その一言が、梨花のプライドを地の底まで踏みにじった。 本当は、そんなことはしない。 彼女は引き返して、一真あたりを頼るかもしれない。恥を忍べば、綾香を無事に助け出すことはできるはずだ。 しかし、今、竜也の底知れぬ瞳と向き合うと、梨花は持ち前の意地が湧き上がり、どうしても負けを認めたくなかった。 彼女は自嘲気味に笑った。「一真かもしれないし、貴之かもしれない。或いはどこかの爺さんが私を気に入ってくれれば、それでも構わない……」 ドン――洗面所のドアが最大角度まで勢いよく開け放たれ、壁に激しくぶつかり、梨花の言葉を強引に遮った。男はそのままバスルームに入ってくると彼女を横抱きにし、リビングのソファに降ろした。そして再びバスルームへ戻り、柔らかく乾いたタオルを手に取ってきた。 彼の瞳に感情はなかったが、全身から放たれる険悪なオーラが、その不快感をありありと示していた。 梨花は後ろに身を引いた。彼が近づいてきて、片手で彼女の両足首を掴み、膝の上に載せ、タオルで彼女の両足を包み込み、優しく水分を吸い取っている。節くれだった男の指が梨花の足に触れる時、不思議と、より一層優美に見えた。おそらく子供の頃、彼に何度も足を拭いてもらったことがあるからだろう、梨花は特に緊張を感じなかった。彼は彼女の足を拭き終えると、タオルを脇に置き、ゆっくりと彼女を一瞥した。「生理、終わったか?」 梨花は途端に全身を強張らせた。 こんなに早く本題に入るとは思わず、彼女は緊張して首を横に振った。「まだ……」 彼女が言い終わると同時に、竜也は熱湯をカップに注いだ。そして、そのグラスを彼女の前に差し出した。 梨花は一瞬呆然とし、自分が勘違いしていたことに気づいた。慌ててグラスを受け取り、小さな声で「ありがとうございます」と言った。 「飲んだら寝ろ」 竜也は立ち上がり、冷たくそう言い放つと、薄いブランケットを彼女の脚に投げかけた。 梨花は思わず尋ねた。「綾香のことは?」 「寝ろ」 彼はそう言うと、彼女の反応を気にするでもなく、片手をポケットに突っ込んでベランダへ電話をしに行き、振り返りざまに防音のガラス戸を閉めた。 彼は引き受けてくれたのだ。 男の大きく逞しい後ろ姿を見つめながら、梨花の心は少しずつ落ち着いた。水を何口も飲み干し、コップを置くと、激しい眠気が襲って
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