蓮司が飛び込んでくる、少し前のことだった。「天音、もう無理強いはしない」要は天音の手を握り、声を和らげた。「だから、怒らないで」天音は訝しげに要を見つめた。「あなたは『前科』があるから、その言葉は信用できないわ」要は思わず笑みがこぼれた。このからかいの言葉が、とうとう自分に返ってきたからだ。要は天音の手を軽く握った。意地悪な言い方をする。「それなら、君が満足してくれるまで、誠意を見せるよ。これからは、君の言う通りにする。うちでは、君がやりたいようにして」天音は手を引っこめ、「それなら、まあいいけど」とつぶやいた。天音が目の前の海老を見ていると、すらりとした綺麗な手が伸びてきた。要はお皿ごとエビを自分の前に引き寄せると、ゆっくりとビニール手袋をはめ、殻をむき始めた。その様子に、テーブルを囲んでいた人々はあっけにとられていた。彼らの知っている要は、幼い頃から何不自由なく育ち、今の地位も高い。衣食住すべてにおいて人に世話を焼かれている彼が、こんなことをするなんて、想像もつかなかった。ましてや、見たことさえなかったのだ。ハンサムで気品あふれる要は、殻をむいた真っ白なエビの身を、そっと天音の口元へ運んだ。天音は心臓がドキッと高鳴り、ゆっくりと顔を上げた。みんなが見ている、と要に注意したかった。でも要はまったく気づいていないようで、穏やかな雰囲気のまま、ゆっくりと体を近づけてくる。「誠意、見せてる最中だから。天音、ちょっと付き合ってくれよ」天音は潤んだ瞳で、頬をほんのり赤らめた。そして、要の指先からエビを口にし、うつむいて噛みしめると、さらに顔が赤くなる。薄いビニール手袋越しに、要の指先が唇に触れたからだ。要の視線は、天音のピンク色の唇に釘付けになった。体が少し反応したが、それを抑え込み、再びエビを剥くことに集中した。口元には笑みが浮かんでいる。天音の取り皿には、エビの身が山盛りになっていた。天音は、ゆっくりとそれを食べていく。美男美女の二人はとてもお似合いで、見ていて飽きなかった。その時、誰かが持っていた箸が「カタン」と音を立ててテーブルに落ちた。その音に、皆ははっと我に返り、どっと笑い出した。天音は顔を上げ、要の袖を引っぱった。「もういいよ。他の人の分も残してあげなきゃ」
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