Semua Bab 妊娠中に一緒にいた彼が、彼女を失って狂った話。: Bab 591 - Bab 600

776 Bab

第591話

裕也夫妻の言葉から、椿は二人が天音を快く思っていないのだと察し、ますます甲斐甲斐しく振る舞う。「大丈夫です。今すぐ隊長の傷を診せていただきます……しっかり縫っておきますので、加藤さんが隊長に少々手荒なことをしても、傷口が開くことはありません」と、椿はそっと言った。昨日の庁舎で、天音は要を突き飛ばしていた。あの様子だと、普段からかなり要を振り回しているのだろう。その言葉を聞いて、玲奈と裕也の顔つきは、案の定、みるみる険しくなっていった。二人は、椿が菖蒲よりも一枚上手だと気づいた。よく聞かなければ、椿が天音を皮肉っていることには気づかないだろう。だが、椿は天音と要の関係を全く理解していなかった。天音が、少々手荒なことをしてくれる程度なら、まだマシだった。一番怖いのは、黙ってどこかへ行ってしまうことだ。しかし椿には、裕也夫妻が天音に一層不満を募らせているように見えた。その時、想花が寝室から走り出てきた。すぐに誰かの手を引いて戻ってくる。「パパ、男の先生……」想花の綺麗なアーモンド形の瞳は、天音と瓜二つだった。悲しい時には漆黒な瞳が憂いを帯びた光を放ち、まるで壊れた人形のようだった。想花は要のそばに行くと、彼の足に抱きついて見上げた。「パパ、男の先生に診てもらって。女の先生は嫌」想花は要の足に小さな顔をすりつけて、とても悲しそうな様子だった。さっきの位置から見たら、この女の人がパパにキスしたように見えたのだ。ママが知ったら、きっと怒るだろう。要は想花の小さな頭を撫でた。心は和んでいた。「わかったよ」「それじゃあ、俺たちは外に出ましょう」裕也は想花を抱き上げ、二人に言った。「でも加藤さんは……」椿は、まだその場を離れたくなかった。その時、彩子が口を挟んだ。「平野先生、これは若奥様から平野先生にお渡しするようにと預かったレシピです。うちの若様は怪我をされてからまだ何も召し上がっていません。キッチンへ行って、何かお食事の準備をお願いできますでしょうか。若様がお好きなものですので、平野先生、よろしくお願いします」椿はそれを受け取ると、様々な料理のレシピが書かれていて、愕然とした。要はそれをちらりと見て、思わず笑い出しそうになった。「平野先生、お願いするぞ」全部、天音の好きな料理じゃないか。
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第592話

天音は暗い表情で一歩後ずさると、「違います」と言った。「聞こえたか?お前を助けに来たんじゃない」大地は声を張り上げ、天音に近づこうとする英樹を制した。「勘違いするなよ。俺たちはスナイパーを捜しに来たんだ……」その言葉が終わるや否や、特殊部隊の隊員たちが階段を駆け下りてきた。「逃げてください!爆弾です!」大地はとっさに天音の手を引こうとしたが、一足先に英樹が天音に覆いかぶさった。二階から爆発音が響き渡り、階段の近くにいた特殊部隊の隊員は爆風に巻き込まれて吹き飛ばされた。爆発音で天音は耳鳴りがし、身を丸めた瞬間、瓦礫や砂埃が顔に降りかかった……天音の手首を、英樹が強く掴んでいた。英樹は天音を抱き起こすと、外へ向かって走り出した。大地も急いで、吹き飛ばされた数人の隊員たちを連れて窓から脱出した。ドカン。その瞬間、別荘が再び爆発した。連続した爆発で、別荘は完全に破壊された。英樹は天音を庇いながら、芝生の上に倒れ込んだ。あたりは煙に包まれた。衝撃から立ち直れない天音は、胸を押さえた。顔からすっかり血の気が引いていた。英樹に支えられて立ち上がった天音は、すぐに大地によって背後へと引き寄せられた。大地は天音から手を放すと、英樹の手を払い除けた。三人はその場に立ち尽くし、煙が晴れるのを待っていた。一瞬、天音は全身がこわばり、耐え難いほどの心臓の痛みに襲われた。しかし、痛みはすぐに引いていった。天音は虚ろな目で、防護服を着た隊員たちが瓦礫の山と化した別荘へと入っていき、一体の遺体を掘り出すのを見つめていた。「木下部長の秘書?この人の仕業だったのですか?」遺体の損傷は激しかったが、辛うじて判別できる半分の顔が、洋介の秘書の身元を示していた。「こいつが木下部長のためにスナイパーを雇い、英樹を拉致し、あなたを狙った……そう考えれば、辻褄が合う」大地は分析した。「あなたたちさえいなければ、木下部長は死ななかったんだからな」その言葉を聞いた英樹は天音を一瞥すると、遺体を一蹴りして鼻で笑った。「よくも、ここまで忠実にな」その時、天音は暁からの電話を受けた。「スナイパーを捕まえました。黒幕は木下部長の秘書だと自白しました」これで、一件落着のように思われた。それでも、天音の胸騒ぎは
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第593話

