要の体が一瞬こわばったのを感じ、天音は彼を突き放した。すると要はすぐに天音の上から体を起こした。天音は布団を引き寄せて体に巻きつけた。ネグリジェはひどく乱れていた。「暁!」要の声は、天音が今まで聞いたことのないような、怒りと、そしてまだ消えやらぬ情事の熱を帯びた響きだった。暁は寝室に入ってくると、状況を察して要の服を着せる手伝いをした。天音は布団を抱きしめたまま、体を起こして要を見つめていた。要の体からは冷たいオーラが放たれている。黒いシャツは、その無表情な顔をさらに冷酷に見せていた。瞳に燃え盛るのはもはや欲望ではなく、激しい怒りの炎だった。暁に身支度を整えてもらった要は、ベッドのそばまで歩み寄った。そして大きな手で天音の小さな顔を包み込むと、深く複雑な眼差しで言った。「先に休んでろ。俺は様子を見てくる」「うん」天音はか細い声で答えた。要が去っていく背中を、天音は見つめた。彼の黒いシャツには、ぬらりとした光沢があった。あれは血の痕だった。さっき、自分を求めようとした時、要は動くことさえできなかったのに。それなのに、椿が攫われたと聞いた途端、傷口が開くのも構わずに立ち上がったのだ。天音は広いベッドに横たわった。頭の中はぐちゃぐちゃで、英樹と蓮司の言葉が何度も繰り返される。要が自分と結婚し、そばに縛り付けているのは、自分が叢雲だから。ミサイルの軌道を変えることができる。そして、今の自分はミサイルの着弾を遅らせるだけじゃない。もっと……天音は力なく笑った。涙が目尻からこぼれ、枕に染みを作った。ベッドのそばに小さな影が現れ、柔らかい小さな手がシーツを掴んでベッドに這い上がってきた。想花は、ピンクのうさぎのぬいぐるみを抱きしめ、可愛らしい恐竜のパジャマを着ていた。もうお風呂は済ませたようだ。「ママ……」想花は天音が泣いているのを見て、心配そうに彼女の胸に飛び込んだ。天音は涙を拭い、想花をぎゅっと抱きしめた。「どうしてまだ寝てないの?」天音はしゃがれた声でそう言うと、想花の小さな鼻を優しくつついた。「ママと一緒に寝たいの」想花は甘えるように言うと、天音の頬にちゅっとキスをした。「いいわよ」天音は、想花の柔らかくていい匂いのする頬に自分の顔をすり寄せた。天音はゆっくりと目を閉じた。
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