事情の経緯がはっきりしてから、梨花は何度も心の底でこう思った。 もし、竜也が黒川家の人間でなければよかったのに。 もし、竜也が篤子の孫でなければよかったのに。そうすれば、何度も躊躇う必要はない。竜也に自分と家族のどちらかを選ばせようとするなんて、自分の身の程を知らなすぎる。しかし、その言葉は竜也にとって皮肉にしか聞こえない。 篤子の孫でなければ、黒川家の人間ではないと言えるのか?自分の体には、相変わらず黒川家の血が流れているのだから。そしてお祖母様が梨花の両親の命を奪ったのも、黒川家の権力を使ったからに他ならない。 彼は目の前の女をじっと見つめ、「お祖母様には報いを受けさせる」と言いたい。だが、親の命を前にしては、その言葉はあまりにも軽い。 償わせたところで、梨花が幼くして両親を失ったという事実は変えられないのだ。それでも、言うべきことは言わなければならない。 どう選ぶかは梨花次第だ。 竜也の瞳が暗く沈み、薄い唇を開きかけたその時、ズボンのポケットに入れていた携帯電話が間の悪いタイミングで鳴り出した。梨花は心得たように半歩下がった。「先に出て」 二人の間の問題は、二三言で片付くような話ではない。 電話一本分の時間を惜しむ必要はない。竜也は携帯を取り出し、画面に目を走らせた。 ――健太郎だ。 よほどのことがない限り、彼が直接連絡してくることはない。竜也は眉をひそめ、通話ボタンを押した。声は冷ややかで淡々としていた。「どうした?」「竜也様」 健太郎の声には焦りが滲んでいた。「大奥様が倒れられました!今、病院へ搬送中です……」廊下は針が落ちる音さえ聞こえそうなほど静まり返っていた。 そのため、健太郎の言葉は一言一句漏らさず梨花の耳に届いた。彼女は反射的に竜也を見た。男の表情が引き締まり、即断即決で告げるのが見えた。「すぐに行く」 普段は情が薄そうに見える祖母と孫だが、こういう時、血の繋がりというものは嫌でも露呈する。通話を切ると、竜也は彼女に視線を向けた。「病院へ行ってくる……」「うん」 彼が言い終わるのを待たず、梨花は平然と、そして冷ややかに言葉を遮り、きびすを返して家に入った。家に戻ってシャワーを浴びて出てくると、残業を終
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