の心をしっかりと掴みたい。「天音、君は俺のかわりに来賓の方々をもてなすんじゃない。彼らは俺と君のお客さんなんだ。それに、俺のこれからの人生は、君の人生でもあるんだよ。天音、俺と一緒に新しい人生を始めよう」要は、王冠を両手で天音に捧げたいと思っていた。そして天音に、その王冠をかぶるのにふさわしい人であってほしいと願っていた。天音は決して、自分の付属品などではない。自らの手で少しずつ水をやってきたチューリップは、やがて美しく咲き誇るだろう。天音は、下にいる大勢の人々を見下ろしながら言った。「新しい人生って……あなたと結婚して、あなたの妻になること?」要は十数年間も計画を練り、天音のことを十数年間ずっと知ろうとしてきた。天音が生涯をかけて追い求めてきたのは、すべての人を守るためにDLテクノロジーの防御システムを完成させること。「違う。俺は君と一緒に全ての人を守りたいんだ」要は静かに言った。「共に来てくれるか?」天音は胸を押さえ、涙をこぼした。「うん。もちろんよ、要」要は電話を切った。口元が緩むのを抑えきれない。隣で、大地が退屈そうに車のドアに寄りかかっていた。「ずいぶんと回りくどい言い方だな。自分で言ってて訳わかんなくなったりしない
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