美咲は車から降りるなり、慌てて地下室へ向かった。予想通り、宗真がそこにいた。充血した目は、今にも飛びかかって噛みつきそうな猛獣のよう。来る途中、両親から別荘で起きたことを聞かされていた美咲は、思わず一歩退いたが、鋭い目をした静江に腕をつかまれ、そのまま引き寄せられる。静江は美咲のふくらんだ腹を指さし、誇らしげに宗真に見せつけた。「このお腹の子こそ、あんたの本当の跡継ぎよ!どうせ澄乃さんとは離婚したんだし、今日のうちに美咲さんと入籍して、神城家の正式な嫁にしなさい!」突然の「朗報」に、美咲は頭が真っ白になる。駆けつけた藤崎夫妻も上機嫌で、すっかり未来の義父母の顔をしていた。「美咲は私たちのたった一人の宝物です。そのうえ、神城家の跡継ぎまで身ごもってるのですよ。結婚式は最高級でやってもらわないとね。みんなを招待して、祝儀もたっぷりと……160億は欲しいです。美咲が宗真さんを好きじゃなければ、バツイチ男なんて絶対に嫁がせなかったんですから。それを考えれば、この額だって安いもんですよ」その強欲ぶりに、静江は眉をひそめかけたが、それより先に宗真が狂ったように笑い出した。「宗真……?どうしたの?」息子の異変に、静江は不安を覚える。だが、その手を宗真は振り払った。「澄乃のお腹の子が『父親不明』だって?……澄乃のお腹にいたのは、間違いなく俺の子だ!」真っ先に悲鳴を上げたのは美咲だった。「宗真さん、何を言ってるのですか!?そんなこと言ったら、私は世間の噂で殺されちゃいます!」だが、宗真はもう彼女の望む言葉には耳を貸さなかった。彼女の腹を指差し、怒りを込めて一語一語、叩きつける。「『父親不明』なのは……おまえの腹の子だ。おまえをかばうために、澄乃にあんな汚名を背負わせた。おまえが澄乃を追い出し……俺と澄乃の子を殺したんだ!」その場の全員が凍りついた。最も信じられないという顔をしたのは静江だった。「まさか……メディアの前でも、この前私の前でも、あんたは……」だが、宗真の苦痛に歪んだ表情を見て、静江はようやく理解する。自分の手を見つめ、呆然とつぶやいた。「澄乃のお腹の子……あれは神城家の血筋だったのね……私は……なんてことを……!」藤崎夫妻も何か言おうとしたが、自分たちの娘の顔が血の気を失ってい
Read more