「美優さんのことが好きって言っただろ?彼女に付き添わせるから」天音は、動揺を悟られまいと急いでうつむき、要の胸に額を押し当てた。もし断ったら、この前の時のように無理やり産婦人科へ連れて行かれてしまうかもしれない。でも、検査を受ければ、要に結果を知られてしまう。「襲われたあの夜、私をどこへ連れて行ったの?」天音は返事をはぐらかし、話題を変えた。その手は要のシャツのボタンをそっといじっていた。要は天音の後頭部をじっと見つめ、意味ありげな目で言った。「友人に会っただけだ。また機会はある」天音はそれ以上深くは聞かずに、「そう」とだけ答えた。その夜、玲奈と裕也が蛍を連れてやって来た。両手いっぱいのサプリメントを持ってきてくれた。家の中は、とても賑わいだった。要は戻ってきてからとても忙しくしていた。立て続けに命を狙われる事件もあったからだ。本当の標的は、天音だったのだけど。とはいえ表向きは、自分ほどの立場の人間が襲われたということになっている。当然、誰かがその落とし前をつけなければならない。この事件を好機と捉え、自身の権力を誇示するため、さらに事を大きくした。要は家族と慌ただしく顔を合わせただけで、すぐに出て行ってしまった。というか、挨拶もそこそこだった。要はまだあの夜のことを根に持っているのだ。三階の部屋で。「天音、私とお父さんはよく考えたんだけど、やっぱりこの子は諦めなさい」天音は玲奈の手を握って言った。「前に想花を無事に産めたんだから、この子だって絶対に産めます。お母さん、この子は要にとってたった一人の子供になるのですよ」天音は、玲奈の決意が揺らがないのを見て、言葉を付け加えた。「もし反対されても、私はどんな手を使ってもこの子を産みますから」玲奈は、また一回り痩せた天音の顔を見て、目に涙を浮かべた。天音は本当に頑固で、突拍子もないことをするから。自分たちが許さなかったら、天音はきっとこの子を産むためにまた家を出ていってしまう。そうなったら、どうしたらいいの?玲奈が黙り込んだのを見て、折れてくれたのだと察した。天音は玲奈の手を取り言った。「隊長が、明日産婦人科の検査を受けるようにって言うんです」天音は少し緊張した面持ちで訴えた。「お母さん、お願い、助けてください」
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