そう、与えられなかった。 歌唱力。「…………〜〜〜〜〜っ」「えと、以上です」 彩は食い縛った歯が思うように開かない。「「…………」」 実々夏が改めて椅子に座る。「コホン。 あの !! 仕事は絶対断りたくないんです !! でも音痴なのはどうしようもなくて ! 」 実々夏も自覚はしているようだ。半泣きで彩にすがりつく。「えぇ…… ? いや………。マネージャーさんとかは ? 」「知りません。嘘つきました」 彩の顔が引き攣る。 歌はダメ。 けれど音楽ゲームの制作で声がかかっている。 売れっ子のミミにゃんだ。アイテールも少しは期限を考えてくれるかもしれないが……これを矯正するには時間が足りないだろう。「ミミさん、もし音楽をやらずにアイテールの仕事を受けてキリに勝つと言うならば……それはもうアレしか無いですよ」「アレ……とは ? 」「その前に薬飲んでいい ? 」「あ、はい。急にどうしたんだろうと思ってました。蕁麻疹」 ポケットから処方薬を取り出しマイボトルで飲み干す。十分前から彩の全身はミミズ腫れのような斑点が出ている。「たまになるんです。お気になさらず」 彩 ! 強くなった !!「フゥ……。 まずアイテールのゲームは2.5次元で構成しようとしていますよね。既にアーティストは決まってますが、まだ決まってない部分が」「参加バンド以外にですか ? 」「主人公ですよ。 ゲームの内容は『街角でミュージシャンと出会って、音楽番組にスカウトするというストーリー』でしたよね ? 主人公に立候補するというのはどうでしょう。主役ですし、一番プレイヤーの目に触れて、更に歌を歌わないポジションです」「なるほど……主役…… ! 一応マネージャーに相談して見ます。 でもダメだったら
Last Updated : 2025-11-13 Read more