綾香の突然の奇声に、歯磨き中だった梨花は飛び上がらんばかりに驚いた。 慌てて口の泡を吐き出し、呂律の回らない口調で尋ねた。「どういうこと?」藪から棒に。「これ見て!」 綾香はスマホを強引に彼女の手に握らせた。その口元は耳まで届きそうなほど緩んでいる。「あなたの患者さんや慈善団体が、こぞって味方してくれてるのよ!」梨花は呆気に取られつつ、ニュースのトップ記事に目を走らせた。 【梨花先生が人の不幸を食い物にするはずがない】そこには、数多くの投稿がまとめられていた。一つは慈善団体からの公式声明だが、残りはすべて、この逆風の中で敢えて声を上げた一般市民によるものだ。【ここ三年で、梨花さんから当基金へ寄せられた寄付総額は一億二千万円に上ります】【私はタクシー運転手です。去年の冬、偶然梨花先生をお乗せしました。先生は私の娘に心臓病があることを一目で見抜き、手術費が足りずに困っていることを知ると、降り際に「これでお子さんの治療を」と百万円を振り込んでくださいました。そんな先生が悪徳医師だなんて、私は絶対に信じません】【高橋と申します。梨花先生の古くからの患者です。うちは貧乏なのに重い腎臓病を患ってしまい、他の病院では治療費が払えませんでした。でも梨花先生のところだけは格安だったんです。最初はなんでこんなに安くて効くのか不思議でしたが、薬局のスタッフが口を滑らせてようやく知りました。先生が自腹を切って割り引いてくれていたんです。先生は最高の名医です。私は一生梨花先生を信じます】「……」多種多様な書き込みがあったが、どれも梨花の患者や、彼女が知らず知らずのうちに助けた人々からのものだった。 梨花はこれほど真剣にエゴサーチをしたのは初めてだった。 見ているうちに、鼻の奥がツンと痛み、涙が溜まっていて視界がぼやけた。自分のほんの些細な行いが、まさかこんな窮地において、自分を守る盾になってくれるとは思いもしなかった。一歩間違えれば、袋叩きに遭っていたかもしれないのに。ひとしきり喜んだ後、綾香は冷静さを取り戻して分析を始めた。「見たところ、風向きはかなり変わったわね。最初の告発者に疑いの目を向けるネットユーザーも出始めてるし……」綾香が話している最中にも、新しいニュース速報がポップアップし
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