英樹は、大地が自分の妹に少しも敬意を払わないのを見て、食ってかかった。「要が本当に誠実な男なら、美女十人掛かっても落とせないだろうが、そうでないなら、ちょっと押せば落ちるんじゃないか……それに、お前……うちの妹は俺より頭がいいんだ。お前の携帯ぐらい、あっという間に使えなくできるぞ……ぶつぶつ文句言うのはやめろ……」二人が口論している間に、天音はすでに車に乗り込み、アクセルを思い切り踏んで走り去った。「おい……」「天音!待ってくれよ!」二人はテールランプに向かって叫んだがどうにもならず、特殊部隊の隊員の車に乗って追いかけるしかなかった。「見ろよ、うちの妹は運転もうまいだろ」助手席の英樹が、自慢げに言った。運転席の大地が言った。「彼女は、お前のことを認めてるのか?」英樹は海岸沿いの道の風を受けながら、空に浮かぶ満月を見上げた。恵梨香の面影が月の中にぼんやりと浮かんでいるように見えた。再びその言葉を聞いても、昨晩のような落ち込みはなかった。英樹は割れた眼鏡を外し、窓の外へ放り投げた。「いつかきっと、天音も俺を認めてくれるさ。それにしても、要はなんで銃で撃たれたんだ?」「お前の妹を助けるためだろ」「なかなかやるじゃないか」……天音は息を切らして別荘に戻り、寝室のドアを開けた。すると要は休んでおらず、白いタキシードを着ていた。すっきりとした短髪を後ろになでつけ、その姿はまるでおとぎ話の王子様のようだった。ただ、その端正な顔にはまったく血の気がなかった。要が立ち上がろうとするのを見て、天音は慌てて駆け寄った。「要、私はもうあなたの妻よ。結婚式を挙げるかどうかなんて、そんなに重要なことじゃないわ」要は大きな手でソファの背もたれを押し、苦しそうに、それでもなんとか立ち上がった。要の顔が青ざめているのを見て、天音は心配になって彼を支えようとした。しかし、両手は要に掴まれてしまった。要は上から、汚れだらけの天音を見下ろした。怪我をしているせいか、彼の雰囲気はいつもより柔らかく、めったに見せない優しさで満ちていた。そして、静かだが真剣な声で言った。「天音。君は俺にとって、とても大切なんだ。俺の隣に立つ人間が、君だということを、みんなに知ってほしい。みんなに、俺と同じように君を大切してほ
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第594話

