言葉遣いこそ丁寧だが、梨花は、その声の底に鋭い刃のような「探り」が隠されているのを敏感に感じ取った。隆一の言葉を、彼は一文字たりとも信じていないのだ。梨花もまた、半信半疑だった。タイミングが良すぎる。昨夜、三浦家が徹底的に真相を洗い出したばかりだというのに。そして今朝早く、隆一から電話があり、自ら昨日の「断言」をあっさりと覆したのだ。だが……。千鶴にしても海人にしても、この件に関して絶対に他人を介入させるようなことはしない。せいぜい、ごく限られた側近を動かす程度だ。昨日、自分が三浦家とどんなやり取りをしたかなど、隆一が知る由もないはずだ。彼女が疑惑の目を向けると、隆一は杖をついて身を起こし、困惑したように言った。「黒川社長……佐藤先生……それは……」「本当に申し訳ない。俺の旧友も、おそらく何かの勘違いをしていただけなのだろうと思う。彼とは長年の付き合いでしてな……これ以上、彼に迷惑をかけるわけにはいかないんだ」身振りも口調も、極めて自然だった。梨花は何かボロを見つけようと観察したが、何一つ不審な点は見出せなかった。竜也はフッと笑っただけで、それ以上は何も追及しなかった。ただ梨花の方を見て言った。「時間が押してる。先に篠原さんの治療をしてやってくれ」「ええ」隆一の現在の体調では、昨日と同じ処方箋は間違いなく使えない。梨花はまず鍼治療を施して当面の呼吸困難を和らげ、その後、新しい薬を処方した。処方箋を執事に渡した後、梨花は篠原隆一を見て言った。「篠原さん。今後、私がここまで往診に来る時間はおそらく取れません。田中先生に連絡して、毎週一つ、必ず診察の予約枠を確保してもらってください」その声は淡々としていたが、明らかに「提案」ではなく「決定事項」だった。言い終えると、彼女はきびきびと身を翻し、竜也と共に部屋を出た。執事が見送ろうとしたが、梨花はそれを制した。「結構です。それよりも、篠原さんを立たせて少し歩かせてあげてください。それから、消化の良いお粥のようなものを食べさせてあげてください」中庭から黒のベントレーが走り去るのを見届けてから、執事はようやく隆一を支えて起き上がらせた。「旦那様……彼らは信じたでしょうか?」その問いを聞いて、隆一は目を細めた。だが、その眼差しに宿
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