力を入れると要を傷つけてしまいそうで、天音は彼に身を任せるしかなかった。椿の手からスープの入った食器が滑り落ちて床に叩きつけられた。椿は、要が天音を抱きしめ、情熱的にキスをしている光景を、愕然と見つめていた。全身泥だらけで、髪にも草や土が絡まっている天音は、まるで泥の中から這い出てきたようだった。タキシードを着こなし、上品な雰囲気の要とは、まるで別世界の人間のようだった。椿は力任せにドアを押し開けた。またしても「バン!」という大きな音が響く。要は天音を解放すると、ぎゅっと胸に抱きしめた。天音の頭に顔をうずめ、胸の起伏を感じながら自分の息を整える。数分後、天音の顔の赤みが引いたのを確認してから、ようやく体を離し、椿に視線を向けた。「平野先生、料理はこれだけか?」床に割れた食器を見て、要は眉をひそめた。椿の顔は真っ青になったが、逆らうことはできなかった。「ごめんなさい、隊長。手が滑ってしまって。まだあるので、すぐに持ってくるわ」椿は背を向けてその場を去ったが、廊下に立つと、要と天音がふざけあっている声が聞こえてきた。「どうして平野先生にあんな意地悪するの?」「可哀想だと思ったの?」「食べ物がもったいないと思っただけよ」「だって彼女は……」「何?」「彼女が、あなたのこと、狙ってる。それに、あなたに対してなれなれしいし……」「うちの天音、いつからそんなに賢くなったんだ?」「私、馬鹿じゃないもん……」「へえ……」「要……ちょっと、要……」この前、一緒に買い物に行った時、ある女性が要の袖に触れただけで、要はそのスーツを捨ててしまった。なのに椿は、何度も要の胸に倒れ込んできた。さっきだって、要の肩に手を置いていた。どうして椿に甘い顔をするの?でも、彼女はそれを聞くことができなかった。要を少しも信頼していない、器の小さい女だと思われてしまいそうだったから。もっと大人になりたいのに、どうしても腹が立ってしまう。だから、椿に意地悪をしてしまった。要に妻がいるって分かっているくせに、ずっと彼に近づこうとするから。要は……椿のこと、好きなわけじゃないのに。怒りで頬を膨らませる天音を見て、要は優しい声で言った。「平野先生はただの友人だ。少し時間をくれれば、きっと分かってくれる」
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第595話

天音は、憂いを帯びた瞳で椿の携帯に手を伸ばし、静かにそれを奪い取った。椿は、天音がはっきり見たいだけだと思い、止めなかった。しかし天音は携帯を振り上げると、そのまま近くの茂みに投げ捨てた。「何するんですか!」椿が声を上げたが、天音は彼女を冷たく見つめた。「誰も、私が要と結婚するのを邪魔なんてできません。あなたも、もう諦めてください」天音は椿の驚きにも目もくれず、ドレスの裾を持ち上げて、バージンロードの先へと大股で歩き出した。天音の視線の先で、要の凛々しい顔がどんどん大きくなっていく。要は優しい眼差しで、微笑みを浮かべていた。彼は嬉しい時だけ、こんな顔をする。でも、こんなに喜ぶことはめったにない。想花は由理恵に抱かれながら、空に舞い上がる色とりどりのピンクの風船を、目を輝かせて見ていた。そして、音楽に合わせて小さな手を叩き、にこにこと笑っていた。要は、自分の娘を育ててくれた。母の仇も討ってくれた。そして自分の命すら投げ出そうとした……あの瞬間、要は一瞬の迷いもなく、自分をかばって銃弾を受けてくれたんだ。要が自分を愛しているのかどうかは、分からない。でも、命さえも自分に差し出してくれる。そんな要を、どうして裏切れるだろうか。要が望むことなら、何でもしてあげたいと思った。そして要が望んだのは、ただ一つ。自分が、彼と結婚することだけだった。椿が自分の病気を使って結婚を諦めさせようとしたということは、要にとって、彼女は取るに足らない存在だということだ。あんなに心配していたのに。まったく、杞憂だった。天音が要の前まで来ると、彼に手をそっと押さえられた。「緊張しないで。リラックスして」ドレスの裾を持ち上げすぎて、細くて白い両足が見えてしまっていた。大勢の人が見ているのに、と要は少し不快に思った。そこで天音は、自分が緊張していたことにようやく気づいた。震える手でドレスの裾を放すと、その手は要に優しく取られ、彼の掌の中に包まれた。要の手のひらは温かくて乾いていた。そして、穏やかな笑みを浮かべていた。白いベールの向こうで、要の姿がだんだんと霞んで見えた。天音は目に浮かんだ涙をぐっとこらえた。そして、立会人の祝辞を聞き、神父の宣言に耳を傾けた。天音の右手が取られ、ダイヤモン
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第596話

「妹?」椿は驚いた。「そうだ!俺は天音の兄だ!」「なんて根性悪い女だ。俺の妹が三年も生きられないなんて、よくもそんなこと言えるな。お前なんかが、天音から男を奪おうなんて百年早いんだよ……要だってお前みたいな女をそばに置くなんて、ろくなもんじゃない!」こんなふうに責められて、椿の顔は真っ青になった。「あなたには関係ない!携帯を返しなさい!」英樹はそのメールを自分の携帯に転送すると、椿の携帯を海に向かって投げ捨てた。「何するのよ!携帯には大事な情報がたくさん入ってるのよ!」椿は英樹を突き飛ばし、海の方へと走り出した。英樹は、海に飛び込んで必死にもがく椿の姿を、冷たい目で見つめていた。天音は、本当にあと三年しか生きられないのか?どうすればいい?英樹は自分の胸を押さえた。この心臓も、洋介と松田家が金と権力で手に入れたものだ。英樹自身が、心の底から憎んでいる心臓だった。だが今、一瞬だけ、もし雲霧山の科学研究所がまだあったらと思ってしまった。そうすれば、妹も新しい心臓を手に入れられるかもしれない。自分の考えにぞっとして、それ以上考えるのをやめた。英樹は、少し離れた場所にいる要と天音を見つめた。天音が死ぬのを黙って見ていることなんてできない。でも今は、ただ天音のために喜んであげたかった。結婚は、やっぱり喜ばしいことのはずだから。それに要は、自分の知る中で最も優れた男だ。要が本気で天音を愛してくれているなら、なおいい。要なら、世界中から合法的に天音に合う心臓を、見つけ出すことだってできるはずだ。そう考えると、英樹の心は少しだけ軽くなった。その次の瞬間、蓮司の漆黒な瞳と視線がぶつかった。蓮司は深い悲しみをたたえた目で英樹を見ると、言った。「カルテを見せろ!」天音が、あと三年しか生きられないなんて信じたくなかった。「なんで?」英樹は立ち去ろうとした。蓮司が力ずくで引き止めると、二人は殴り合いになった。携帯を見つけて戻ってきた椿は、二人が殴り合っているのを見た。椿が現れたことに気づくと、二人はピタッと動きを止めた。蓮司が椿の手首を掴み、外へ引きずり出そうとした。英樹も椿のもう片方の腕を掴んだ。「風間、元旦那のあなたがなんでここにいるんだ?」「お前こそ!認めら
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第597話

龍一は夏美の手を振りほどいた。夏美の落ち込んだ眼差しに、龍一は沈んだ声で言った。「すまない、夏美。俺は深く傷ついた。心の傷だ。傷が癒えるまでは、人は心が弱るんだ。少しでも優しさに触れると、もっと欲しくなってしまうんだ。それは、君にとって不誠実だ」龍一が別の女のために心を痛めているのを見て、夏美の胸はさらに締め付けられた。「あなたも言ったじゃない。今は心が弱っているって。もし私が身を引いたら、きっと他の女がその隙につけこんでくるわ」夏美は冷静にはっきりと告げた。「他の女にそんなチャンスはあげたくないの。それに、自分が後悔するのも嫌だから。教授……」夏美は一歩前に出て、二人の距離を縮めた。「試してみない?私たち、新しい共通の話題ができるわ……」夏美は龍一の腕に絡みつき、ステージの方へ彼を引っ張った。「次は私たちの番よ。新郎新婦と写真を撮るの。私たちと直樹くんも一緒に」夏美が最も尊敬していたのは叢雲だった。その叢雲がまさか女性だったなんて、夏美の心はさらに高鳴った。どんな分野でも、例外なく男性がトップの座を占めてきた。でも、女性たちも後を追うように努力して、得るべき栄光を勝ち取ってきた。例えば睦月のように。そして夏美自身も、コンピューターの世界で輝く新星になって、後から続く女性たちの道を照らす存在になるのだと思っていた。でも、とっくの昔に道を切り拓いた人がいたなんて。夏美は天音を見つめた。どうしても、天音の姿がトップクラスのハッカーと重ならなかった。見た目は華奢で、おまけに性格も良さそうには見えない。わがままで、甘やかされていて、欲張り……でも、トップハッカーが必ずしも、ハゲて腹の出た中年男性だとか、男勝りの女だなんて、誰が決めたんだろう……天音みたいなタイプもいれば、自分みたいなタイプだっているはずだ。欲張り、という点については、今思うと少し恥ずかしくもあり、可笑しくもあった。天音は叢雲なんだ。世界で一番いい男に愛されて当然だ。ダークウェブには、ある伝説があった。発射されたミサイルをハッキングして、着弾を三秒遅らせたハッカーがいるという。誰もが、それは叢雲の仕業だろうと思っていた。もしそれが叢雲なら、数年経った今、さらに腕を上げているはずだ。ミサイルの軌道を操るだけじゃ済
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第598話

なぜ、あそこまで執着するんだ。だが、龍一に要の気持ちが分かるはずもなかった。龍一は一度も天音を手に入れたことがないのだ。一方、要は失っては取り戻すことを繰り返し、その度に不安に苛まれてきた。もう二度と失いたくなかったのだ。要は、すべてを完璧にやり遂げたかった。天音の心の中には、蓮司との辛い記憶も、美しい思い出も残っていた。後から現れた要には、その過去を埋め、そして超えなければならないものが多すぎた。蓮司と競っているのではない。ただひたすら、時間と戦っていたのだ。天音は……「もういいから、帰りましょう」天音は焦ったように言った。その時、立派な杖をついた老人がウォトソンを連れてやってきた。「遠藤隊長、奥様、おめでとうございます」「ルーク大使、お越しいただきありがとうございます」要は表情を変えずに言った。「今日はちょっとした騒ぎで、ご迷惑をおかけしました」「いやはや、遠藤隊長の部下は実に優秀ですね。迅速かつ的確な動き、たった2時間でスナイパーを見つけ、海城の平和を守ったとは……」銀髪の老人、ルークはそう言いながら、ちらりと天音に視線を向けた。ウォルターソンが付け加えた。「奥様を狙撃した犯人、そしてその黒幕を絶対に許してはなりませんよ」スナイパーが自分たちのことを吐くのではないかと心配していたのだろう。数時間様子を見て、何事もなさそうだと判断してから、ようやくのこのこと現れたのだ。まさか要が銃撃されたにもかかわらず、結婚式を予定通り挙行するとは思いもよらなかった。そして、天音が要にとってどれほど大切な存在なのかがよく分かる。要はその言葉にも表情を変えず、話題を逸らした。「大使は、いつご帰国されるのですか?」「もう少しこちらに滞在する予定でしてな、ちょうど、遠藤隊長の就任式にも出席できます。6日後でしたか?」「大使に式にご列席いただけるとは、うちの隊長も光栄です」暁は要がこれ以上話したくなさそうなのを見て、割って入った。「大使、食事の準備が整いました。こちらへどうぞ」ルークは去り際にぽつりと言った。「奥様、素晴らしい旦那様を選ばれましたね」天音は、ルークがどこの国の大使なのかも知らなかった。そもそも、要を取り巻く人々についてはほとんど何も知らないのだ。ただ大勢の人に挨拶し、お祝いの言葉を返
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第599話

暁は仕方なく、黒いシャツを要に着せた。要は自分でボタンを留めながら、周りの人たちの心配そうな顔を見て眉をひそめた。「本題に入ろうか?」暁は医師を下がらせ、要に立て続けに起こった事故について報告した。龍一の拉致、英樹が車にはねられて連れ去られた件、そして天音の銃撃事件だ。「証拠は全て、木下部長の秘書を指しています」「証拠だと?」要は暁を一瞥した。「それとも、口封じか?」「隊長、それはどういう意味ですか?」「スナイパーは?」「自殺しました」「木下部長の部下をもう一度洗い直せ。それから松田家も……」要はこの結果にひどく不満だった。暁は要の顔色をうかがい、急いで頷いた。その時、天音がドレスに着替えて出てきた。天音は真っ白なドレスをまとい、長い髪を後ろでまとめていた。薄化粧のその顔は、美しく、控えめながらも人を惹きつける魅力があった。天音は車椅子に座る要を見て、慌てて駆け寄った。「挨拶回りはやめにしない?」要は天音の柔らかく小さな手を握った。「だめだ。お父さんとお母さんが君にご祝儀を渡すのを待っている」天音は顔を曇らせ、目じりが赤くなっていた。もう、怒りが爆発する寸前だった。要は天音の手を優しく揉んだ。「少しだけだ」天音はようやく頷いた。階下に降り、宴会場へ向かった。流れに従い、天音は裕也と玲奈に挨拶をして呼び方を変えた。「お父さん、お母さん」二人はとても喜び、それぞれにご祝儀を渡した。「もう戻ってもいい?」と天音が尋ねた。「もう一つ、大事なことがあるんだ」要は隅の方へ手招きした。直樹はすぐに要の前に歩み出た。要は、会場全体に響き渡るような声で言った。「今日は、俺の大事な家族や友達が集まってくれてる。せっかくだから、みんなにも直樹のことを、知っておいてほしいんだ」暁は天音をちらりと見た。天音は龍一を助けるために一度は出て行ったが、無事に戻ってきた。しかし、天音が他人のためにここまでやるとは、隊長は気が気じゃないだろうな。そうでなければ、隊長が自分の結婚式でわざわざこんな話を持ち出すはずがない。直樹は龍一に視線を送った。龍一は一瞬ためらったが、やはり頷いた。龍一の合図を受け、直樹はさらに要との距離を詰めた。玲奈は隅に立ち、要が優しく直樹の頭を撫でて微笑むの
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第600話

「先は長いんだから、しっかり治してね」天音の小さな手は、要の手のひらに包まれ、彼の体の横でぎゅっと握られていた。天音は要の美しい瞳を見つめる。すると、その漆黒な瞳の中に、きらりと火花が散った。要との付き合いも長くなり、彼が何を求めているのか、天音には分かっていた。「新婚の夜だからな」要の声は囁くようで、天音の心の中で渦を巻いた。天音は仕方なく、彼がキスしやすいように寝返りを打ち、要と同じ枕に頭を乗せた。要は数秒間じっと天音を見つめた後、口を開いた。「天音、君からしてくれ。俺は動けない」「……」天音は要の唇にキスをした。唇が触れ合った瞬間、要は天音を自分の体の下に引き寄せた。天音は驚きに目を大きく見開き、両手で要の胸を押しとどめた。「大丈夫なの?むやみに動かないで!要!」要はなんとも言えない表情をしていた。背中はえぐられるように痛むのに、体の前では……天音は怖くて慌てていたが、要を突き飛ばすこともできない。「傷が開いちゃう!もうやめて……」「天音……」要は、天音の小さな顔に視線を落とした。天音は譲らなかった。「あなた、わかるよ。新婚の夜に素敵な思い出を作りたいんでしょ。でも今のあなたの状態じゃ、その思い出が悪夢に変わっちゃうかもしれない……」要は、そんな天音を憂いを帯びた瞳でただ見つめた。天音は、いっそ要の目を手で覆った。「あと数日、待ってくれないかな?明後日?明日?」要は体を支える力もなく、天音にぴったりと体を密着させていたので、天音は身動きがとれなかった。隙間なく、ぴったりと。要の体がこわばり、吐息が少しずつ深く沈んでいくのを感じる。すると天音の体は訳もなく火照りはじめ、男性の香りに包み込まれていった。天音の手から力が抜けた瞬間、要のキスがその唇に焼き付けられた。そして、低いかすれた声が響く。「今日がいい」彼がこんなに強引なことは滅多にない。しかし、今夜は絶対に譲らないという意思が感じられた。要は天音の首筋にキスを落とし、甘く囁いた。「天音、手伝ってくれ」天音の顔は真っ赤になり、恥ずかしそうに要のまっすぐな視線を避けた。要はキスを続け、天音を焦らし、耳元で囁き続ける。その甘い声はまるで羽のように、天音の心を掻き乱した。「天音、君はもう俺のものだ。
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